変形性膝関節症 Gonarthrosis / Knee osteoarthrosis(OA)
ドクターによる症状解説

Mitsutoshi Hayashi
林 光俊先生
医学博士、日本リハビリテーション医学会専門医、日本整形外科学会専門医、日本リウマチ学会専門医、JOC強化スタッフ、日本体育協会公認スポーツドクター
変形性膝関節症
疾患の概要
変形性膝関節症は近年、中高年のスポーツ愛好家の間で問題となっている、膝痛原因の代表的疾患です。
原因・発症のメカニズム
膝関節の軟骨が、加齢による変化(老化)または膝の外傷後に、徐々にすり減って変形してくる関節の変形症です。O脚傾向の人が多いので膝の内側の軟骨がすり減る場合が多いとされています。欧米人では外側型もあり、お皿の骨(膝蓋骨)の軟骨が摩耗する型もあり、各型混在しています。
発生要因
日々の関節の摩耗による場合と、半月板や靭帯損傷後に関節変化が出る場合があります。
肥満者のほうが膝への負担が大きく、軟骨も摩耗しやすいです。
もともと加齢で起こることに加え、最近では中高年のスポーツ愛好家が増えており、それにつれて膝への負担率が多くなり、変形性膝関節症の受診者は増加しているのが現状です。
症状
膝関節の疼痛、腫脹、水腫(水がたまる)、熱感が主で、特に膝の内側(親指側)が痛む場合が多いようです。膝の屈伸がしにくくなり、立ち座りや、歩きはじめに特に痛みが生じます。
診断
検査
レントゲンでは膝関節の空間が狭くなってくることが確認できます(写真1)。また関節辺縁の骨棘形成も認められます。MRIでは関節軟骨の摩耗と、相対する関節面の信号変化(黒色)が見られます(写真2)。

写真1 軟骨が摩耗して、内側の関節面が狭くなっている(赤丸印)
左右差をみとめます

写真2)写真1と同一症例のMRI(写真と同一患者)。内側半月板が摩耗して上下する関節面の(黒色)変化を認める(赤丸印)
好発年齢と男女差
50才以降に多く、年齢とともに増加します。過去に膝の怪我をした人は、これより早めに発症する場合もあります。女性が男性の4倍多いとされています。
鑑別疾患
離断性骨軟骨症、突発性骨壊死、半月板損傷など
治療・リハビリ
まずは運動量を少しセーブしましょう。太もも前面の筋肉の強化(膝を伸ばす)、サポーターによる関節の保護や保温、膝関節に熱感があればアイシング、足底板(インソール)の使用、ヒアルロン酸注射、湿布、消炎鎮痛剤など、状況により対処していきます。歩くときに強く支障(重症)がある場合は手術を考えます。内視鏡による関節のクリーニング術、人工関節置換術や骨切り術などがあります(専門医に相談しましょう)。
トレーナーによる対処法解説

Yasuhiro Nakajima
中島靖弘先生
湘南ベルマーレスポーツクラブトライアスロンチーム GM
株式会社アスロニア ディレクター兼ヘッドコーチ
⽇本トライアスロン連合 マルチスポーツ対策チームリーダー
変形性膝関節症
リコンディショニング
痛みがあると身体活動量が減り、その影響で筋力が低下し、筋力による保護が十分ではなく膝への負担が大きくなってしまい、痛みが更に強くなったりします。この悪循環を避けるため、痛みが強くならない範囲で積極的に運動を⾏う必要があります。膝への負担を軽減させられるよう、以下の3つの事を⽬的としたトレーニング、ストレッチングを⽇常的に⾏い、活動的な⽣活を送る工夫をしてみてください。
1) 膝の周りにある筋肉を強化する
2) 膝の周りにある筋肉の動きをよくする
3) 膝に負担をかけない姿勢を維持する
1) 膝の周りの筋肉を強化する
太ももの筋肉(大腿四頭筋)の中でも、膝のすぐ上にある筋肉は特に膝への負担を減らすために大切な筋肉です。意識して鍛えようとしないと筋力が向上しない部位でもありますので、日常的にトレーニングを行うようにしましょう。特別な器具を使用しなくても行えるトレーニングがありますので、動画を見ながら実施してみてください。
大腿四頭筋のトレーニング
※筋力が回復した後、再発を防ぐためのトレーニングです。ひざに痛みがある場合は行わないでください。
スクワットのトレーニング動画
バランスをとりながら、自分の身体の重さを負荷としてトレーニングするスクワットは有効です。
※筋力が回復した後、再発を防ぐためのトレーニングです。ひざに痛みがある場合は行わないでください。
2) 膝の周りにある筋肉の動きをよくする
ふくらはぎ、太ももの前、裏の筋肉の柔軟性が低くなると、歩行時や階段の昇降で動きが悪くなり、負担がかかりやすくなります。痛みのない範囲でストレッチングを日常的に行うようにしましょう。
ふくらはぎのストレッチング動画
大腿四頭筋のストレッチング動画
太もも裏側(ハムストリング)のストレッチング動画
3) 膝に負担をかけない姿勢を維持する
日常生活、歩行時だけでなく、運動時に姿勢が悪いと身体の各部位に必要以上に負担がかかります。特に猫背で下を向くなどの姿勢は、歩行、走行時に後方や側方への余分な動きを生んだり、重心移動がスムーズではなくなったりして、大腿四頭筋への負担を増加させ、その結果、膝関節への負担を増加させてしまいます。
正しい姿勢は、壁に背中をつけて確認することができます。踵、殿部、肩、後頭部を壁につけて立ち、腰に手のひらが一枚入るくらいの姿勢が余分な負担をかけずに活動できる姿勢です。胸の筋肉や太ももの前、裏の筋肉、股関節の筋肉の柔軟性が低いと正しい姿勢を維持することができませんので、ストレッチングを習慣化させてください。また腹筋など体幹部の筋力向上も膝関節への負担を軽減させてくれます。ストレッチングと合わせて腹筋をはじめとした体幹部のトレーニングも行ってみてください。
正しい姿勢を維持するために必要な胸のストレッチング
正しい姿勢を確認する方法

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