膝内側側副靱帯(MCL)損傷 Medial collateral ligament injury

膝内側側副靱帯(MCL)損傷

Mitsutoshi Hayashi

林 光俊先生

医学博士、日本リハビリテーション医学会専門医、日本整形外科学会専門医、日本リウマチ学会専門医、JOC強化スタッフ、日本体育協会公認スポーツドクター

膝内側側副靱帯(MCL)損傷

膝内側側副靱帯は、タックルなどによって損傷しやすい

疾患の概要

膝内側側副靱帯(以下MCL)は、膝靱帯損傷のうちで最も頻度が高く、単に膝の捻挫として取り扱われることが多い障害です。初期に適切な固定をすれば(前十字靭帯断裂に比べ)修復しやすいのですが、陳旧化(急性期に処置をせず伸びた状態)した場合は、半月板損傷などの合併症を誘発するので、受傷時の適切な治療が重要です。

原因・発症のメカニズム

解剖

MCLは浅層、深層、後斜靱帯の3層構造となっていて、長さ10cm、幅3cmの範囲で膝関節内側部の大腿骨内上顆から脛骨内側部にかけて走行しています。

受傷原因

ラグビーやアメリカンフットボール、サッカー、バスケットボールなどのコンタクトスポーツでは、膝外側から→内側への外力(タックル)により、関節に外反、または外旋力が強制されたときにMCLは過緊張して、最終的には断裂しやすくなります。スキーでの転倒時、ジャンプ着地時、ツイスト時などでも発生します。

症状

内側関節部に一致した圧痛、腫張、熱感、荷重にて外反動揺性(X脚のような)が認められます。受傷直後は関節血腫が、慢性化すると水腫が存在します。
一般に損傷は、以下の3型に分類して治療方針に活用します。
I度:動揺性(健側と比較して)はなく、靱帯部の圧痛が主である
II度:伸展位の外反動揺性(-)、30°屈曲位で外反動揺性(+)
III度:伸展位の外反動揺性(+)、30°屈曲位で外反動揺性(+)

診断

検査

レントゲンでは靭帯は写らないので、骨折の有無確認が目的であり、損傷の程度はストレスレントゲン(写真1)や器械によるチェックが有用です。MRI検査は最も有用で、MCL損傷のみならずACL、半月板、出血などの確認が可能です。

MCL断裂 レントゲン

写真1 MCL断裂時のストレスレントゲンによる内側関節の離解像

合併損傷

単独損傷が多いものの、前十字靭帯(ACL)、後十字靱帯(PCL)損傷や、内側(外側)半月板損傷を合併します。ACL+MCL+内側半月板の損傷合併例をUnhappy trias(不幸の三徴)ともいいます。

治療・リハビリ

治療

I度はRICE療法を、II度は固定による保存療法が一般的です。消炎鎮痛薬の使用、超音波、低周波などの物理療法による疼痛対策を行います。III度損傷や前十字靱帯(ACL)や半月板損傷合併例は、靱帯の一次縫合手術を行いますが、単独損傷例ではギプス固定や、最近では装具固定による保存療法も用いられ、良好な成績を挙げています。

受傷後のリハビリテーション

初期はアイソメトリックにSLR訓練、膝周辺の屈伸筋同時収縮訓練を主に、腱側や体幹上肢のトレーニングを行います。受傷3週以降で疼痛は軽減してくるので装具装着下で、徐々に膝関節のROM、歩行訓練を開始します。

予後

単独損傷では、初期に適切な固定を行った場合は比較的安定しますが、ACL損傷を合併している場合は緩みやすくなります。MCLが緩むと、のちに半月板損傷を併発しやすくなります。

ポイント

受傷時に損傷程度を把握した正確な診断と、適切な固定を行うことが重要です。

Yoshizumi Iwasaki

岩崎由純先生

NATA公認アスレティック・トレーナー、日本体育協会公認アスレティックトレーナー、JCCA(日本コア・コンディショニング協会)会長

膝内側側副靱帯(MCL)損傷(トレーナー編)

予防

膝内側側副靱帯は、膝関節の内側に位置していて大腿骨と脛骨をつないでいる靱帯です。アラインメントがニーインの状態になっている選手が受傷しやすいので、膝関節への外側からの強い外力に備えることが大事です。例えば下記のようなことで、種目の特異性に合わせて万が一に備えましょう。
・コンディショニングによって膝を鍛える
・サポーター、ブレースなどで護る
・雨の日などはテーピングで補う

現場評価・応急処置

膝関節への外側からの強い外力により関節が強制的に外反されたときに受傷するケースが多く、選手は「膝が内側に入った」と表現します。その時点で、明らかな変形、腫脹、変色、熱感があるような場合は、アイシング、副木などの処置をしてMRIなどの施設がある医療機関に移送しましょう。見た目に異常がない場合でも、膝下が明らかに外にぶれる(外反ストレステストが陽性、写真2)場合は、即、病院で受診してください。捻った感じがして、しばらくうずくまっていた選手でも、中には大丈夫だといって練習や試合に復帰してしまうことがあります。再開は、「ドクターストップの解除」を大前提として下さい。そして、テーピングなどの措置をした上で、本当に練習ができるかどうか、きちんと再開テストをしてください。膝関節の再開テストでは、テーピングなどの再発予防措置をしてから、(1)片足閉眼立ち、(2)その場ジャンプ、(3)片足ホップ、などをします。それがクリアできるようであれば、グラウンドや体育館などに出て、(4)ダッシュ、(5)サイドステップ、(6)方向転換、ができるかをテストします。さらに種目やレベル、選手のポジションなどに応じた動きを監督やコーチとともにチェックして、最終的に練習や試合に戻り、プレーを再開すべきかを判断してください。

リコンディショニング

受傷直後のリハビリテーションは、ドクターや理学療法士の指示に従いましょう。スポーツの現場に出てからも、基本的なメニューは継続しながら、実際の動きに近いトレーニングを処方します。病院で
は、SLRをはじめPNFやアイソキネティックスなどで周囲の筋肉の強化が行われます。

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