鉄人に聞け!マレット指(槌指)

症例解説Body & injury

Elbow, Wrist, Finger肘・手首・指

マレット指(槌指)Mallet finger

  • 原因や治し方(医療編)
  • 予防や対処法(トレーナー編)

マレット指

指のDIP関節(一般的にいう第1関節)が曲がって完全伸展できない変形をマレット指といいます。指伸展位で指先(主につめ側)にボールが当たるなどしてDIP関節に屈曲方向のストレスが加わったときに、末節骨に付着している伸筋腱が断裂したり(図)、ときに剥離骨折を伴ったり、指の変形(マレット変形)や可動域制限(完全伸展不可能)をきたしたりします。


受傷原因

野球(キャッチャーに多い)、ソフトボール、バスケットボール(パス時)、バレーボール(オーバーハンドパスやブロック時)、ハンドボールなどの球技系スポーツに多く、床やグラウンドでバウンドしたボールが指先を直撃し、DIP関節部にストレスが加わって発生します。運動レベルではトップからレクリエーションレベルまで幅広く発生します。


症状

指のDIP関節部での疼痛、腫張、発赤、熱感などが主症状で、剥離骨折を伴う場合は軽度の圧痛や典型的な変形が生じます(写真1)。このような場合には必ず医療機関を受診してください。捻挫や靱帯損傷の症状と剥離骨折の症状とは類似しているので鑑別診断は難しく、レントゲンチェック(写真2)が必要です。


治療

スプリント(副木)で指のDIP関節部を過伸展位にし、6週間固定します。剥離骨片が大きい場合には、手術をして整復固定を行います(写真3)。


予後

十分な固定期間が得られないとマレット変形が残存し、指先の完全伸展ができなくなります。


リハビリテーションの実際

第1期/急性期(受傷直後〜3週)応急処置としてRICE療法を行い、症例によってはギプスやシーネ固定で疼痛や腫張対策に努めます。固定中でもタオルで机を拭く動作など、上肢の軽いリハビリテーションは可能です。下肢の運動は受傷直後より許可します。
第2期/可動域訓練期(受傷後3〜6週)局所の安静期間は終了するので固定を除去します。そして、粘土を軽く握ったり、タオルを軽く引っ張ったりといった、自動・他動運動による指の関節(DIP、PIP:第2関節、MP:第3関節)可動域を広げる訓練を徐々に行います。
第3期/筋力強化時期(受傷後4〜8週)ゴムボールを用いての(求心性)筋力強化を積極的に行います。指を曲げたり伸ばしたりしてボールを握り、負荷をかける関節を変えていきます。チューブ練習と同様に、輪ゴムなどを用いて損傷指に直接ストレスが加わるようにし、(求心性・遠心性)筋力強化を行います。また、手関節の背屈・掌屈運動を行い、周囲の関節運動も強化します。
第4期/競技復帰時期(受傷後8〜12週)パス練習などを徐々に再開します。指立て伏せなどの、衝撃は受けないが指に強い負荷が加わるトレーニングを行います。競技復帰に向けては、再発予防や心理的安定感のために積極的にテーピングを用いましょう。

番外編:突き指とは

突き指は指のケガを総称した一般用語であり、打撲や捻挫などの軽症から靱帯損傷、(剥離)骨折、脱臼まで、さまざまな病態が含まれています。そのため治療期間が2〜3日のときもあれば、数ヵ月かかるときもあります。病院に行くポイントとしては、腫れや痛みが強い、変形している、内出血している、力が入らない、物が握れない、治るのに時間がかかっている、などが挙げられます。
 指の障害はスポーツ現場では軽視されがちですが、単なる突き指とみなして初期に適切な処置(治療)を受けなかったり、完治する前に復帰を余儀なくされたりするケースがあるので注意を要します。
 症状の見分け方ですが、指関節の動揺性(緩み)がない場合が捻挫であり、靱帯損傷では関節のストッパー役である靱帯が伸びているため関節に動揺性がみられます。捻挫で2〜3週、靱帯損傷で2〜3ヵ月、骨折で2〜3ヵ月、脱臼で1〜2ヵ月の治療期間が必要です。突き指を甘く考えないようにしましょう。

突き指の原因

バレーボールの現場では、いわゆる突き指の傷害発生は、日常茶飯事といっても過言ではありません。その原因と内容も実にさまざまです。
 初心者レベルでは、オーバーパスの練習中にリズムとタイミングが合わなくて突き指することがあります。また初心者に限らず、強烈なスパイクやジャンプサーブをオーバーパスで取りに行った場合は、誰にでも危険性があります。
 また、あまり多くはありませんが、スパイクを打ちにいって突き指することもあります。ボールに集中していればあり得ないように思われますが、相手の動きを気にしてタイミングがずれたときや、トスの高さが狂ってもなんとかして打とうとしたときなどに発生します。こういった場合、フルスイングしているにもかかわらず軟打が飛んでいくので、「全力チップ」といわれていますが、これで脱臼などしていたら洒落になりません。
 突き指に関していえば、バレーボーラーが一番恐れている動作はブロックです。相手がスパイクを打ってくるタイミングと、ブロックを出すタイミングとがずれたときに、「指をもっていかれる」感じで受傷するケースが多くみられます。特に、着地態勢に入って指先の力が抜けた瞬間が、最も危険なタイミングです。
 ほかにも、意外なところで突き指をすることがあります。レシーブの際に床に引っかける、自分やほかの選手のユニホームにひっかける、ネットや白帯に引っかける、など、実はさまざまな危険因子が転がっているのです。


ベネットフィンガー

バレーボールの世界では、マレット指のほかにボタンホール変形(ベネットフィンガー)という指の傷害も多くみられます。これは、第2関節が曲がったままの状態で中節骨基部の伸筋腱が切れた場合や、脱臼後の処置が悪くて関節そのものが癒着した場合に起きます。最も多いのは、PIP関節の開放性脱臼後に関節が癒着して発生するケースです。
 マレット指もベネットフィンガーも発生時には顕著な変形があり、即座に医療機関への紹介・移送が必要です。脱臼、骨折、腱の断裂などの判断は、医療機関での診察を受けない限り難しいのが現状です。開放性の脱臼や骨折であればどんな指導者も病院に連れて行きますが、そうでない場合には、その場で変形を整復しようとするケースがあるようです。腱の断裂や骨折の場合には、そのようなアプローチはかえって傷害を重篤なものにする危険性がありますので禁忌であり、避けなければなりません。
 医療機関では、保存療法か手術を適用するかどうかの議論が繰り返されているようですが、バレーボールの現場では、変形が残ったままプレーしているのが現状です。


手指の傷害予防

手指の傷害は予防が一番です。傷害予防を意識したコンディショニングというと、とかくウェイト・トレーニングや補強運動、ランニング系やステップ系などの体力アップの同義語として使われていますが、そのなかにコーディネーションやバランス系が含まれていないと予防にはつながりません。
 手指のコンディショニングに関しても同様で、単純に伸筋腱や屈筋腱の補強だけを行っても、リズムやタイミングがずれてしまうと受傷してしまいます。予防のための第一歩は、正しい技術の習得と同時に、力を入れるタイミングをマスターすることです。特にブロックではタイミングが外れて力が抜けた瞬間に受傷するわけですから、常にボールとの接触のタイミングが感知できるように、目と身体の動きを連動するように練習します。
 現場で行っているコンディショニングは、病院で行われるリハビリテーションとリンクさせる必要があります。病院での細かなリハビリテーションで関節可動域や筋力などが回復してスポーツの現場に戻ってきたら、現場では強烈な外力がかかっても壊れないような、さらに強くてしなやかな指を目指してトレーニングを続けます。そして、このコンディショニングは、徐々に実際の動きに近づけ、練習や試合につながっていく内容でなければなりません。
 ここではゴムを用いた伸展運動(写真4)とスクイーズボールを用いた屈曲運動(写真5、6)と、両者を組み合わせた例を紹介します(写真7)。これらの種目は単独で行いますが、実際の競技の動きに近づける工夫をします。例えば投球動作に組み込んで、テイクバック時に伸展し(写真8)、フォロースルー時にボールをつかむようにします(写真9)。


テーピング

マレット指や脱臼後の手指のテーピングは、基本的にバディーテープと呼ばれる患部の隣の指を副木代わりにした巻き方をします(写真10)。基本的には尺骨側の指を利用しますが、第5指(小指)にケガをした場合には、第4指(薬指)を使います。
 また、予防のためのテーピングは、DIP関節部を軽く巻いているだけでも症状をかなり軽減させることができます(写真11)。ブロック練習の際に軍手などをつけると発生率が低くなりますが、現時点では医学的な裏づけがありません。プラシーボ効果*ではないかといわれていますが、予防効果はあるようです。
*プラシーボ効果:薬効成分を含まないプラセボ(偽薬)を薬だと偽って投与された場合、患者の病状が良好に向かってしまうような治療効果を指す。

痛みを感じたり、故障が発生したら、すぐに医師の診察を受けることをおすすめします。

肩・ヒジ・手首・指の痛み 対策ハンドブック

肩のつくりから、ケガ予防のストレッチ法などをわかりやすく紹介!
「肩・ヒジ・手首・指の痛み 対策ハンドブック」

PDFダウンロード

「親指」のサポーターをご紹介

商品リストはこちらから