腰椎分離症 Spondylolysis

腰椎分離症

Mitsutoshi Hayashi

林 光俊先生

医学博士、日本リハビリテーション医学会専門医、日本整形外科学会専門医、日本リウマチ学会専門医、JOC強化スタッフ、日本体育協会公認スポーツドクター

腰椎分離症

腰椎分離症は、腰痛の原因でもあり、体幹の前後屈、回旋を繰り返し行うスポーツに多く見られる

疾患の概要

腰椎分離症は中学生ぐらいのスポーツ選手に発症しやすい腰痛の一つであり、ヘルニアのような神経痛ではないが、スポーツのし過ぎで発症しやすい。腰椎という骨の亀裂により起こる腰痛であるため、長時間経過観察をする必要があります。

原因・発祥のメカニズム

解剖

腰椎上関節突起と下関節突起との間で、椎弓根部の骨連続性が途絶した状態であり、骨折と同様と考えてください(写真1、2)。

腰椎分離症1

写真1 腰椎分離症 斜位

腰椎分離症2

写真2 腰椎分離症 背面

原因

先天的に遺伝によって腰椎が弱く、発生的に分離しています。後天的には腰部の繰り返しのスポーツ動作によるストレスで起こる関節突起間部の疲労骨折であり、発育期のオーバートレーニングによる場合が多い。また、両側(左右)分離症の場合は、将来的に腰椎すべり症に移行しやすいのでさらなる注意が必要です。

診断

診断

腰椎レントゲン(写真3)にて、特に45度斜位像で分離部が確認できます。分離部は特徴的な画像でテリア(犬)の首輪といわれる典型的分離像を呈します。CTではさらに分離部が確認しやすく、MRIは所見がなく、むしろ椎間板ヘルニア(椎間板の突出像)との鑑別に有用です。

腰椎分離症3

好発部位

第5腰椎に発生しやすく、両側性の場合も多く見られます。

好発種目

野球、バレーボール、バスケットボール、サッカー、柔道、ラグビー、ウエイトリフティングなど、頻回に体幹の前後屈、回旋を行うスポーツに多く見られます。

好発年齢性別

13~14歳のジュニア期をピークに、男子の発症が圧倒的に多くなっています。

症状

腰部痛、臀部痛、大腿外側の鈍い痛み(重苦しい、だるい)で、背中をそらすと腰痛が増強しやすい(時には前かがみでも増強する)。両側に起こることもあります。長時間の運動のみならず長時間の立位、座位、中腰姿勢でも起こりやすいが、椎間板ヘルニアの様に神経麻痺〈まひ〉症状を伴うことはありません。疼痛〈とうつう〉のため、脊柱起立筋の緊張が高まります。

鑑別診断

椎間板ヘルニアは坐骨神経痛など鋭い痛みで、片側下肢の知覚障害、運動麻痺が起こりやすいものです。

治療・リハビリ

治療

一般的に保存療法が第1選択です。保存療法を選択した場合でも骨癒合を期待しての治療(6~12ヵ月)か、疼痛軽減目的(1~3ヵ月)かで安静期間は異なります。体幹に負担のかかるスポーツ活動は3~6ヵ月間休止します。実際には、長期間の休止は選手や周囲の理解が得られず、早期に復帰してしまい症状の再発を繰り返す場合が多く見られます。したがって、病態について懇切なる説明と理解が必要です。 疼痛対策には温熱ホットパック、低周波、干渉波などの物理療法、消炎鎮痛剤を用います。体幹の保護には幅広の腰ベルト(コルセット)も有用です。一定の安静期間後に疼痛が軽減したら体幹のストレッチング、腹背筋訓練など基本的運動を開始します。手術は保存療法に抵抗して長期間疼痛が残存する症例で、今後も長期間競技レベルのスポーツを望む症例に適応がある。分離部の動揺性が強い場合は骨移植手術、脊椎固定術などを行うこともあります。

代表例

14歳、男子中学生、柔道選手。柔道歴4年、初段、週5日間、1日2時間半の練習、筋力トレーニング、ストレッチングは行っていない。 主訴:腰部痛、臀部痛。 現病歴:約1年前より柔道練習後に腰部に疼痛が出現。特に治療せず、そのまま競技活動を継続していたところ最近、腰部全体に重苦しい腰痛となり、競技のみならず日常生活でも立っているのが困難になりスポーツ整形外科受診。同じ姿勢の保持、長時間歩行がつらくなる。 初診時症状:足のしびれ(-)、指床間距離マイナス30cm、坐骨神経痛(-)もSLR両側80度でやや低下。体幹の前後屈可動域減少、起立時やかがむなどが困難。体幹の動きがない動作は可能である。 家族歴:特記すべきことなし。 診断:レントゲン上、両側第5腰椎に分離症(テリアの首輪)を認める。CTにおいても椎間関節突起部の(骨性連続が断たれた)骨折が確認された。 治療:当初は柔道など体幹に負担のかかる動作を1ヵ月間禁止した。2週間後より強い腰痛が軽減したため体幹の軽いストレッチング、プール歩行を開始。1ヵ月後より腹背筋力トレーニング、ランニング開始する。  6ヵ月後、腰痛は練習が長期化すると出現するが、日頃からの体幹の回旋ストレッチングと腹背筋力強化で改善した。

Hitoshi Takahashi

髙橋 仁先生

帝京平成大学地域医療学部准教授
日本体育協会公認アスレティックトレーナー、はり・きゅう・マッサージ師

腰椎分離症(トレーナー編)

予防

腰椎への負担を軽減するために体幹や股関節周囲筋の柔軟性を保ち可動域を確保することや体幹筋力の強化がポイントとなります。特に股関節の可動域制限は、腰椎でその動作を代償(股関節の伸展制限を腰椎の後屈で代償してしまうなど)しその負担が分離症発生の一因となるため注意が必要です。

現場評価・応急処置

スポーツ現場での評価のポイント

腰椎分離症の所見として、体幹の後屈痛と棘突起の圧痛や陥凹が特徴です(写真1)。後屈動作は、側方から見て、腰椎のみで後屈していないか動きについてもチェックします。(写真2)。さらに、成長期のスポーツ選手では、1週間以上続く腰痛がある場合も要注意です。 これらの評価で分離症が疑われる場合には、医療機関を受診させます。

腰椎分離症1

写真1 棘突起は臀部の方向から触れて圧痛を見る

腰椎分離症2

写真2 体幹の後屈は側方から見て、腰椎のみで後屈していないかチェックする

リコンディショニング

アスレチックリハビリテーション

痛み、筋の過緊張などの症状が強い急性期は、物理療法やストレッチングで症状緩和に努めます。急性期の物理療法は、アイシング(寒冷療法)を用います。症状が安定して慢性期になったら、ホットパックなどの温熱療法を用います。 一方、ストレッチングは、腰背部、殿部、大腿部を行います。各動作では、痛みを誘発する股関節伸展や腰椎前弯が強くならないように注意しましょう(写真3~6)。

写真3 腰背部のストレッチング

腰椎分離症3

A:座位で開脚し膝関節をやや屈曲させて、背中全体を丸めるように上半身を屈曲させる

腰椎分離症4

B:ボールを使うと効果的である

写真4 臀部のストレッチング

腰椎分離症5

前脚の上に上半身を載せるようにして行う(写真では左臀部をストレッチ)。前脚の位置を変えるとストレッチ感も変化する

写真5 大腿四頭筋のストレッチング

腰椎分離症6

痛みが出ないように腰をそらせないようにする

写真6 ハムストリングのストレッチング

腰椎分離症7

背中全体を丸めるように上半身を屈曲させる

症状が落ち着いてきたら、次の段階に進みます。分離症発生の原因の1つとして、体幹後屈が骨盤後傾や股関節伸展とともに行われず、腰椎のみで行われている点が挙げられます。したがって、アスレティックリハビリテーションにおいては、股関節伸展のストレッチングと骨盤後傾を促す腹筋のトレーニングを実施して、体幹後屈時の腰椎への負担を軽くするようにします。 股関節伸展ストレッチングは、痛みの出ない範囲で段階的に行います(写真7)。

写真7 股関節伸展のストレッチング

腰椎分離症8

A:セルフストレッチング

腰椎分離症9

中間位から段階的に伸展位にしていく

B:パートナーストレッチング

腰椎分離症10

トレーナーは骨盤を固定して行う(写真では説明のため、左側をストレッチしているが、本来はストレッチする側と同側に位置して行う)

骨盤を後傾させる運動は、最初はトレーナーが動作を確認しながら行います(写真8-A)。慣れてきたら、セルフで行い(写真8-B)、段階的に腹筋の筋力トレーニングへと進めていきます(写真9)。

写真8 骨盤を後傾させる運動

腰椎分離症11

A:トレーナーが選手の腰部に手を入れ、腰部で手を圧迫させる

腰椎分離症12

B:腰部に手を入れ、腹筋の収縮と同時に腰部で手を圧迫させる。腹筋を収縮させて骨盤を後傾させる動作を覚える。上半身は、ヘソをのぞき込む程度に持ち上げる。

写真9 腹筋のトレーニング

腰椎分離症13

A:シットアップ

腰椎分離症14

B:クランチ

コンディショニング

離症に限らず、腰痛をもつ選手のコンディショニングとしては、体幹や股関節周囲柔軟性を保つこと、体幹筋力の強化がポイントとなります。

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