鉄人に聞け!筋・筋膜性腰痛症

症例解説Body & injury

Waist

筋・筋膜性腰痛症Myofascial low back pain

  • 原因や治し方(医療編)
  • 予防や対処法(トレーナー編)
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疾患の概念

腰痛は腰部の痛みの総称です。スポーツ全般において最も頻度が高い傷害で、いくつかのタイプがあります。筋・筋膜性腰痛症は、主にスポーツ活動によって起こる腰の筋膜や筋肉の損傷による腰痛の一種です。


解剖

背骨を構成している骨(脊椎)のうち、腰椎は5個の骨の積み重ねで成り立っています。この骨と骨との間には、椎間板という柔らかいクッション代わりの組織があり、骨同士の衝撃を和らげています。また、腹筋(腹直筋、内外腹斜筋、腹横筋)と背筋(脊柱起立筋、広背筋、大腰筋)などが、背骨をとり囲むようにして支えています。


受傷原因

スポーツ活動では、ピッチング、ジャンプ、スイング、体幹の過伸展(背筋)や、屈曲(腹筋)、回旋(腹斜筋ほか)、中腰の姿勢から腰にひねりを加えるなど、スポーツ全般の動作で発生します。腰に負担のかかる激しい動作に多く起こり、また前傾姿勢の保持や着地時の衝撃なども腰痛の原因となります。


筋・筋膜性腰痛症

スポーツ中の無理な体勢によって起こる急性の筋膜や筋肉の損傷は、いわゆる肉ばなれです。腰椎捻挫(靱帯や関節包の損傷も含む)もほぼ同じ意味合いです。慢性の症状は、主に使いすぎ(オーバーユース)による疲労が原因なので、適度な休養や十分なストレッチングが必要です。このオーバーユースによる症状として背筋の緊張が高く、筋肉に沿った痛みがあります。しかし、下肢のしびれや筋力低下、知覚障害などの神経症状、レントゲンでみられるような骨の変化はありません。また、鑑別は困難ですが、いわゆるぎっくり腰の多くは筋膜が損傷したものだと思われます。


鑑別疾患

腰椎椎間板ヘルニア腰椎の間にある椎間板から軟骨が飛び出して神経を圧迫し、腰、臀部、下肢後面の疼痛(坐骨神経痛)や足先にしびれ感などが出現する。腰部への過度な負荷が原因だと考えられるが、レントゲンでは鑑別できない。
腰椎分離症発育期において、腰に大きな負荷のかかるスポーツ選手に多くみられる。腰椎後方の椎弓が分離(疲労骨折)しており、分離部の異常可動によって疼痛が発生する。体幹を後屈すると腰痛が増強しやすい。レントゲンで鑑別できる。

治療

急性の腰痛症では身動きも困難な場合があり、このようなときは第一に安静にしましょう。ただし、いたずらに長い安静は筋力や柔軟性の低下につながるため、強い疼痛が軽減したらすみやかにストレッチングを行います。そのため、腰痛に対する十分な理解と、ストレッチングなどのふだんの管理が必要です。  また、消炎鎮痛内服剤、湿布などの外用剤の使用や、ホットパック、物理療法(電気治療、低周波、干渉波、超音波、レーザー=写真1)、鍼、マッサージ、カイロプラクティックなど、さまざまな治療がありますので、症状や病状に応じて治療法の選択も変化します。  腰痛用ベルトには、腰椎や骨盤に過大な動的負担が加わらないように安定させる目的がありますので、スポーツ選手にも有用です(写真2)。

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危険信号

安静時の痛み、坐骨神経痛(臀部)、下肢のしびれや知覚障害などが出現すると危険信号です。慢性化した腰痛や、安静を保持しても再発する腰痛では、筋肉のみならず腰椎の変化や神経による原因が考えられますので、整形外科専門医を受診してください。また、内臓疾患や腎臓・尿路の結石などが原因の腰痛もありますので、注意を要します。


予防法

脊椎の安定を目的とする腹筋や背筋の強化と、ストレッチングによる柔軟性の獲得が有用です。腹筋運動では、股関節、膝関節を軽度に屈曲して行うと他部位への負担を軽減できます(写真3)。ストレッチングでは体幹の可動域改善や、腹筋・背筋・体幹の回旋動作を含む筋力強化を行います。特に股関節には腰椎や骨盤からの筋肉が付着しており、股関節が硬いと腰にも負担がかかるので、ストレッチングによる柔軟性の獲得が大事です。

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ワンポイントアドバイス

股関節の柔軟性腰痛改善には股関節の柔軟性獲得が大切です。SLRテスト、立位体前屈、腹臥位での踵臀距離などの柔軟性チェックを行います。股関節周辺の筋柔軟性が低下すると、腰部への負担が増加します。  股関節の屈曲(ハムストリングス大腿後面の伸張)・伸展(大腿四頭筋)・外転(内転筋)・内転(腸脛靱帯)などのストレッチングによって股関節の可動域獲得を図りましょう。特に慢性の腰痛では、体幹の回旋ストレッチが有用です。

原因の想定

筋付着部の骨に対して、急激かつ強い力が働き骨折を生じるものが裂離骨折です。したがって、これらは強力な収縮力を発揮する筋の付着部に発生し2本足で立つことにより素晴らしい文明を手に入れた人間は、その代わりに腰痛と常に隣り合わせになってしまいました。精神的なストレスを抱えている場合には、その原因を取り除いて軽減させますが、腰痛も同様に原因となるストレスを見つけて少しでも軽減させることが大切です。  腰痛は骨折や捻挫とは違い、痛みが発生する原因は1つではありません。さまざまな原因が複雑に絡み合って発生する場合が多いので、特定せずにいろいろな原因を想定して考えてみてください。


腰痛の種類

一般的な「腰痛」の多くは、医師によって診断される腰椎椎間板ヘルニアや腰椎分離症以外に、伸展型(写真4)、屈曲型(写真5)、回旋型(写真6)、安静型、不安定型、と5つのタイプに分けられます。安静型、不安定型は原因をつき止めにくいのですが、伸展型、屈曲型、回旋型は原因を特定しやすいのが特徴です。

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伸展型は、身体を後ろに反らす動作で痛みや違和感が増します。原因には、腸腰筋や大腿四頭筋などの股関節屈曲にかかわる筋群の柔軟性の低下や、股関節伸展筋(ハムストリングス)がうまく働かないなどが考えられます。また屈曲型では、立位体前屈のように身体を前に倒す姿勢で痛みや違和感が発生し、腰背部や臀部の筋群、及びハムストリングスの緊張が原因であると考えられています。回旋型は、体幹の回旋によって痛みが増強することから、腹筋がしっかりと働いていない、筋力不足、腰方形筋(回旋した側の腰部の筋肉)の柔軟性低下、などが原因として挙げられます。 以上の分類が必ずしもすべての腰痛の症状や原因ではありませんが、特徴を把握し、対処していく段階では参考になります。


対処・予防法

腰痛の対処・予防方法は、まずは痛みの軽減を優先します。それから、体幹部の筋力・筋持久力の向上と股関節を中心とした柔軟性の向上が大切です。関係する部位のみのストレッチングだけでなく、全身的に行うことが望ましいのですが、ここでは、股関節、腰部のストレッチングを中心に紹介します。(写真7,8,9,10) しかし、痛みが強い状態で行うと、筋が緊張して痛みが増強する場合もありますので、筋の過緊張を和らげてから取り組むとよいでしょう。そのためには、病院でよく行われる牽引や温熱療法、超音波に加え、マッサージや鍼治療などが効果的です。自分に合った治療法をドクター、トレーナーと相談してください。急激に痛めた直後には適さない治療法もありますので注意してください。また、腰部への負担を軽減させる腰痛用のサポーターなども販売されていますので、積極的に利用してよいと思います(写真2)。

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エクササイズ

腰痛の予防と対処には、腹筋や背筋が効果的だといわれていますので、さまざまな腹筋群や背筋群のエクササイズを行ってみてください。体幹部の筋力を鍛えて腹腔内圧が上昇すると、脊柱への負担は30~50%軽減され(図)、腹圧性脊柱支持能力が高まります。 もし、腰痛を抱えていて体幹部強化のエクササイズができない方は、動きを制限しながら行ってみてください。

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ストレッチング

柔軟性をチェックします。左と右、前と後ろなど、ほかの選手と比較して柔軟性の低い部位は、より多くストレッチングすることをお勧めします。

股関節屈筋群股関節屈筋群の腸腰筋や大腿直筋、大腿筋膜張筋などの柔軟性が低下すると、骨盤の後斜が制限されて前傾が強くなる傾向がみられ、腰椎の前弯が強くなって伸展型の腰痛になる可能性が高まります。みなさんは大腿部前面のストレッチまではよく行うのですが、股関節屈筋群までは行っていないことが多いようです。 image_03_10
股関節伸筋群大臀筋やハムストリングスなどの股関節伸筋群や、梨状筋などの外旋筋群の柔軟性が低下すると、体幹の屈曲動作時に骨盤が前傾しなくなるため、屈曲型の腰痛の原因になることがあります。競技別では、低い姿勢で構えるバレーボールでは下腿後面の柔軟性の低さが腰痛の原因になったり、水泳では肩甲骨周辺の柔軟性の低下が腰痛の原因となったりします。 このことから考えても、 部位ごとのストレッチも大切ですが、総合的な全身ストレッチングを日常的に行うことが大切です。体幹のリラックスとストレッチングには、フォームローラーなどを利用するとよいでしょう(「月刊コーチングクリニック」2001年11月号特集参照)。 image_03_11

筋力トレーニング

腹筋群や背筋群、股関節の屈曲や伸展にかかわる筋群がうまく連動することは、腰痛の予防につながります。痛みが軽減して、一般的な腹筋群、背筋群のエクササイズが可能になってきたら、これらの筋群を同時に使うようなエクササイズを行うようにしてください。バランスボールなどを利用したエクササイズも有効です。

腹筋image_03_12
背筋image_03_13
股関節伸展筋image_03_14
腹筋と背筋バランスボールを使って腹筋群と背筋群を同時に使うエクササイズを行います。image_03_15

痛みを感じたり、故障が発生したら、すぐに医師の診察を受けることをおすすめします。

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