骨盤裂離骨折 Avulsion fracture of pelvis

ドクターによる症状解説

Mitsutoshi Hayashi
林 光俊先生
医学博士、日本リハビリテーション医学会専門医、日本整形外科学会専門医、日本リウマチ学会専門医、JOC強化スタッフ、日本体育協会公認スポーツドクター
骨盤裂離骨折
骨盤裂離骨折は、成長期に発症しやすいスポーツ障害である
疾患の概要
はじめに
骨盤裂離骨折は、骨が弱い成長期に発生しやすいスポーツ障害ですが、頻度は高くはありません。骨盤のなかでも腸骨の上前腸骨棘には大腿筋膜張筋、縫工筋が、下前腸骨棘には大腿四頭筋(直筋)が付着しています(写真&図)。これらの筋肉がキック動作など、スポーツで生ずる筋力によって骨盤付着部を急激に牽引するために、骨盤の一部が裂離(骨折)してしまいます。

写真 レントゲン像:側面像で見る骨盤裂離骨折、下前腸骨棘
写真2 レントゲン像:大腿直筋が付着している下前腸骨棘の骨盤裂離骨折を認める

図 解剖図
原因・発症のメカニズム
受傷機転
股関節伸展位から急激な屈曲動作(キックなど)が加わると、特に成長期では骨が脆弱〈ぜいじゃく〉なため、骨盤骨端部が裂離しやすく、ボールを蹴る動作では下前腸骨棘の発生が多く見られます。また、ダッシュでは上前腸骨棘の発生が多く、まれに坐骨結節がハムストリングスの急激な収縮によって裂離する場合もあります(ハードルなど)。
診断
症状
突然の股関節痛が出現し、歩行困難、股関節周囲の圧痛。安静時には股関節軽度屈曲位(引っ張られないように)をとります。
診断
レントゲン上、腸骨部に剥離した骨折片を認めます(ただし受傷時はわかりにくい)。CTでも確認できます。
好発スポーツ
サッカー、陸上短距離(スタートとゴール時)、ハードル、ジャンプ、柔道や相撲の投げ技、野球の空振りなどに好発します。
好発年齢
中・高校生である12~18歳(14~15歳がピーク)に好発します。強い筋力をもつ男子の右側に多く発生します。
治療・リハビリ
治療
保存的治療では第1に安静の保持、アイシング(約1週間)を徹底します。疼痛が緩和してきて歩行時痛が消えたら、歩行を許可します(受傷後2~3週、ただしスポーツは禁止)。レントゲン上で骨の癒合が確認されれば、ランニングを許可します(2~3ヵ月)。 手術は骨片をスクリューなどで整復固定する観血的治療があります。適応は骨折部の離開が強く、保存療法では癒合が厳しい場合や、早期のスポーツ復帰を望むときです。実際は成長期の障害であるため、骨癒合はよく、保存療法で治療は十分可能です。
予後
多少の骨変形が残存しても、骨の癒合が完了して十分な時間が経過すれば、スポーツ活動に支障は少なく、比較的予後は良好です。
トレーナーによる対処法解説

Yasuhiro Nakajima
中島靖弘先生
湘南ベルマーレスポーツクラブトライアスロンチーム GM
株式会社アスロニア ディレクター兼ヘッドコーチ
⽇本トライアスロン連合 マルチスポーツ対策チームリーダー
骨盤裂離骨折
予防

力任せのプレースタイルになっていると、強引な能力発揮することが多くなり、ケガにつながる恐れがあるので注意しよう
環境的な要因や体力不足、ウォームアップ不足、疲労の蓄積などがこのケガの原因と考えられます。成長期の子供たちは、筋肉の柔軟性が低下する傾向にあります。しかし、疲労が蓄積されていたり、柔軟性が低下した状態で無理な体勢になると、余計に大きな力を強引に発揮させる原因ともなります。裂離骨折だけでなく、すべてのケガに対する予防策、及び競技力向上のためにストレッチングやウォームアップ、クーリングダウンは入念に行い、成長期の段階でストレッチングを習慣化させたいところです。競技によっては成長段階により、負荷や頻度、技術的な面でも制限しているものもありますので、それらを基準に指導することが予防につながると考えられます。

ケガに対する予防策として、また競技力向上のために、ストレッチングやウォームアップ、クーリングダウンは入念に行おう
現場評価・応急処置
スポーツ活動中、突然「ビシッ」といった音を感じるとともに、患部に痛みが生じます。すみやかにアイシングなどの応急処置を行い、医師の診断を受けることを勧めます。特に坐骨結節の裂離骨折の場合、痛みの程度も軽いことが多く、歩行も可能な場合もあり、ハムストリングスの肉離れと勘違いして、放置してしまう場合が多いようですので、注意が必要です。
リコンディショニング
競技に復帰するまでに数ヶ月かかるものもあるようです。医師の指示に従って競技に復帰していただきたいと思います。 受傷後1~2週間は安静、アイシングが必要で、歩行の場合は松葉杖を使って体重がかからないようにします。通常3週目くらいから歩行が可能となります。その後、柔軟性を高めるためのストレッチングや、関節の動きを伴わないアイソメトリックエクササイズ(等尺性運動)を開始します。 4~6週で水中運動やエアロバイク、軽いジョギングなどを開始します。水中運動は体重が浮力により軽減します。またエアロバイクなども座位で行う運動ですので、体重が直接かかりません。よって水中運動やエアロバイクなどから開始し、徐々に体重が負荷となるジョギングに移行させていきます。 その後、経過を見ながら競技復帰していきますが、ここでも強度は徐々に上げていきます。例えば、ランニングであれば急激なスピードアップやストップを行うのではなく、徐々にスピードを上げていき、ストップ動作も徐々に止まる時間を短くしていきます。サッカーのキック動作などは、止まったボールを軽く蹴る動作から徐々に強く蹴っていきます。 再発予防のためには、医師にしっかりと診断をしてもらってから競技復帰するようにしましょう。
関連する症例
ザムストのご紹介
「ザムスト-ZAMST」は、医療メーカーとして整形外科向け製品を開発・製造する日本シグマックス㈱が展開するスポーツ向けサポート・ケア製品のブランドです。
契約アスリート
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西田有志(バレーボール)
プロフィール
【所属】パナソニックパンサーズ
【ポジション】オポジット
【生年月日】2000年1月30日
【出身地】三重県いなべ市
【主な経歴】
・2017-18 V・プレミアリーグ男子 最年少デビュー(18年1月)
・FIVBワールドカップバレーボール2019 4位
・2019-20 V.LEAGUE DIVISION1 MEN 優勝
・令和2年度 天皇杯・皇后杯 全日本バレーボール選手権大会優勝
使用しているアイテム
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小野寺太志(バレーボール)
プロフィール
【所属】サントリーサンバーズ
【ポジション】ミドルブロッカー
【生年月日】1996年2月27日
【出身地】宮城県
【主な経歴】
2019年:V.LEAGUE DIVISION1 ベスト6
2020年:V.LEAGUE DIVISION1 スパイク賞、ブロック賞、ベスト6
2021年:V.LEAGUE DIVISION1 ブロック賞、ベスト6
【代表歴】
2019年:ネーションズリーグ 日本代表
ワールドカップ 日本代表
2021年:ネーションズリーグ 日本代表
2020東京オリンピック 日本代表使用しているアイテム
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ウィルフレド・レオン・ベネロ(バレーボール)
プロフィール
【所属】シル・サフェーティ・ペルージャ (SIR Safety Perugia)
【ポジション】ウイングスパイカー
【生年月日】1993年7月31日
【出身地】サンティアーゴ・デ・クーバ(キューバ)※2015年ポーランド国籍取得
【主な経歴】
・2010年:世界選手権 2位(キューバ代表)
・2012年:ワールドリーグ 3位(キューバ代表)
・2015年:欧州チャンピオンズリーグ 優勝(ロシア・スーパーリーグのゼニト・カザン)、MVP受賞
・代表歴13年
使用しているアイテム
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富樫勇樹(バスケットボール)
プロフィール
【ポジション】ポイントガード
【生年月日】1993年7月30日
【出身地】新潟県
【主な経歴】
2018年:Bリーグ シーズンベストファイブ
2019年:Bリーグ シーズンベストファイブ&最優秀選手賞
2020年:Bリーグ シーズンベストファイブ&アシスト王
2021年:Bリーグ シーズンベストファイブ
【代表歴】
2014年:アジア競技大会 日本代表
2019年:ワールドカップ予選 日本代表
2021年:2020東京オリンピック 日本代表使用しているアイテム
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河村勇輝(バスケットボール)
プロフィール
【所属】横浜ビー・コルセアーズ
【ポジション】ポイントガード
【生年月日】2001年 5月 2日
【出身地】山口県
【主な経歴】
・U16.18.20.22日本代表
・国体福岡県代表使用しているアイテム
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シェーファーアヴィ幸樹(バスケットボール)
プロフィール
【生年月日】1998年1月28日
【出身地】兵庫県
【経歴】
2018-19:アルバルク東京
2019-20:滋賀レイクスターズ
2020- :シーホース三河
【代表歴】
2019年:FIBAワールドカップ 日本代表
2020年:FIBAアジアカップ予選 日本代表
2021年:2020東京オリンピック 日本代表使用しているアイテム
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西田優大(バスケットボール)
プロフィール
【ポジション】シューティングガード
【生年月日】1999年3月13日
【出身地】徳島県
【主な経歴】
2015年:U16 第4回FIBA ASIA U16選手権大会
2016年:U18 第28回アルバート・シュバイツァー・トーナメント
U18 第24回FIBA ASIA U18選手権大会
2017年 :U19 FIBA U19ワールドカップ2017
2018年:U22 アジアパシフィックチャレンジ
2019年:U22 第42回李相佰盃日韓学生競技大会
2021年:FIBAワールドカップ2023 アジア地区予選
2022年:FIBAワールドカップ2023 アジア地区予選
FIBAワールドカップ2023 アジア地区予選
FIBAワールドカップ2023 アジア地区予選 -
寺嶋恭之介(バスケットボール)
プロフィール
【所属】HACHINOHE DIME
【ポジション】ポイントガード/シューティングガード
【生年月日】1991年10月17日
【出身地】青森県弘前市
【主な経歴】
2014年~ F'SQUAD(SOMECITY:ストリートボールリーグ)所属
2019年~ HACHINOHE DIME(3×3.EXE PREMIER) 所属
2020年~ 青森ワッツ(B2リーグ) 所属
2021年~ HACHINOHE DIME(3×3.EXE PREMIER)所属使用しているアイテム
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山本麻衣(バスケットボール)
プロフィール
【ポジション】ポイントガード
【生年月日】1999年10月23日
【出身地】愛知県
【出身校】桜花学園高等学校
【代表歴】5人制
2016年: U-17ワールドカップ
2016年:U-18アジアカップ
2021年:FIBAアジアカップ
2022年:FIBAワールドカップ2022予選
【代表歴】3x3
2018年:U-23ワールドカップ
2019年:U-23ワールドカップ
2021年:東京オリンピック予選
2021年:東京オリンピック
2022年:FIBAワールドカップ2022 -
宮市亮(サッカー)
プロフィール
【所属】 横浜F・マリノス
【ポジション】FW(フォワード)
【生年月日】 1992年12月14日
【出身地】愛知県
【主な経歴】
・シルフィードFCジュニア
・シルフィードFCジュニアユース
・中京大学附属中京高等学校
・アーセナルFC
・フェイエノールト
・ボルトン・ワンダラーズFC
・ウィガン・アスレティックFC
・FCトゥウェンテ
・FCザンクトパウリ
・横浜F・マリノス使用しているアイテム
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畠中槙之輔(サッカー)
プロフィール
【所属】 横浜F・マリノス
【ポジション】DF(ディフェンダー)
【生年月日】 1995年8月25日
【出身地】神奈川県
【主な経歴】
・横浜すみれSC
・東京ヴェルディジュニア
・東京ヴェルディJrユース
・東京ヴェルディユース
・東京ヴェルディ
・FC町田ゼルビア
・東京ヴェルディ
・横浜F・マリノス使用しているアイテム
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佐野海舟(サッカー)
プロフィール
【ポジション】MF(ミッドフィルダー)
【生年月日】2000年12月30日
【出身地】岡山県
【主な経歴】
FCヴィパルテU-12
FCヴィパルテU-15
米子北高等学校
2019年:FC町田セルビア
2023年:鹿島アントラーズ使用しているアイテム
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福田師王(サッカー)
プロフィール
【ポジション】フォワード(FW)
【生年月日】2004年4月8日
【出身地】鹿児島県
【タイトル】
2020年:第99回全国高等学校サッカー選手権大会 優秀選手
2021年:令和3年度全国高等学校体育大会サッカー競技大会 得点王
2021年:令和3年度全国高等学校体育大会サッカー競技大会 優秀選手
2021年:第100回全国高等学校サッカー選手権大会 優秀選手
2022年:第101回全国高等学校サッカー選手権大会 得点王
2022年:第101回全国高等学校サッカー選手権大会 優秀選手
【代表歴】
2020年:U-16日本代表 SBSカップドリームユースサッカー
2020年:U-17日本代表 JENESYS2019 青少年サッカー交流大会
2021年:U-17日本代表候補
2021年:U-18日本代表候補
2022年:U-19日本代表候補使用しているアイテム
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小林祐介(サッカー)
プロフィール
【所属】ジェフユナイテッド市原・千葉(Jリーグ)
【ポジション】MF(ミッドフィルダー)
【生年月日】1994年10月23日
【出身地】埼玉県
【経歴】
尾間木サッカースポーツ少年団
柏レイソル(U-15→U-18→トップチーム)
湘南ベルマーレ
柏レイソル
【代表歴】
2011年:U-18日本代表
2013年:U-19日本代表使用しているアイテム
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鵜木郁哉(サッカー)
プロフィール
【所属】水戸ホーリーホック(Jリーグ)
【ポジション】FW(フォワード)
【生年月日】2001年7月4日
【出身地】千葉県
【経歴】
FC佐倉
柏レイソル(U-15→U-18)
【代表歴】
2019年:U-18日本代表候補使用しているアイテム
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佐藤亮(サッカー)
プロフィール
【所属】ザスパクサツ群馬
【ポジション】FW(フォワード)
【生年月日】1997年11月24日
【出身地】東京都
【主な経歴】
2015年:高円宮杯 JFA U-18プレミアリーグEAST得点王
関東大学サッカーリーグ戦MVP
2019年:ベストイレブン
ベストヒーロー賞
全日本大学サッカー選手権大会ベストFW
【代表歴】
2015年:U-18日本代表候補
2016年:U-19日本代表使用しているアイテム
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日比野菜緒(テニス)
プロフィール
【所属】株式会社ブラス
【生年月日】1994年11月28日
【出身地】愛知県一宮市
【主な経歴】
・2013年:プロ転向
・2015年:タシケント・オープンでプロ転向後初となるWTAツアー優勝
・2016年:ASBクラシック ベスト8
・2019年:花キューピット ジャパンウイメンズオープンテニスチャンピオンシップス シングルス・ダブルス同時優勝使用しているアイテム
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岩出玲亜(マラソン)
プロフィール
【所属】 株式会社デンソー女子陸上長距離部 FLEET SEROWS
【競技】マラソン
【生年月日】 1994年12月8日
【出身地】三重県
【記録】
・2019 名古屋ウィメンズマラソン 5位
2時間23分52 秒 (日本人 1位)
・2019 マラソングランドチャンピオンシップ 9位
2時間41分22 秒
・2019 国内女子マラソンタイム ランキング 1位
【主な経歴】
・豊川高校(愛知県)
・株式会社ノーリツ(2013年4月~2017年5月)
・株式会社ドーム・アンダーアーマーアスレチッククラブ(2017年7月~2020年8月)
・株式会社デンソー女子陸上長距離部 FLEET SEROWS(2022年10月~) -
葛西紀明(スキージャンプ)
プロフィール
【所属】土屋ホーム(選手兼監督)
【生年月日】1972年6月6日
【出身地】北海道下川町
【主な成績】
オリンピック8大会連続出場(1992年アルベールビル、1994年リレハンメル、1998年長野、 2002年ソルトレークシティ、2006年トリノ、2010年バンクーバー、2014年ソチ、2018年平昌)
1992-93年:FISスキージャンプW杯男子 総合3位
1994年:リレハンメル冬季五輪 ラージヒル団体 銀メダル
1998-99 年:FISスキージャンプW杯男子 総合3位
1999年:ノルディック世界選手権 ラージヒル団体 銀メダル
2003年:ノルディック世界選手権 ラージヒル個人 銅メダル、ノーマルヒル個人 銅メダル
2007年:ノルディック世界選手権 ノーマルヒル団体 銅メダル
2009年:ノルディック世界選手権 ノーマルヒル団体 銅メダル
2014年:ソチ冬季五輪 ラージヒル個人 銀メダル、ラージヒル団体 銅メダル
2015年:ノルディック世界選手権 混合団体 銅メダル使用しているアイテム
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穴井詩(ゴルフ)
プロフィール
【所属】GOLF5
【生年月日】1987年11月11日
【出身地】愛知県岡崎市使用しているアイテム