鉄人に聞け!シンスプリント

症例解説Body & injury

Thigh,Calf,Shin太もも・ふくらはぎ・すね

シンスプリントShinsplint

  • 原因や治し方(医療編)
  • 予防や対処法(トレーナー編)
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はじめに

Shin(シン)=脛、すね、「弁慶の泣きどころ」ともいいます。シンスプリントは古典的な病名であり、幅広い解釈があって内容が一定でありません。過労性(脛骨)骨膜炎、過労性脛部痛、脛骨内側症候群などとも呼ばれています。そのため本稿では、疲労骨折やコンパートメント症候群*を除外した、骨膜あるいは筋腱の炎症に起因する障害に限定して述べます。


原因

オーバーユース症の1つであり、繰り返しのランニングやジャンプを過度に行った場合に発症しやすい障害です。過度の運動量、運動時間、運動内容、日数またはフォームの変更、硬い路面、薄く硬いシューズ(踵の摩耗)、下肢の形態異常(O脚、回内足、扁平足など)、下腿三頭筋の柔軟性低下、股・膝・足関節の柔軟性低下、足関節可動制限などが発生の誘因となります。このうち、新入部員などにみられる急激な運動量増加が一番悪い影響を及ぼします。思い当たる点がある人は、すぐに改善しましょう。  病態は下腿内側筋群の疲労による柔軟性低下、特にヒラメ筋を主として後脛骨筋、長趾屈筋付着部が脛骨の表面を覆う骨膜を牽引して微細損傷(骨膜炎)をきたし、下腿内側の痛みを発生させるものと考えられます(図1、2)。ランナーの発生頻度が高く、その20~50%に発生するといわれます。

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症状

徐々に発生する下腿内側(主に脛骨内縁中1/3、目安として脛骨内踝より12~20cm上)の圧痛、運動時痛、腫張が主症状で、足屈筋の抵抗運動で痛みは増強します。
症状の程度は、次の通りです。
Stage1:痛みはあるがウォームアップにより消失する
Stage2:ウォームアップにより痛みが消失するが、スポーツ活動終了近くに痛む
Stage3:日常活動に支障はないがスポーツ活動中、常に痛む
Stage4:局所の痛みは常に存在して日常生活にも支障がある


検査

骨膜の炎症であるので、レントゲン上では変化がないのが一般的です。症状が続く場合は再検査も必要です。この場合、のちに骨変化が出てきたら疲労骨折と診断を変更します。ただし、MRI画像にて脛骨の骨膜に肥厚した高信号変化(白色)が見られる場合があります。


治療

運動量など、考えられる上記の原因を制限します。急性期は局所の安静(ランニングの休止)、アイシング(アイスマッサージも)、消炎鎮痛剤を用います。形態補正には足底板を用います。


初期リハビリテーション

痛みの強い急性期はランニングの休止を徹底しますが、局所の安静時期からでも下肢の荷重運動を避け水泳、エアロバイク(踵でペダルを踏むように)、股関節、足関節、アキレス腱を中心とした下肢のストレッチングを行います。自発痛や歩行時痛が消失したら足趾でのタオルギャザー、足関節の軽いチューブトレーニングを行います。明らかな圧痛(押すと感じる痛み。自発痛ではない!)が消失したらウォーキングから始め、次に両脚踏み切りジャンプで痛みが出なければ軽いランニングを再開します(硬い路面を避ける)。ただし、練習量を急激に増やすと、再び痛みが出やすいので注意してください。


鑑別疾患

下腿の痛みの原因として脛骨疲労骨折、コンパートメント症候群が挙げられます。実際、疲労骨折の初期像とは鑑別困難ですが、初期治療法は同様でよいでしょう。付着部の筋腱炎はほぼ同様の障害といえます。


ポイント

脛に痛みを訴える選手がいたら、最近急激に運動量を増加してないかチェックすること。リハビリに際しては十分な治療期間を待たずに早期復帰することや、急激な運動量増加は再発を招きますので注意しましょう。練習前はもとより特に練習後に入念なストレッチングを行い、その日の疲労を残さないようケアを徹底しましょう。
*筋膜や骨膜に囲まれた区間(コンパートメント)の内圧が、出血や浮腫によって上昇して、痛みを生じるもの

シンスプリントとは

シンスプリントの定義は、「歩行、ランニングもしくは類似の運動によってもたらされる下腿内側、または後内側部の痛みで、安静によって痛みが軽減するもの」(Kues,1990年)といわれています。とても曖昧な表現でわかりにくいのですが、スポーツの現場では春先から6月までに頻発する、季節的に多くの選手を悩ませる原因不明の脛の痛みとして広く認識されています。しかし、シンスプリントが春先に出るのは、日本の特徴です。4月から新学期が始まり、クラブ活動が始まることと関係が深いようです。走り込みなどが始まり運動量が極端に増える時期に、急性の症状として発生するケースが多いからです。


MRI検査で確認

定義のなかにもありましたが、下腿の内側部周辺の部分的な痛みです。脛骨の内側辺りに出るので、スポーツの現場では疲労骨折との見分けがつきにくいため早い時期に診察を受けてください。最近では、MRI検査(写真1)などで内部の状態がはっきりと診断できます。後脛骨筋腱や長趾屈筋群の腱部、または脛骨の骨膜などの局所性炎症が、痛みの原因になっていることがMRIの検査で確認できます。

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チェック項目

オーバーユースが起因となることは間違いありません。が、なぜ、この部位に症状が出るのかが問題です。疲労骨折の場合は、脛の下1/3がやや曲がっていることとストレスのかかり方が原因になっているのでわかりやすいのですが、シンスプリントの場合は、ストレスのかかり方にアラインメント(特に過回内)、アーチの状態、筋疲労の程度などが複雑に絡みあっているようです。具体的には、骨格(姿勢)や筋肉の状態などアスリートの内的要因と、接地(着地)の角度、フォーム、シューズや床(グラウンド)などの外的要因など、チェック項目は広範囲に及びます。


痛みの程度

ほかのオーバーユースの障害も同じことがいえますが、まったく前触れがなく歩けなくなるほど痛くなることはありません。ただし、あまり我慢しすぎて悪化させないように注意が必要です。症状の程度についてはメディカル編を参照してください。


予防

まったく痛みを感じていないアスリートにシンスプリントの予防措置をとるのは、いささか不自然ですが、チーム全体でシンスプリントの発生率が高い場合は、練習内容や練習環境(床や地面の状態)などをチェックするべきです。痛みの程度がStage1~2からでも、それ以上の悪化を防ぐため予防策をとります。  可能であれば運動量のさじ加減をしますが、現実的には下腿の前面と後面の筋肉群の静的ストレッチ、マッサージ、アイシングなどのアフターケア、フォームや姿勢の矯正、衝撃吸収ができるシューズの選択、中敷きを調整するパッド(写真2)などを使ってのアラインメントの修正などが考えられます。

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処理

痛みの程度がStage3からStage4に入ると、治療が必要です。必ず設備の整った医療機関を受診しましょう。消炎鎮痛剤(内服・外用)が処方され、交代浴、超音波治療などを受けることもあります。  現場では、運動前後のストレッチングを励行させ、必要に応じてテーピングなどを適用します。以前は脛部に直接当てるテーピングも行われていましたが、足底部のテーピング(写真3)だけでもかなり症状が緩和するケースがあるようです。脛骨内縁部や関連している筋肉の走行に沿ってキネシオやチタンのテープを当ててみてもよいでしょう。  アスリート自身が、入浴後や就寝前にもう一度ストレッチングをしたり、足の裏や下腿部の疲労を翌日に残さないようにセルフマッサージなどを行うようにしたりすると治癒が促進されるといわれていますが、触れられないほど痛いときには、やはり安静とアイシングが基本です。

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痛みを感じたり、故障が発生したら、すぐに医師の診察を受けることをおすすめします。

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