股関節周辺 Hip joint

股関節は、人体で最長の骨である大腿骨と骨盤にある寛骨から構成される部分で、人体の中でもっとも大きな関節です。高い自由度を持つ球状関節ですが、関節を形成する筋が非常に多く、いくつかの筋の部分同士が連動して働きます。

骨盤は上体の軸となり、股関節が下腿との接合部になります。
股関節は、体を支えつつ、立つ、歩く、ジャンプ、ける、またぐ等、さまざまな動きを支える大きな可動域をもつ関節ですが、その分遠心力や重力の影響を大きく受けてしまいます。

Anatomy of Hip joint - 股関節周辺の機能と解剖

Sports Injury of Hipjoint - 股関節周辺のスポーツ傷害

Q&A - 過去に寄せられたご質問への鉄人の回答

*現在はご質問は受け付けておりません。

股関節周辺に関するQ&A

バネ股と診断されました・・・

病院で診察した所、バネ股と診断されました。良くなる事はないけど、悪くなる事が有るよ。と言われました。何回も繰り返すから、手術したほうがいいと言われたのですが。どうしたら、よいのでしょうか。
(14才、女性)

バネ股は、何度も繰り返すようで日常生活にも支障が出るようなら手術をした方が良いそうです。手術そのものもそんなに難しいものではなく、一般的には30分くらいでできるそうです。


もちろん、手術と言うととても不安があるでしょうから、納得が行かない場合には、他のお医者さんにも相談してみて第2、第3の意見を伺っても良いと思います。ただ、バネ股(弾発股)の手術は、他に症状を併発していなければ特に難しいものではないとのことですから、ご安心を!
(スポーツの鉄人;岩崎 由純)

スポーツヘルニアと診断されました・・・

昨年の11月末から、右足付け根の部分・鼠径部が痛み出しましたが、無理をして走っていました。歩く時に痛みはありますが、走れるような状態です。2月ごろ、痛くて歩くことも難しくなってきて整形外科を受診、XP・MRIは異常なしで、痛みがなければ走ってもよいとのことでした。走ったり歩いたりを繰り返し、いっこうに回復せず、その後、ランを中止し日常生活には支障がない程度になりましたが、歩いたり走ったりを始めるとまた、同じ痛みを繰り返します。9月末にスポーツ整形を受診、スポーツヘルニアと診断されました。近隣には診れる先生がいないとのことで、とりあえずPTの先生から、アイシングと股関節・内転筋のストレッチと筋力強化を言われました。
が、この長期に渡る痛みに対して、冷やしたほうがよいのか、筋力低下・アップのため、どのようなことに取り組めばよいか、手術が必要であるのかどうかも分かりません。現在、水泳は毎日続けています。
今後、どのように対処し、どのように治療すべきなのか、分かりません。
(31才、女性)

トレーニングにより改善するので、手術はよほどの事が無い限り考えなくてよいと思います。


スポーツによる鼠径部周辺痛のトレーニングのポイントは以下です。
股関節周囲の柔軟性を高める内転筋以外にも、腹筋、ハムストリングス、大腿四頭筋、腸腰筋のストレッチングを行います(詳細は「鉄人」ホームページの「恥骨結合炎(鼠径周辺部痛症候群)」(トレーナー編)を参照)。
筋力トレーニングは股関節外転筋や伸展筋、腹筋を中心に行います。腹筋は、痛みのない範囲で行います。患部に負担になる股関節内転や屈曲は行いません。
アイシングは痛みがある場合は有効です。また、慢性期の痛みには温めるのも有効です。どちらでもよいと思います。ただ、冷やし過ぎないようにしてください。慢性期であれば、一度冷えた感覚があればよいと思います。
水泳は痛みが無い動作なら積極的に行ってください。くれぐれも無理をしないようにしてください。
(スポーツの鉄人;高橋 仁)

開脚座位のストレッチングによる傷害

陸上競技短距離選手です。開脚のストレッチングをしていて筋肉を伸ばしてしまったようです。表現しにくいのですが、右大腿部の裏側の筋肉(お尻の下の辺り、股下の辺り)です。開脚で上体を前に倒すと痛みます。走っているときには異常はないのですが、不安なのでアドバイスをよろしくお願いします。

開脚座位で無理にストレッチングをすると、一般に内股〈うちもも〉といわれる部分の筋肉に痛みを感じます。ストレッチングの基本からいうと、ストレッチ感と呼ばれる“伸びている感じ”を超えて“痛み”を感じるのは、伸ばしすぎであり、肉ばなれなどの危険がないとされる“安全限界”を超えようとしています。しかし、ストレッチ感がある程度なければ「有効限界」と呼ばれる柔軟性向上の効果が期待できる運動負荷にはなりません。かといって、あまりの痛みに耐えて一気に伸ばしすぎると、安全限界を超えて傷害を起こしてしまうわけです。


起こしやすい部位

開脚座位のストレッチングで傷害を起こしやすい部位(図3)は、薄筋や内転筋の付着部(起始部:図4)であり、まさに内股の付け根です。相撲の世界では新弟子たちが「股割り」を行って傷める部分です。内出血していたり、筋肉の連続性が失われて違和感があったりする場合には、筋断裂を起こしています。顕著な筋断裂まではいかなくても、マイクロレベルの損傷が軟部組織に起こり、炎症を起こしている可能性があるのです。
薄筋の付着部付近の肉ばなれは、重症の場合、痛みがあまりに激しくてどこが痛いのか本人もわからなくなることがあります。これは、陰部や会陰部などに近いためです。実は筆者もある朝突然股間〈こかん〉が痛くなり、病院に行くと泌尿器科に回され、副睾丸炎〈こうがんえん〉の疑いがあるとして肛門から指を突っ込んで触診されました。最終的には、内転筋群の肉ばなれと診断されたのですが…。あとで考えると、開脚ストレッチングを一生懸命やり始めて間もないころの出来事でした。

対処法のいろいろ

対処法としては、しばらくの間ストレッチングを控え、アイシングを続けることしかありません。筋肉内血腫〈けっしゅ〉の疑いがある場合にはヘパリン類似物質を含有する軟膏を、顕著な炎症がある場合はインドメタシンやケトプロフェンなどのジェルを、塗布しても効果があるようです。
最近の傾向としては、肉ばなれの治癒期間中にアミノ酸系のサプリメント、特にBCAA(分岐鎖アミノ酸)などが積極的に取られています。
質問では走るのは可能だということですが、薄筋または内転筋の単独損傷の場合には、まっすぐに走ることには支障がないケースもあり得ます。損傷が半腱様筋や半膜様筋に及んでいると、走りに影響が出るでしょう。
一番大事なのは、ストレッチをする際の安全限界を超えないように注意し、肉ばなれなどの損傷をしないことです。

腰痛に対する股関節の柔軟性と動き

野球部に入部した高校1年生の選手のことで相談します。入部してすぐに腰の痛みを訴えてきたので、病院を受診させたところ、第5腰椎分離症と診断されました。話を聞くと、中学2年生の春に痛む腰をかばいながら練習試合でピッチャーを務め、そのあと病院を受診したところ、疲労骨折(第5腰椎分離症)と診断されたそうです。そのときは3ヵ月の運動禁止を言い渡され、その後夏の大会に向けて頑張ったら、次には肘をコワしたことがあるそうです。腰痛には腹筋や背筋を鍛えればよいと聞いたので、今は腹筋運動、背筋運動をやらせていますが、これでまた野球ができるようになるのでしょうか?
何かよい方法があれば、アドバイスしてください。

分離症に限らず、腰痛をもっている選手のコンディショニングのポイントは、体幹の筋力と股関節の柔軟性です。筋力は、質問にもあったように、体幹の安定を目的に、腹部や腰背部のトレーニングを行います。筋力については、すでにトレーニングされているようなので、股関節の柔軟性及び動きについてお答えします。


股関節の重要性

股関節の柔軟性は、バッティングやスローイングで身体を「ねじる」際にとても重要です。本連載2月号の「ぎっくり腰」の回答でも触れていますが、野球の技術指導では、体幹の回旋動作を「腰を回す」あるいは「腰を切る」などと表現することがあります。しかし、腰を回したり切ったりしたときに主に動いているのは、腰(腰椎)ではありません。実際は股関節が回旋運動をしているのです。
したがって、股関節の柔軟性が低下していたり、使い方ができていなかったりすると、その不足分の動きを腰椎で行うことになります。しかし、腰椎は構造上「ねじる」動作に適していません。そのため、無理に「腰を回す」ことになり、それが腰痛の引き金になってしまいます。


静的ストレッチング

では、実際のトレーニングについて説明します。
まず、股関節周囲の筋肉を静的にストレッチします。特に分離症がある場合には、股関節伸展の柔軟性が不十分だと腰椎が過伸展を強いられ、痛みの原因となりやすいので、入念にストレッチングを行います。


動的ストレッチ

次に、関節運動を伴う動的ストレッチングを行います。体幹の回旋に重要な、外旋と内旋のパターンを中心に行います。


回旋の動きづくり

ストレッチングによって股関節の柔軟性が向上したとしても、実際のスポーツ動作において、股関節をうまく使うことができないことにはどうしようもありません。
股関節をうまく使うためには、まず第一に股関節を動かしやすいポジションを知ることです。そのポジションとは、立位で股関節を軽く屈曲した状態です。
スクワットで、立位からやや身体を沈ませた姿勢をイメージしてください。この姿勢から、下肢を動かさないで(膝を開かないで)、上肢だけを左右にねじります。このとき、大腿部の付け根(鼠径部)の部分に、上肢と下肢の分かれる感覚(窮屈な感覚)があれば、それは股関節をうまく使うことができている証拠です。
次に、この窮屈な感覚をバッティングやスローイングの「ため」の動作で確認します。また、動作中には常に股関節を動かすよう意識することも大切です。


腰痛の原因はスポーツ動作?!

腰痛を防ぐ方法は数多くあります。しかし、スポーツによる腰痛の原因は、ほとんどの場合にそのスポーツ動作にあります。競技特性を考慮して、正しい動作を身につけることによってはじめて、腰痛を予防することが可能となるのです。