コンパートメント症候群 Compartment Syndrome

コンパートメント症候群

Mitsutoshi Hayashi

林 光俊先生

医学博士、日本リハビリテーション医学会専門医、日本整形外科学会専門医、日本リウマチ学会専門医、JOC強化スタッフ、日本体育協会公認スポーツドクター

下腿コンパートメント症候群

コンパートメント症候群は、蹴られる、タックルを受けるなどの動作で下腿を強く打撲することがきっかけで発症する

疾患の概要

はじめに

下腿コンパートメント症候群とは、スポーツや交通事故などによる打撲、骨折、脱臼などをきっかけに、それによる出血などで下腿の組織内圧が上昇して、筋肉内細動脈の血行障害を引き起こし、筋腱神経組織が壊死〈えし〉に陥る障害です。いったん組織が壊死に陥ると、機能障害は永久的になるため初期の迅速な判断が重要です。全身では特に下腿に好発します(写真1、2)。下腿は筋膜などで4つの小さい区域に区画(コンパートメント、図)されているため、内圧が上昇しやすいのです。

コンパートメント症候群1

写真1 膝蓋骨は正面を向いて、下腿は90度右回転している。下腿の腫脹が著明なコンパートメント症候群

コンパートメント症候群2

写真2 写真1のレントゲン像。脛骨、腓骨は骨幹部でらせん状骨折を呈している側面像であるが、足関節は90度回転して正面を向いている

コンパートメント症候群 図

図 下腿を輪切りにした4つのコンパートメントが存在している

原因・発症のメカニズム

解剖

下腿のコンパートメントは強い筋膜によって、4区画①前方、②側方、③浅後方、④深後方に分けられています。①前方には前脛骨筋、長母趾伸筋、長趾伸筋が存在し、②側方は長・短腓骨筋、③浅後方は腓腹筋、ヒラメ筋、足底筋、④深後方は後脛骨筋、長母趾屈筋、長趾屈筋、から成り立っています。

症状

各部位での疼痛、腫脹〈しゅちょう〉、圧痛、硬結(しこり)、運動時痛、コンパートメント内にある神経麻痺による知覚麻痺、他動的運動障害、他動的運動時痛を認めます。
①前方コンパートメント障害は最も頻度が高く、疼痛・腫脹・圧痛は下腿前外側にあり、深腓骨神経領域の知覚障害(第1、2足趾間)、筋力低下は足関節背屈(前脛骨筋、趾伸筋)にあり、他動的運動時痛は足関節と足趾の底屈時に存在します。
②側方コンパートメントでは圧痛は外側にあり、浅腓骨神経領域(下腿外側)の知覚障害、足関節外返し(長短腓骨)で筋力低下、足関節の内返しで他動的運動時痛、が出現します。
③浅後方コンパートメントでは圧痛は後方(ふくらはぎ)にあり、腓腹神経領域の知覚障害、足関節の底屈(腓腹筋、ヒラメ筋)筋力低下、他動的足関節の背屈時痛があります。
④深後方コンパートメントでは圧痛は後方(下腿内側)にあり、脛骨神経領域(足底内側)の知覚障害が見られ、足関節の後脛骨筋、足趾伸筋筋力低下、足趾の他動的背屈時痛があります。

診断

診断

内圧の測定は、血圧計や中心静脈圧測定方法を用いた簡便なneedle manometer法で、針を各コンパートメントに刺して計測します。そして30mmHg以上は本症とみなします。レントゲン検査では原因となる骨折や脱臼の有無を確認できます。MRIでは血腫の有無を確認できます。

好発スポーツ

急性例ではスキー、ラグビー、バスケットボール(での骨折や打撲時)に、また慢性例では陸上長距離、サッカーなどに好発します。

治療・リハビリ

治療

急激な疼痛や腫脹、変形がある場合は直ちに病院医療機関に搬送しましょう。応急的には局所の固定、挙上、アイシングなどのRICE処置を行います。上記コンパートメント症候群の症状に、骨折などの原因を把握して対処します(骨折の整復など)。内圧が50mmHg以上の場合は手術適応で、30mmHg以上が数時間経過する場合はコンパートメントの筋膜切開術(内圧を低下させる)を考慮します。切開した皮膚、筋膜は開放のままにしておきます。  慢性例では前脛骨筋や腓腹筋、腓骨筋などのストレッチを含めた練習前後の管理を十分にして、エキセントリックな筋力訓練は避け、コンセントリック筋収縮筋力トレーニングを中心に行います。術後は、約1ヵ月でランニング復帰をメドとします。

Hitoshi Takahashi

髙橋 仁先生

帝京平成大学地域医療学部准教授
日本体育協会公認アスレティックトレーナー、はり・きゅう・マッサージ師

コンパートメント症候群(トレーナー編)

予防

コンパートメント症候群は、打撲や筋挫傷などの外傷から徐々に進行して発生します。処置が遅れると、神経や筋に不可逆性の変化をきたす恐れがあります。よって、コンパートメント症候群予防のためには、原因となる外傷の応急処置を的確に行うことがポイントとなります。

現場評価・応急処置

打撲や筋挫傷の応急処置

コンパートメント症候群が好発する下腿の打撲や筋挫傷の応急処置を説明します。応急処置は、RICE処置を行い腫脹を軽減させます(写真1)。その際、圧迫は軽めに行います。また、患部の足部は知覚障害のチェックなどを行うために裸足にします(写真2)。あわせて足背動脈の拍動の有無も確認します(写真3)。拍動がない場合は、血管損傷が疑われます。直ちに医療機関へ搬送します。 RICE処置を行っても、腫脹や痛みが激しくなる場合も要注意です。コンパートメント症候群を疑い、足趾や足関節の自動運動障害や他動運動の激しい痛み、知覚鈍麻などの症状を確認します(表)。軽症の場合、痛みをこらえてなんとかプレーできる場合もありますが、プレーの継続がコンパートメント症候群の引き金となる場合もあるため痛みを我慢してのプレーは行わせないようにします。 また、処置ののち帰宅してから症状が出現する場合も考えられるため、選手にはコンパートメント症候群の自覚症状を伝えておき、異状があれば医療機関へ行くように指示しておくことも大切です。

コンパートメント症候群1

写真1 コンパートメント症候群予防のRICE処置

コンパートメント症候群2

写真2 足背部に触れて知覚障害のチェック

コンパートメント症候群3

足背動脈の触知

自覚症状

・痛み ⇒ だんだん強くなる痛み
・足関節、足趾を動かすと痛い ⇒ 自動運動時痛
・自動運動時痛 ⇒ 自動運動機能低下、運動神経の麻痺
・下腿の感覚が鈍い ⇒ 知覚神経障害

他覚症状

・腫脹 ⇒ 緊満?
・下腿の色をみる ⇒ 光沢、ピンク色
・押さえる ⇒ 当該コンパートメントの強い圧痛
・足関節や足趾の他動的運動 ⇒ 耐えがたい痛み
・足背動脈を触れてみる ⇒ 必ずしも減弱あるいは消失しているわけではない


【出展】
大久保衛ら:コンパーメント症候群, 『スポーツ外傷学Ⅳ下肢』医歯薬出版,2001.

リコンディショニング

アスレティックリハビリテーション

保存的に治療した場合は、自覚症状の軽減に合わせて荷重を許可し、足関節の関節可動域(ROM)や筋力を回復させて、段階的に練習に参加させていきます。 手術的に治療した場合は、術後1週間は安静を保ちます。その後、回復状況に合わせてROMや筋力の強化を行います。 4週でジョギングを始め、その後ダッシュへと運動強度を増やしていき、約3~4ヵ月で完全復帰となります。

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