鉄人に聞け!ランナー膝 別名:腸脛靱帯炎

症例解説Body & injury

Knee

ランナー膝 別名:腸脛靱帯炎Runners knee/lliotibialbandsyndrome

  • 原因や治し方(医療編)
  • 予防や対処法(トレーナー編)
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はじめに

ランナー膝はランニングによる膝関節周辺のスポーツ障害の総称で、さまざまな病態が含まれます。今回は、狭義のランナー膝として腸脛靱帯が膝部外側で摩擦し、疼痛〈とうつう〉が発生する腸脛靱帯炎を主として述べていきましょう。
 腸脛靱帯炎はランニングによる膝障害の代表です。膝の屈伸運動を繰り返すことによって腸脛靱帯が大腿骨外顆〈がいか〉と接触(こすれる)して炎症(滑膜炎)を起こし、疼痛が発生します。特にマラソンなどの長距離ランナーに好発します(ほかにバスケットボール、水泳、自転車、エアロビクス、バレエ等)。


主因

主因はオーバーユースです。過剰なランニング時間と距離、柔軟性不足(ウォームアップ不足)、休養不足、硬い路面や下り坂、硬いシューズ、下肢アライメント(内反膝)など、さまざまな要因が加味されています。


症状

大腿骨外顆周辺に限って圧痛が存在します(図)。腸脛靱帯は明らかに緊張が増し、時に靱帯の走行に沿って疼痛が放散します。
 初期はランニング後に痛みが発生しますが、休むと消失します。しかし、ランニングを続けていると次第に疼痛は増強して、簡単に消失しなくなってきます。症状の誘発方法(徒手検査法)として、膝を90度屈曲して外顆部で腸脛靱帯を押さえてから膝を伸展していくと、疼痛が誘発されるgrasping testが有用です。

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治療

保存療法が原則です。第1に局所の安静、つまり、ランニングの休止が重要です。次に、大腿筋膜張筋など股関節外側部を主としたストレッチの強化(トレーナー編参照)、アイシングを徹底します。さらに消炎鎮痛剤の投与や、超音波などの物理療法を行います。
 いったん症状が出現すると、簡単には消失しないので発症初期の決断、適切な休養期間が大切です。同一側の膝の負担を軽くする目的で、たまには普段と反対回りのトラック走行も取り入れてください。手術治療は報告例がありますが、一般的ではありません。


鑑別疾患

膝関節外側部での疼痛を主症状とする、外側半月板損傷との鑑別が必要です。

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腸脛靱帯炎はオーバーユース症候群であり、「使いすぎ」が原因です。1回に走る時間や1週間に走る時間、あるいはスピードが速くなった場合や下肢への負担が増えた場合、さらに疲労の蓄積など、体力的なものが原因となります。また、O脚やランニングフォームによるアライメント、技術的な原因や、路面やシューズの問題といった環境的な原因もあります。これらは1つの原因だけで起こるわけではありません。したがって、総合的に考慮したトレーニング、競技復帰に向けたトレーニングプログラムを考える必要があります。


身体的な要因

ランニングの量、強度の急激な変化が最も簡単にコントロールできることだと思います。そこで、目標とする大会に対してのトレーニング計画の見直しや、目標そのものを変更することが必要かもしれません。ストレッチングが行われていないとか、栄養補給がされていないなどという場合にも、筋の疲労が原因によるオーバーユースの可能性が高くなります。腸脛靱帯に直接かかわる大腿筋膜張筋や大臀筋だけでなく、ほかの筋の疲労によりランニングフォームが崩れ、それにより腸脛靱帯への負担が増えてしまう場合がありますので、全身のストレッチングを毎トレーニング後に入念に行うことをお勧めします。
腸脛靱帯炎に有効なストレッチングは写真1~8のようなものです。腸脛靱帯は大腿筋膜張筋(ズボンのポケットの辺り)と大臀筋の付着部より続き、大腿部の外側を通り脛骨外顆(膝下の外側)に付着する大腿筋膜の厚くなったものです。したがって、これらを伸ばすような姿勢を考えます(写真1、2)。また、大臀筋も影響しますので、そのストレッチングも併せて行うようにしてください(写真3、4)。さらに大腿四頭筋、ハムストリングス、腰のストレッチを行うことをお勧めします(写真5~8)。

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栄養補給は、エネルギーの補給はもちろんのこと、筋の疲労回復を目的としてタンパク質やアミノ酸の摂取を考えた食生活の改善や、サプリメントの補給を計画的に行うようにしましょう。このようにトレーニング計画にストレッチングや栄養補給までを取り入れることにより、オーバーユースを予防するようにします。


環境的な要因

競技復帰に向けたトレーニングの段階では、硬い路面や坂道を避けるようにしてください。特に、下り坂は下肢への負担を増大させますので、コース設定に注意してください。できるだけ広い公園などで、芝や土の上を走るようにしましょう。
前述の通り腸脛靱帯は脚の外側にあり、身体が外側に振れるようなストレスにより、膝の上の大腿骨の外側とこすれて痛みを発してしまいます。舗装された道路は雨水の排水を考慮して外側が低くなるように作られています。ランニングの際、低くなっている側=道路の外側はその外側へのブレが大きくなる可能性が高くなります。つまり、常に道路の右側を走った場合、常に身体が右に傾斜した状態で走ることになります。思い当たる人は、左側も走るよう心がけましょう。ただし、歩道は反対の場合もありますので注意してください。
陸上競技場のトラックも同様で、コーナーでは外側にストレスがかかります。トラックでのトレーニングに慣れていない方は徐々にトラックでの練習量を増やし、可能であれば反対方向に走るトレーニングも取り入れてください。
また、シューズを替えた直後に痛みが出始めたという話も聞きます。ソールのクッション性は自分の体力に合ったものを選びましょう。軽さを追求してクッション性の低いものを選ばないようにします。シューズのなかには安定性をよくするために、ソールの一部を柔らかくしたりしているものもあります。人によっては、逆にそれが負担になる場合もありますので、シューズを購入する際にショップのスタッフに相談してください。
サッカーやバスケットボール、バレーボールなどの球技の競技者がトレーニングの一環としてランニングを行う際、シューズに気を使わず球技のシューズのまま走って、痛みを発症させてしまうケースもあります。ランニングのトレーニングを取り入れる場合には、できるだけランニングシューズを履くようにしましょう。
ちなみにO脚の方は、シューズのソールの外側を少し高くするような足底板を用いることにより、腸脛靱帯へのストレスを軽減できることがあります。


フォーム

理想的なランニングフォームの獲得により、身体への負担を軽減させて走ることができます。常に重心を高く保ち(写真9)、無駄な方向へのブレがないように意識することが大切です。
まず、立位での姿勢を安定させます。バランスディスクやバランスボードを利用して片足での安定した状態を獲得し、その意識を持ったまま重心を高くしてウォーキングをします。ウォーキングでも足が着地してから地面を離れるまでの間、身体が左右にブレないように注意します。足のつま先が内側を向いたり、膝が外側を向いたりしてしまわないように、チームメートやコーチ、トレーナーにチェックしてもらいながら、安定したウォーキングのフォームを獲得しましょう。
ランニング時の着地はウォーキングより勢いがありますので、左右のブレが大きくなります。したがって、まずウォーキングで理想的なフォームをしっかりと獲得しましょう。着地した足から頭までが、できるだけ直線上にあるようにします。着地したときに腰が外側にブレてしまう場合は、外側へのストレスがかかります(写真10)。着地と反対側の脚を早く前に振り出して、腰を落とさないで高くするように意識しましょう(コーチング・クリニック2003年11月号p.19、図4参照)。ウォーキングでのフォームが安定してきたら、片足ジャンプをして反対側の足で着地、そしてまた反対でゆっくり着地、を大きく繰り返すエクササイズを行います(写真11)。その際には、身体が左右にブレずに直線的に動けるように意識します。これもチェックしてもらいながら進めましょう。
単純にトレーニングの量や強度だけを考えるのではなく、フォームや環境も併せて考慮して予防、再発防止をしていくことが大切です。

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痛みを感じたり、故障が発生したら、すぐに医師の診察を受けることをおすすめします。

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