鉄人に聞け!ジャンパー膝 別名:膝蓋腱炎(靭帯炎)

症例解説Body & injury

Knee

ジャンパー膝 別名:膝蓋腱炎(靭帯炎)Jumper's knee/Patella tendinitis

  • 原因や治し方(医療編)
  • 予防や対処法(トレーナー編)
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疾患の概念

ジャンパー膝とは名前が示すごとく、バレーボールやバスケットボールなどでジャンプや着地動作を頻繁に行ったり、サッカーのキック動作やダッシュなどの走る動作を繰り返したりするスポーツに多くみられる、オーバーユースに起因する膝のスポーツ障害です。


原因

大腿四頭筋の柔軟性低下が要因の1つに挙げられます。特に成長期の長身選手は、骨の成長に筋肉の成長が追いつかず、相対的筋短縮(筋肉が硬い)状態を招いた結果、そのストレスが末梢の膝蓋骨周辺に蓄積するために起こる慢性・疲労性障害です。


病理・解剖

ジャンプやダッシュなどによる膝関節の屈伸動作を頻繁に、かつ長時間にわたって行う場合、膝伸展機構(大腿四頭筋が引っ張られることで膝蓋骨、膝蓋腱、脛骨結節にまで牽引力が加わる)に過度な牽引力が繰り返し加わることで、膝蓋骨周辺に微細損傷を引き起こします(図)。病態は腱実質部に出血、浮腫、ムコイド変性(結合組織の粘液変性)、フィブリノイド変性(線維素様のものが組織に沈着して組織傷害や炎症を引き起こす)などの変化をきたし、微少断裂や、最重症例ではまれに完全断裂に至ります。

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好発年齢

12〜20歳。特に10代の男性に多い。


左右差

罹患側に左右差はありませんが、チェックにて疼痛を訴えた選手の3分の1は両側例でした。そのため、片側に痛みを感じた場合でも、反対側の管理も重要です。


頻度

バレーボールナショナルチームのメディカルチェックにて、108名中35名が痛みを訴え、罹患率は32.4%に及びました。


臨床症状

運動時に発生する膝前面の疼痛と圧痛(写真1)、局所の熱感、腫脹を伴います。重要な所見として、腹ばいにして膝を曲げると、大腿前面の突っ張ったような疼痛から逃れるために尻上がり現象(写真2)が出現します。

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好発部位

膝蓋骨下極から膝蓋腱付着部(約7割)、膝蓋骨上極から大腿四頭筋腱付着部(約2割)、膝蓋腱中央部から脛骨結節付着部(約1割)です(「病理・解剖」図)。


治療法

疼痛の程度によって治療が異なるため、病期を4段階に分けます。最近では予防、再発防止用に装具の使用が勧められています。

Phase1運動後に疼痛が生じる場合は、大腿前面のストレッチと局所の練習後のアイシングを徹底する。サポーター装具をつける。
Phase2運動前後に疼痛が現れる場合は、上記に加えてジャンプ動作の休止、膝と股関節を中心とした下肢の運動療法と局所のアイシングを行う。
Phase3運動に支障をきたす疼痛では、月単位での運動休止と下肢の筋肉のバランス改善を目的としたストレッチングを行い、疼痛が消失してからトレーニングを再開する。
Phase4断裂例では縫合手術が必要である。
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MRI所見

全日本バレーボールチームのメディカルチェックを行った結果、腱の形態は、膝蓋骨下極を中心に全例肥厚像(健常例は3〜4の均一な帯状低信号)を呈しました。なかでも膝蓋骨下極で平均8.4(健常比227%)と最も太く、中間部で5.3(123%)、脛骨結節部で4.9(113%)でした(写真3)。

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類似疾患

オスグッド病…主に10〜15歳の男子に起こる脛骨結節部の骨化障害です。


注意点

ジャンパー膝は急性外傷ではないために運動指導者や選手の障害に対する知識が乏しく、大半の選手は発症初期に医療機関を受診していません。治療を怠ると慢性化の原因にもなりますので、運動指導者はこの疾患について正しく理解をした上で、練習内容や時間の調整を十分に行ってください。

ジャンパー膝のオンセット

ジャンパー膝は、代表的なオーバーユース(使いすぎ)からくる障害です。ジャンプやスクワットなど膝関節を酷使するスポーツでよくみられます。しかし、オーバーユースの特徴でもありますが、いつ障害レベルに達したかがわかりにくいことが現場泣かせの問題点です。痛みに対して我慢強い選手には特に注意しましょう。
 症状の評価は、選手がトレーナーに痛みを訴えてきたときの程度がポイントになります。
 違和感がある=膝蓋骨の下方に違和感がある。跳ぶと痛い=走っても平気だがジャンプすると痛い。動くと痛い=ジャンプだけでなく激しい動きをすると痛む。歩いても痛い=我慢して練習していたが、ちょっと歩くだけでも痛い。触ると痛い=前からちょっと変だったが触るだけで痛くなってきた。いつも痛い=何もしなくてもズキズキするほど痛い。
 現場のトレーナーとしては、最初に違和感が出てきた段階で報告してもらうと、予防措置のレベルで対処できます。しかし、ちょっと歩くだけでも痛い段階になると、なんらかの病変が認められるケースがあり、医療機関のお世話になる結果となります。そうなる前に発見し、症状の進行を食い止めることを含めた予防が一番のカギを握ります。


ジャンパー膝の傾向

チームスポーツで同量の練習を同時間行っても、ジャンパー膝になってしまう選手とそうでない選手とがいます。アライメントの傾向として、やはりニーイン・トーアウトになっている選手が多く受傷するようです。動きに関しては、ジャンプの際、膝が前に突っ込みすぎて屈曲の角度が深くなるとよくない傾向にあるようです。スクワット時は、足よりも膝が前に出てしまう選手に多くみられます。


ジャンパー膝の誤解

誤解1「ぶつけ膝」純粋にジャンプだけを行う種目と違い、バレーボールでは床に膝をぶつけることが少なくありません。人によっては、膝蓋骨下極を何度も繰り返しぶつけていて徐々に変性しているケースもあります。しかし、やっかいなのは本人が「床に膝をぶつけている」と自覚がない場合で、特に指導者から「膝をつくことは悪いこと」と教えられている選手は絶対に認めません。
 この場合も、アイシングが応急処置であることに変わりはないのですが、予防は内容や方法がまったく変わってきます。実際、「ぶつけ膝」の例では膝をぶつけないことが予防になります。
誤解2「裏筋」ダッシュなどで同様に膝蓋腱辺りに痛みを感じることがあります。しかし、選手が痛がる割には特に病変がないため、バレーボールやバスケットボールの選手だということで「ジャンパー膝」だと診断されるケースが少なくありません。こうしたケースでは大腿四頭筋ではなく、その裏側に当たる大腿屈筋群(特に大腿二頭筋と半腱様筋)が酷使され、硬結を起こして膝蓋骨の周囲に不定愁訴を引き起こしていることがあります。
 選手はジャンパー膝だと診断されていますから膝蓋骨の下方をアイシングしますが、もちろん効果は期待できません。選手がよく使う言葉でいう「裏筋」、すなわち「大腿屈筋群」のストレッチングやアイシングが必要となります。

ジャンパー膝の予防

ふだんから、スポーツの前後にきちんとウォームアップとクールダウンを励行することがオーバーユースの障害を予防する基本となります。特に激しい練習や試合後には、リカバリーヒートの段階で十分なストレッチングを行うように心がけてください。
 ジャンパー膝に関しては、大腿四頭筋に筋肉痛が起こる、階段の昇降がつらい、膝下に痛みが出始める前に大腿部になんらかの兆候(脚全体がパンパンに張るなど)を感じているものです。その段階でA=しっかりと時間をかけてストレッチする、B=アイシングやアイスマッサージを行う、C=マッサージをして揉みほぐす、などの処置をして症状を進行させないことが大事です。


ジャンパー膝の応急処置

基本的には、痛みを感じている部位のアイシングを行います。ただし大腿四頭筋が酷使されて緊張しているときには、同時に大腿部全体のアイシングを行います。
 練習を禁止するほど強い症状が出ているときには必ず医療機関を受診しますが、ただ休むだけでは症状の緩和につながらないので、ドクターの指示のもと、消炎鎮痛剤を塗布したり内服したりしながらアイシングを行うことが基本です。患部の炎症が治まれば、大腿部についてはホットパックなどで筋肉を緩める処置を行うと効果的です。


ジャンパー膝の再発予防

メディカル編でも紹介されているように、ジャンパー膝用のサポーターは市販されています。これらのサポーターは、膝蓋腱の起始部や付着部に過大な力が加わらないように設計されています(写真4)。
 また、ジャンパー膝にキネシオテープを利用するトレーナーも多く見かけます。大腿広筋、大腿直筋、外側広筋の筋肉の走行に沿って貼っていきます。それは、受傷して筋紡錘やゴルジ小体といったセンサーの働きが悪いときに、適度な張度で貼ったキネシオテープが皮膚の知覚反射を利用して、関節の屈曲時に情報伝達を補佐してくれると考えられているからです。

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ポイント

ジャンパー膝に限らずオーバーユースの障害に共通していえることですが、使いすぎになる前の段階で練習量や練習時間を調整すればまったく問題にならないはずです。しかし、団体スポーツなどでは選手が自由に質や量を加減するわけにいきません。したがって、これらの障害を未然に防ぐためには指導者の理解と指導が必要です。
 夏休みなどで練習量や練習時間が増えたときには選手の状態を把握し、必要に応じてストレッチングの時間を長くしたり、強制的に全員にアイシングを励行したり、選手同士でマッサージをさせたりすることもできます。特にアライメントや動作に問題がある選手に関しては、十分な注意を払うことが必要です。
 大事に至る前の予防措置が、ジャンパー膝を防ぐポイントです。痛みに耐える我慢強さが、選手の寿命を縮めることにつながっているのかもしれません。

痛みを感じたり、故障が発生したら、すぐに医師の診察を受けることをおすすめします。

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