シンスプリント Shinsplint

シンスプリント

ドクターによる症状解説

Mitsutoshi Hayashi

林 光俊先生

医学博士、日本リハビリテーション医学会専門医、日本整形外科学会専門医、日本リウマチ学会専門医、JOC強化スタッフ、日本体育協会公認スポーツドクター

シンスプリント

シンスプリントは、繰り返しのランニングやジャンプを過度に行った場合に発症しやすい障害

疾患の概要

Shin(シン)=脛、すね、「弁慶の泣きどころ」ともいいます。シンスプリントは古典的な病名であり、幅広い解釈があって内容が一定でありません。過労性(脛骨)骨膜炎、過労性脛部痛、脛骨内側症候群などとも呼ばれています。そのため本編では、疲労骨折やコンパートメント症候群を除く、骨膜あるいは筋腱の炎症に起因する障害に限定して述べます。

原因・発症のメカニズム

原因

オーバーユース症の1つであり、繰り返しのランニングやジャンプを過度に行った場合に発症しやすい障害です。過度の運動量、運動時間、運動内容、日数またはフォームの変更、硬い路面、薄く硬いシューズ(踵の摩耗)、下肢の形態異常(O脚、回内足、扁平足など)、下腿三頭筋の柔軟性低下、股・膝・足関節の柔軟性低下、足関節可動制限などが発生の誘因となります。このうち、新入部員などにみられる急激な運動量増加が一番悪い影響を及ぼします。思い当たる点がある人は、すぐに改善しましょう。  病態は下腿内側筋群の疲労による柔軟性低下、特にヒラメ筋を主として後脛骨筋、長趾屈筋付着部が脛骨の表面を覆う骨膜を牽引して微細損傷(骨膜炎)をきたし、下腿内側の痛みを発生させるものと考えられます(図1、2)。ランナーの発生頻度が高く、その20~50%に発生するといわれます。

シンスプリント1
シンスプリント2

図1、2 シンスプリントの原因

診断

症状

徐々に発生する下腿内側(主に脛骨内縁中1/3、目安として脛骨内踝より12~20cm上)の圧痛、運動時痛、腫張が主症状で、足屈筋の抵抗運動で痛みは増強します。
症状の程度は、次の通りです。
Stage1:痛みはあるがウォームアップにより消失する
Stage2:ウォームアップにより痛みが消失するが、スポーツ活動終了近くに痛む
Stage3:日常活動に支障はないがスポーツ活動中、常に痛む
Stage4:局所の痛みは常に存在して日常生活にも支障がある

検査

骨膜の炎症であるので、レントゲン上では変化がないのが一般的です。症状が続く場合は再検査も必要です。この場合、のちに骨変化が出てきたら疲労骨折と診断を変更します。ただし、MRI画像にて脛骨の骨膜に肥厚した高信号変化(白色)が見られる場合があります。

鑑別疾患

下腿の痛みの原因として脛骨疲労骨折、コンパートメント症候群が挙げられます。実際、疲労骨折の初期像とは鑑別困難ですが、初期治療法は同様でよいでしょう。付着部の筋腱炎はほぼ同様の障害といえます。

治療・リハビリ

治療

運動量など、考えられる上記の原因を制限します。急性期は局所の安静(ランニングの休止)、アイシング(アイスマッサージも)、消炎鎮痛剤を用います。形態補正には足底板を用います。

初期リハビリテーション

痛みの強い急性期はランニングの休止を徹底しますが、局所の安静時期からでも下肢の荷重運動を避け水泳、エアロバイク(踵でペダルを踏むように)、股関節、足関節、アキレス腱を中心とした下肢のストレッチングを行います。自発痛や歩行時痛が消失したら足趾でのタオルギャザー、足関節の軽いチューブトレーニングを行います。明らかな圧痛(押すと感じる痛み。自発痛ではない!)が消失したらウォーキングから始め、次に両脚踏み切りジャンプで痛みが出なければ軽いランニングを再開します(硬い路面を避ける)。ただし、練習量を急激に増やすと、再び痛みが出やすいので注意してください。

トレーナーによる対処法解説

Yoshizumi Iwasaki

岩崎由純先生

NATA公認アスレティック・トレーナー、日本体育協会公認アスレティックトレーナー、JCCA(日本コア・コンディショニング協会)会長

シンスプリント(トレーナー編)

予防

不自然ですが、チーム全体でシンスプリントの発生率が高い場合は、練習内容や練習環境(床や地面の状態)などをチェックするべきです。痛みの程度がStage1~2からでも、それ以上の悪化を防ぐため予防策をとります。
可能であれば運動量のさじ加減をしますが、現実的には下記の予防策などが考えられます。
・下腿の前面と後面の筋肉群の静的ストレッチ、マッサージやアイシングなどのアフターケア
・フォームや姿勢の矯正、衝撃吸収ができるシューズの選択
・インソール(中敷き)を調整するパッドなどを使ってのアラインメントの修正

現場評価・応急処置

スポーツの現場では春先から6月までに頻発する、季節的に多くの選手を悩ませる原因不明の脛の痛みとして広く認識されています。しかし、シンスプリントが春先に出るのは、日本の特徴です。4月から新学期が始まり、クラブ活動が始まることと関係が深いようです。走り込みなどが始まり運動量が極端に増える時期に、急性の症状として発生するケースが多いからです。オーバーユースが起因となることは間違いありません。が、なぜ、この部位に症状が出るのかが問題です。疲労骨折の場合は、脛の下1/3がやや曲がっていることとストレスのかかり方が原因になっているのでわかりやすいのですが、シンスプリントの場合は、ストレスのかかり方にアラインメント(特に過回内)、アーチの状態、筋疲労の程度などが複雑に絡みあっているようです。具体的には、骨格(姿勢)や筋肉の状態などアスリートの内的要因と、接地(着地)の角度、フォーム、シューズや床(グラウンド)などの外的要因など、チェック項目は広範囲に及びます。
<オーバーユース>
金属疲労と同じメカニズムで、同じ部位に繰り返して同じようなストレスがかかっているので下記のような対策をしましょう。
・運動量の調整、休養
・運動をしている環境(路面など)をやわらかい場所に移す

リコンディショニング

痛みの程度がStage3からStage4に入ると、治療が必要です。必ず設備の整った医療機関を受診しましょう。消炎鎮痛剤(内服・外用)が処方され、交代浴、超音波治療などを受けることもあります。  現場では、運動前後のストレッチングを励行させ、必要に応じてテーピングなどを適用します。しっかりと内側(骨)まで温まるようなウォーミングアップをしてください。下腿の血流量をアップすることは重要です。脛骨内縁部や関連している筋肉の走行に沿ってキネシオやチタンのテープを当ててみましょう。  アスリート自身が、入浴後や就寝前にもう一度ストレッチングをしたり、足の裏や下腿部の疲労を翌日に残さないようにセルフマッサージなどを行うようにしたりすると治癒が促進されるといわれていますが、触れないほど痛いときには、やはり安静とアイシングが基本です。

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