マレット指 Mallet finger

マレット指

Mitsutoshi Hayashi

林 光俊先生

医学博士、日本リハビリテーション医学会専門医、日本整形外科学会専門医、日本リウマチ学会専門医、JOC強化スタッフ、日本体育協会公認スポーツドクター

マレット指

マレット指は伸展位の指先にボールなどが当たり、DIP関節に屈曲方向のストレスが加わったときに発生することが多い。よって、野球、ソフトボール、バレーボールなどの球技系スポーツで好発する

疾患の概要

指のDIP関節(一般的にいう第1関節)が曲がって完全伸展できない変形をマレット指といいます。指伸展位で指先(主につめ側)にボールが当たるなどしてDIP関節に屈曲方向のストレスが加わったときに、末節骨に付着している伸筋腱が断裂したり(図)、ときに剥離骨折を伴ったり、指の変形(マレット変形)や可動域制限(完全伸展不可能)をきたしたりします。

原因・発症のメカニズム

受傷原因

野球(キャッチャーに多い)、ソフトボール、バスケットボール(パス時)、バレーボール(オーバーハンドパスやブロック時)、ハンドボールなどの球技系スポーツに多く、床やグラウンドでバウンドしたボールが指先を直撃し、DIP関節部にストレスが加わって発生します。運動レベルではトップからレクリエーションレベルまで幅広く発生します。

槌指

図 DIP関節に屈曲方向のストレスが加わると、伸筋腱の断裂を伴う場合がある。

マレット指1

写真1 マレット指では典型的な屈曲変形が生じる

マレット指2

写真2 DIP関節の剥離骨折を伴うマレット指

診断

指のDIP関節部での疼痛、腫張、発赤、熱感などが主症状で、剥離骨折を伴う場合は軽度の圧痛や典型的な変形が生じます(写真1)。このような場合には必ず医療機関を受診してください。
捻挫や靱帯損傷の症状と剥離骨折の症状とは類似しているので鑑別診断は難しく、レントゲンチェック(写真2)が必要です。

治療・リハビリ

治療

スプリント(副木)で指のDIP関節部を過伸展位にし、6週間固定します。剥離骨片が大きい場合には、手術をして整復固定を行います(写真3)。

マレット指3

写真3 剥離骨折における手術固定の例

予後

十分な固定期間が得られないとマレット変形が残存したり再発し、指先の完全伸展ができなくなります。

リハビリテーションの実際

第1期/急性期 (受傷直後〜3週)

応急処置としてRICE療法を行い、症例によってはギプスやシーネ固定で疼痛や腫張対策に努めます。固定中でもタオルで机を拭く動作など、上肢の軽いリハビリテーションは可能です。下肢の運動は受傷直後より許可します。

第2期/可動域訓練期 (受傷後3〜6週)

局所の安静期間は終了するので固定を除去します。そして、粘土を軽く握ったり、タオルを軽く引っ張ったりといった、自動・他動運動による指の関節(DIP、PIP:第2関節、MP:第3関節)可動域を広げる訓練を徐々に行います。

第3期/筋力強化時期 (受傷後4〜8週)

ゴムボールを用いての(求心性)筋力強化を積極的に行います。指を曲げたり伸ばしたりしてボールを握り、負荷をかける関節を変えていきます。チューブ練習と同様に、輪ゴムなどを用いて損傷指に直接ストレスが加わるようにし、(求心性・遠心性)筋力強化を行います。また、手関節の背屈・掌屈運動を行い、周囲の関節運動も強化します。

第4期/競技復帰時期 (受傷後8〜12週)

パス練習などを徐々に再開します。指立て伏せなどの、衝撃は受けないが指に強い負荷が加わるトレーニングを行います。競技復帰に向けては、再発予防や心理的安定感のために積極的にテーピングを用いましょう。

番外編:たかが突き指、されど突き指

突き指は指のケガを総称した一般用語であり、打撲や捻挫などの軽症から靱帯損傷、(剥離)骨折、脱臼まで、さまざまな病態が含まれています。そのため治療期間が2〜3日のときもあれば、数ヵ月かかるときもあります。病院に行くポイントとしては、腫れや痛みが強い(ソーセージのように腫れた)、変形している、内出血している、力が入らない、物が握れない、治るのに時間がかかっている、などが挙げられます。指の障害はスポーツ現場では軽視されがちですが、単なる突き指とみなして初期に適切な処置(治療)を受けなかったり、完治する前に復帰を余儀なくされたりするケースがあるので注意を要します。症状の見分け方ですが、指関節の動揺性(緩み)がない場合が捻挫であり、靱帯損傷では関節のストッパー役である靱帯が伸びているため関節に動揺性がみられます。捻挫で2〜3週、靱帯損傷で2〜3ヵ月、骨折で2〜3ヵ月、脱臼で1〜2ヵ月の治療期間が必要です。突き指を甘く考えないようにしましょう。

Yoshizumi Iwasaki

岩崎由純先生

NATA公認アスレティック・トレーナー、日本体育協会公認アスレティックトレーナー、JCCA(日本コア・コンディショニング協会)会長

マレット指

予防

手指の傷害は予防が一番です。傷害予防を意識したコンディショニングというと、とかくウェイト・トレーニングや補強運動、ランニング系やステップ系などの体力アップの同義語として使われていますが、そのなかにコーディネーションやバランス系が含まれていないと予防にはつながりません。手指のコンディショニングに関しても同様で、単純に伸筋腱や屈筋腱の補強だけを行っても、リズムやタイミングがずれてしまうと受傷してしまいます。予防のための第一歩は、正しい技術の習得と同時に、力を入れるタイミングをマスターすることです。特にブロックではタイミングが外れて力が抜けた瞬間に受傷するわけですから、常にボールとの接触のタイミングが感知できるように、目と身体の動きを連動するように練習します。

現場評価・応急処置

マレット指もベネットフィンガーも発生時には顕著な変形があり、即座に医療機関への紹介・移送が必要です。脱臼、骨折、腱の断裂などの判断は、医療機関での診察を受けない限り難しいのが現状です。開放性の脱臼や骨折であればどんな指導者も病院に連れて行きますが、そうでない場合には、その場で変形を整復しようとするケースがあるようです。腱の断裂や骨折の場合には、そのようなアプローチはかえって傷害を重篤なものにする危険性がありますので禁忌であり、避けなければなりません。医療機関では、保存療法か手術を適用するかどうかの議論が繰り返されているようですが、バレーボールの現場では、変形が残ったままプレーしているのが現状です。

リコンディショニング

 現場で行っているコンディショニングは、病院で行われるリハビリテーションとリンクさせる必要があります。病院での細かなリハビリテーションで関節可動域や筋力などが回復してスポーツの現場に戻ってきたら、現場では強烈な外力がかかっても壊れないような、さらに強くてしなやかな指を目指してトレーニングを続けます。そして、このコンディショニングは、徐々に実際の動きに近づけ、練習や試合につながっていく内容でなければなりません。ここではゴムを用いた伸展運動とスクイーズボールを用いた屈曲運動と、両者を組み合わせた例を紹介します。これらの種目は単独で行いますが、実際の競技の動きに近づける工夫をします。例えば投球動作に組み込んで、テイクバック時に伸展し、フォロースルー時にボールをつかむようにします。

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