半月板損傷 Meniscus tear

半月板損傷

Mitsutoshi Hayashi

林 光俊先生

医学博士、日本リハビリテーション医学会専門医、日本整形外科学会専門医、日本リウマチ学会専門医、JOC強化スタッフ、日本体育協会公認スポーツドクター

半月板損傷

半月板損傷は、ジャンプの着地やストップ&ターンでバランスを崩したときに起こり、内側側副靱帯や前十字人体の損傷を伴うケースが多い

症例の概要

はじめに

半月板は膝内部の内側(内側半月板:写真1)と外側(外側半月板)に1枚ずつあります。大腿骨と脛骨からなる関節面に介在して膝の動きをスムーズにしたり、膝関節の動き(屈曲・伸展、内旋・外旋)に際して膝関節を安定させたりするとともに、ジャンプなどの衝撃を分散させるクッション的な役割(衝撃吸収)を果たしています。この半月板が、スポーツ活動などによって膝をひねったときにストレスでこすれて損傷(断裂)することがあります。半月板を損傷すると膝関節の疼痛や運動制限が発生します。

関節鏡でみた内側半月板

写真1 関節鏡でみた内側半月板の損傷

症例の詳細

好発種目

バスケットボール、バレーボール、体操、サッカー、テニス、野球、スキーなどのスポーツで発生頻度が高いものです。

受傷原因

膝をひねるようなあらゆる場面で起こりますが、ほとんどはスポーツ活動中に発生しています。ジャンプ着地などに際して膝関節が屈曲しつつ回旋(ひねり)が加わると、水平方向のストレスが加わります。そのストレスによって半月板を部分的もしくは全体的に損傷(断裂)します。例えば、片足で床を滑ったとき、横から膝にタックルされたとき、ジャンプ着地時に膝が外反屈曲してひねりが加わったとき、などに発生します。水泳の平泳ぎでも起こります。平泳ぎで起こるのは膝に繰り返しのひねりの力が加わるためであり、ランニングなどの単純な動作でも徐々に半月板が摩耗して起こります。

合併症

半月板を単独で損傷するよりもむしろ、前十字靱帯や内側側副靱帯の損傷を併発しやすく(約6割)、関節軟骨の損傷を伴うこともあり、注意を要します。また逆に、前十字靱帯単独損傷の後遺症で膝に緩みが生じ、それが誘因となって半月板を損傷するケースも多く見られます。

急性症状

急性症状、つまり“ガツン”と1回の急激なストレスによって受傷したばかりのときは、疼痛が主症状であり、いわゆる奥歯に物が挟まったような痛みや、膝を伸ばすときに一瞬引っかかるような違和感(キャッチング)が常にあります。断裂部位が大きく、関節内に半月板の一部が嵌入〈かんにゅう〉したケースでは、関節がある角度から伸展できない状態(ロッキング症状)となり、激痛及び可動域制限が起こり、歩行ができなくなるケースもあります(写真2)。半月板の損傷部位に一致して膝関節部に圧痛及び運動時痛があります。膝関節を屈曲―伸展しひねりを加える手技(McMurray test)で痛みを生じます。内側半月板損傷のほうが、外側半月板損傷より5倍も多く発生しています。

ロッキングにより膝の伸展不可

写真2 ロッキング症状によって伸展不可能となった状態

慢性症状

慢性化すると関節炎が起こります。膝関節に水や血がたまる水腫や血腫を合併します。さらに長期化すると、患側を無意識でかばうために大腿四頭筋が萎縮してきます。さらにひどくなると、断裂した半月板がめくれて大腿骨や脛骨の関節の軟骨を傷つけ、骨を変形させる(変形性膝関節症)原因にもなります。

診断

診断

膝関節に上記の症状が発生したら、まず整形外科専門医を受診し、傷害の内容や程度を把握すべきです。半月板はレントゲンに写りません。診断はMRI検査が有用です(写真3)。以前は、関節造影(影絵のように映し出す)が主流でしたが、MRI検査は痛みもなく、診断率も90%以上と非常に高いので、最近では関節造影はあまり行いません。最終的には、関節鏡検査(内視鏡を小切開で膝関節へ挿入し、半月板や靱帯、関節軟骨など関節内の状態を、テレビ画面に映し出された映像から肉眼で観察)を行って確定診断を下します。

右膝のMRI

写真3 右膝のMRI像
内側半月板がバッケット柄断裂し、その一部が膝関節内部に嵌入している。内側と外側の大腿骨の軟骨も傷ついている。

関節鏡で見た半月板損傷の手術の様子

写真4 半月板損傷の関節鏡による診断と手術の様子
導子を用いて状態を確認しながら嵌入している半月板を引き出して行う

治療・リハビリ

治療

多くは保存的治療で症状が軽快します。軽症であれば、装具やテーピングなどの補助補強、疼痛軽減目的での投薬やリハビリテーションを行います。初期には局所の安静、関節穿刺〈せんし〉による関節液の吸引、局所麻酔剤や最近ではヒアルロン酸注射(*注)が主流です。以前は抗炎症としてステロイド注射を頻回に行ってましたが、副作用に注意を要します。筋萎縮予防や疼痛の軽減を目的として、大腿四頭筋訓練、膝関節周囲の物理療法(低周波や干渉波による電気刺激)も実施します。

手術

ロッキング症状、もしくは繰り返しの半月板損傷、持続する疼痛、しつこい水腫(膝に水がたまる)などがある場合に手術を行います(写真4)。最近では関節鏡視下(内視鏡)で半月板を切除したり、半月板辺縁部の断裂例では縫合術を行ったりします。(写真5)術後には適切なリハビリ期間が不可欠です。術後2〜3週目より動的なリハビリテーションを開始しますが、術後2ヵ月くらいまでは激しい運動は避けるべきです。スポーツの完全復帰は5~6ヶ月で可能です。

半月板の内視鏡手術

写真5 内視鏡手術の様子

※注:ヒアルロン酸とは

最近では、半月板損傷後にヒアルロン酸ナトリウム(多糖体、商品名アルツ、スベニールなど)を関節内に注入する保存療法が行われ効果的です。膝関節軟骨の成分でもあるヒアルロン酸(ドロッとしている)は、水分の保有率が高く、関節軟骨や半月板が傷ついたとき、関節の潤滑油やクッションの代わりになり、動きをよくするからです。ひいては関節の痛みや腫れの軽減にも効果があるようです。本来は高齢者の変形性膝関節症の治療用として開発されたものですが、最近ではスポーツ選手にも用いられてます。ただし、ヒアルロン酸を注射しても軟骨が再生するわけではありません。時間とともに吸収・消失しますので、1回の効果時間は数日ですが数回の注射で効果がより持続する傾向があります。研究段階では軟骨細胞の免疫機能調節能も挙げられ、医療面ではヒアルロン酸は肩関節周囲炎や美容外科でのしわ取り、眼科の白内障手術にも活用されています。市販のサプリメントなど、お肌のスベスベを保つ(?)目的でも販売されています。

Hitoshi Takahashi

髙橋 仁先生

帝京平成大学地域医療学部准教授
日本体育協会公認アスレティックトレーナー、はり・きゅう・マッサージ師

半月板損傷(トレーナー編)

予防

はじめに

今回は慢性的な半月板損傷をもつ選手のコンディショニングについて説明します。
 ドクター編でも触れていますが、慢性例の特徴として、大腿四頭筋の萎縮がしばしば見られます。 また、膝関節周囲筋の筋力もアンバランスになるため、膝関節の安定性の低下も起こります。さらには患側をかばうことにより、無意識に健側に荷重が偏り、健側に二次的な問題が起こる場合も考えられます。したがって、日常のコンディショニングは、大腿四頭筋を中心とした筋力強化がポイントになります。

現場評価・応急処置

慢性例では筋萎縮による、患部の痛みだけでなく、筋力低下を原因とする膝痛や関節水腫などが現れ、それらがまた筋萎縮の原因となり悪循環に陥ってしまいます。スポーツ現場では、筋萎縮の程度や関節可動域を評価して膝関節の機能低下の状態を把握し問題点に対して対応します。
また、熱感を伴う関節痛や腫脹は新たな損傷が考えられます。その場合はアイシングを行い、膝関節を固定しなるべく免荷(松葉杖を使用)して医療機関を受診します。

リコンディショニング

日常のコンディショニングや慢性例の筋萎縮に対する筋力トレーニング時のポイントをあげま
す。

内側広筋のトレーニング

大腿四頭筋のなかでも内側広筋の強化が重要です。伸展位で数秒その位置を保持する方法(写真A(1))や、伸展動作をやや外旋する方法(写真A(2))で行います。

半月板損傷1

写真A①

半月板損傷2

写真A②

写真A
レッグエクステンションのマシンを使用して、①内側広筋を意識しながら進展位からさらにやや進展させるようにして行う方法や、②内側広筋が真上にくるように外旋させながら進展していく方法(外旋が強くならないように注意)がある

フォームのチェック

スクワットなどでしゃがみ込んでくる際など、トレーニング動作で膝関節の位置がブレないようにします(写真B)。手術で半月板を切除した場合は関節面の安定が損なわれ、内反または外反の動き(左右のブレ)が強くなる傾向があります。特に膝が内側(中に)に入る「ニーイン」の姿勢に注意します。フォームは、選手自身が鏡を見てチェックすると効果的です。

半月板損傷3

写真B ①ニーインの誤ったフォーム~踏み出した脚の膝が内側に入っている

半月板損傷4

写真B ②正しいフォームでは、つま先と膝が正面を向いている

荷重バランスのチェック

患側をかばうため、無意識に健側に荷重が偏る場合があります。このような荷重のアンバランスは、バランスディスク(ボード)に乗ってスクワットを行うことによって修正できます(写真C)。また、このトレーニングは膝関節の安定を向上させる目的でも行います。

半月板損傷5

写真C 荷重バランスのチェック
荷重の偏りがある場合、バランスディスク上でスクワットを行うと動作中にバランスを崩す

動作を組み合わせたトレーニング

スクワットを行う際に、股関節の外転動作を組み合わせます。このような、複合的な筋力発揮は膝関節の安定やスクワットのフォームづくりに有効です(写真D)。外転は大腿部にチューブを巻きその負荷に抵抗するよう、膝をまっすぐに保つように行います(写真E)。

半月板損傷6

写真Dフォームづくりの例
①レッグプレスで膝が内に入ってしまう場合

半月板損傷7

②大腿部にチューブを巻きその負荷に抵抗するよう、膝をまっすぐに保つように行います

半月板損傷8

写真E 股関節の外転動作を伴ったスクワット
①チューブの抵抗を常に感じながら行う

半月板損傷9

②バランスディスク上で行うとさらに効果的である

筋力トレーニングは非荷重位から

患部の状態に応じて、非荷重位と荷重位とに分けて行います。痛みや筋力低下(筋萎縮)がある場合は、非荷重位(座位で行うレッグエクステンションマシンなど)から始めます。

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