足底腱膜炎 Plantar fascitis

足底腱膜炎

Mitsutoshi Hayashi

林 光俊先生

医学博士、日本リハビリテーション医学会専門医、日本整形外科学会専門医、日本リウマチ学会専門医、JOC強化スタッフ、日本体育協会公認スポーツドクター

足底腱膜炎

足底腱膜炎は、マラソンなどの競技者に多く見られる

疾患の概要

走れば走るほど、足の裏が痛くなるスポーツ障害をご存知でしょうか? 足底筋(腱)膜炎は、マラソンなどの競技者に多く見られる、ランニング動作の繰り返しによる障害で、足底部のオーバーユースを原因として発症しやすいものです。

原因・発症のメカニズム

原因

足底腱膜は足部のアーチを保持しています。スプリングのように荷重時にショックを吸収する役目があ
りますが、そのためランニングやジャンプ動作などで体重刺激が足部にかかる場合、足底腱膜は繰り返しの牽引刺激によって腱が変性、微小断裂や炎症が発生しやすくなります。 路面接地時には足底腱膜の遠位(端っこ)にある足趾〈そくし〉は伸展して、近位にある踵骨〈しょうこつ〉も下腿三頭筋―アキレス腱によって牽引され伸張されます。また足部のアライメントも重要で、扁平足の競技者は回内足を合併しやすく、中央部の土踏まずに疼痛〈とうつう〉が存在しやすいのです。反対に、ハイアーチ(甲高)では柔軟性が乏しく、腱膜を損傷しやすい傾向があります。原因の一端にはオーバーユース、硬い路面(サーフェスの変化)、シューズの変更(ヒールアップが望ましい)なども挙げられます。

診断

症状

荷重時の足底部痛は、踵〈かかと〉に近い(1)腱膜起始部に最も多く発生し、続いて(2)中央部(土踏まず)、(3)遠位部の3ヵ所が好発部位です(図)。特に起床時や練習開始時に痛みが出やすい傾向があります。機能面では下腿と踵骨軸のなすアライメント(heel-leg alignment)が回内(中央部の疼痛)か、回外(起始部の疼痛)かをチェックして補正しましょう。練習開始時には入念なストレッチを行ってからランニングをしましょう。  特に骨足底部内側の足底腱膜起始部は、脛骨神経の分枝である外側足底神経が介在していて、硬くなった腱膜に拘扼〈こうやく〉されたり、微小断裂のために圧痛、腫張が、時に硬結(しこり)が認められます。

足底腱膜炎

治療・リハビリ

治療

急性期は局所の炎症を抑えることが先決です。なんといっても第1選択は、局所の休息(ランニング、ジャンプ練習の休止)で、次に消炎鎮痛内服薬。従来行われてきたステロイド注射は、頻回に行うことは避けるべきです。足底部へ直接的、あるいは間接的(下腿などへ)に低周波、干渉波、低出力レーザーなどの物理療法を行い、痛みを和らげます。スポーツ現場では、足底から下肢にかけてのストレッチ(写真1)、テーピングや足底板、インソール(写真2)使用などによって足底部のアーチ形態を機能的、解剖的に補正して、ショックを和らげます。最近ではヒアルロン酸注射や体外衝撃波は有効であるという報告も散見される。
保存療法に難渋して踵骨付着部の骨棘〈こつきょく〉による疼痛が強い場合は、骨棘の骨切除術を行う場合もあります。急性期におけるトレーニングの基本は、足に負担の軽い非荷重運動を行うことです。リハビリ初期にはプール歩行やエアロバイクを積極的に取り入れましょう。

足底のストレッチ

写真1 足底のストレッチ

インソール

写真2 インソールの使用によって、足底部のアーチ形態を補正して、ショックを和らげることができる

Yasuhiro Nakajima

中島靖弘先生

湘南ベルマーレスポーツクラブトライアスロンチーム ヘッドコーチ、日本体育大学トライアスロン部 ヘッドコーチ、日本トライアスロン連合 マルチスポーツ委員長

足底腱膜炎(トレーナー編)

予防・再発予防

原因と対処方法

足底腱膜炎の原因は、トレーニング量の増加や体重の増加による足底腱膜への負担の増加(オーバーユース)が主なものですが、扁平足やハイアーチ、回内足、足底の筋力や柔軟性の低下などもその原因となります。マラソン選手が、足底腱膜炎により踵の骨に棘ができて、それを除去する手術を受けたという話を幾つか耳にします。足底腱膜炎には、兆候がありますので、その兆候を見逃さず、早めに対応する必要があります。
その兆候は、起床直後や長い時間座っていた後の歩行時に足の裏に強い張りや痛みが感じます。少し歩き続けるとその痛みは消えてしまうので、対処せずに進行してしまうことが多いようです。このタイミングでトレーニングの強度、時間を見直すことが大切です。
また、扁平足やハイアーチ、回内足、足底の筋力や柔軟性の低下がある方は、積極的にインソールやテーピングを利用して負担を軽減させることと、タオルギャザーなどの筋力の維持向上のためのエクササイズ、竹踏みやゴルフボールを利用した足裏のマッサージなどのリラクゼーションを行うことをお勧めします。
竹踏みは洗面台の前などに置き、歯磨きのときには必ず行うように習慣化することをお勧めします。

現場評価・応急処置

前述のように動きはじめの一歩目が痛いという兆候が見られ、そのままトレーニングを継続すると、歩行、走行中に足が地面につく瞬間や離れる瞬間に痛みや違和感を感じたりした場合、足底腱膜炎を疑います。
上記の兆候、痛みがある場合には、足底に負担のかかるトレーニングを一時中断しなければならない場合があります。ドクターに診断してもらってトレーニングの中止か軽減か、そして復帰の時期などを相談してください。炎症や痛みがある間はアイシングを十分に行いましょう。 ランニングを一時中断する必要がある場合は、プールでのトレーニング(水泳、歩行)や自転車など足底に負担がかからないもので心肺持久力の低下を防ぎます。自転車は本来ペダルの上に母指球をおくことが正しいのですが、症状が強い場合には、踵でペダルを踏むことで、足底への負担を減らすことができます。

リコンディショニング

予防&再発予防エクササイズ
まずは足底腱膜に影響する筋群のリラクゼーションを目的として、ストレッチングを行います。下腿や足趾(足の指)の屈筋群のストレッチング(写真1)が中心となりますが、大腿部の疲労蓄積や動きの悪さが下腿や足底への負担を増加させている場合があります。したがって、全身のストレッチングや股関節の各方向への動きが良くなるためのエクササイズを入念に行うようにしましょう。足底にある筋肉への強いストレッチングやマッサージなどは、症状が軽くなるまで待ち、踵より上部のストレッチング、エクササイズで足底への負担を軽減させます。
症状が軽くなってきたら、少しずつ足底の筋力強化を行います。まずは負荷をまったくかけない状態で、足趾を自由自在に動かすことができるようにします。足の指で「じゃんけん」を行うように動かしたり、左右に大きく開いたり、指を反らせたり、曲げたり自由自在に動かせるようにしましょう(写真2)。 次に、タオルやチューブを利用したエクササイズを行います。タオルを足の指でたぐり寄せるようにします。最初はタオルだけで行い、症状の改善具合によりタオルの端に水を入れたペットボトルなどを置いて、負荷を上げていきます。 このエクササイズをタオルギャザーと言います。チューブエクササイズは底屈、背屈だけでなく、小指を内側の下に向ける動作(内反、底屈)や小指を外側から上に上げる動作(外反、背屈)のエクササイズ(写真3、4)を行うようにし、アーチを補助するための筋力向上を狙います。 さらに、安定した筋力発揮のために、バランスボードやバランスディスク(写真5)などを用いたエクササイズを行います。バランスディスクのエクササイズでは膝関節、足関節を軽く曲げて、踏みつけるような力を加えて行い、足関節を安定させようとする筋肉を活性化させます。 シューズや床、地面など、環境面にも考慮する必要があります。できるだけ芝や土のコースを走るようにします。 ドクターからGOサインが出たら競技復帰となりますが、その場合はインソールやアーチを補助するテーピングなどを用いると再発予防となります。インソールは、既成のものと、自分の足に合わせたカスタムメイドのものがあります。カスタムメイドのインソールは、左右の足の形など人による足の形の違いに対応してくれます。冬の時期は、球技の競技者は特に走り込みを行うケースが多くなると思います。ランニングトレーニングを行う際は球技用のシューズではなく、ランニングシューズを利用するようにしてください。特に、アスファルトを走る競技者は注意が必要です。 砂の上を裸足〈はだし〉で走ることは足趾をよく使いますので、競技力向上のためにも短い時間で結構ですので、取り入れてみてください。

足底腱膜炎1

写真1 足趾(足の指)の屈筋群のストレッチング

足底腱膜炎2

写真2 足趾(足の指)のトレーニング

足底腱膜炎4
足底腱膜炎4

写真3、4 タオルギャザー(ゆっくり大きな動作で行う)

足底腱膜炎7

写真5 バランスディスク

足裏・足趾のストレッチング

足裏・足趾のトレーニング

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