【Vol.16】スポーツアパレルメーカー社員 芝原夏奈さん(後編)

サッカーをする前提で仕事を選ばなかった

サッカーをする前提で仕事を選ばなかった

高校時代にアンダー世代の女子日本代表選手に選出され、意識レベルの高い選手たちと緊張感のある環境に身を置いたことで、日頃の意識の持ち方まで変わったという芝原さん。その後はサッカー推薦によって早稲田大学へ進学し、女子サッカー部の一員として全国優勝を果たします。 女子選手として長年サッカーに打ち込んできた学生時代でしたが、その後の社会人としての生き方について芝原さんには明確な考えがありました。

「サッカーにひたすら取り組んできた学生生活。そのなかで大学卒業を控えたある日、この先、自分はサッカーをずっと続けていくのだろうかと考えたんです。女子サッカー選手の場合は、企業チームに属してプレーする環境もあります。私自身、ある企業チームから社員選手としてのお話もいただきましたが、サッカーをする前提で仕事を選ぶことはやめようと思っていたんです。将来、サッカーを辞めたときにサッカーとまったく関係のない仕事をする自分が想像できませんでした。

それに二十代後半になってサッカーを辞めて就職活動をするとなれば、自分はどう就職活動をしていいのかわからないだろうと。ですから、大学生のうちに自分がやってみたい仕事の就職活動をやってみようと思ったのです」

そう思い立ち、自分が好きなスポーツに関われるスポーツメーカーの面接に行くなど企業を回っていくと、その仕事の進め方や内容に非常に興味が沸いてきたといいます。

「そのときも、まず自分から行動を起こしてみたら、次第に道が開けていったという感じでした」

フットサル女子日本代表での重圧

フットサル女子日本代表での重圧

見事に内定をもらい、芝原さんはスポーツメーカーへの就職を決めます。

「サッカーはそこで一区切りしにしようと思っていました。ただ、遊びでもいいので、ボールを蹴る環境だけは確保したいと思って、少ない人数でも集まってボールを蹴られるフットサルのチーム、いま所属しているカフリンガBOYSを紹介してもらったんです」

それが芝原さんのフットサルとの出会いでした。カフリンガBOYSは都リーグに所属していたこともあり、都選抜に選出された芝原さんは、やがてフットサル女子日本代表にも選出されます。

「フットサルを始めた頃は自分が日本代表でプレーすることになるとは想像もしていませんでしたが、選ばれたからにはしっかりやろうと思いました。日本のフットサルは男子でもFリーグの観客動員数などで苦戦しているようにまだまだマイナースポーツです。男子でもそのような現状なのですから、女子では日本代表といっても潤沢な予算は持てません。だから国際大会ではなでしこジャパンのように結果を掴んでいかないと予算が削減されてやがて消滅してしまう存在です。私が代表に入ったときも、先輩たちが必死になって結果を掴もうとしていました」

フットサルの女子日本代表が注力していたのが、アジアインドアゲームズのタイトル獲得。日本の女子代表は2013年の大会で3連覇が懸かっていました。そのときの芝原さんはチームのダブルキャプテンの一人を任されます。

「キャプテンを担った私としては、試合に出ていない選手のモチベーションを保つように気を配ったりしながら、チームが一つになるための模索を色々していました。アジアでの日本代表の戦いは、フットサルの女子の環境を確保するという意味でも、先輩たちが残してきた結果を繋げていかないといけないという意味でも、“絶対に勝たないといけない”という状況になると最後は技術どうこうの話ではなくなるんです。非常に重圧を感じるなかでの戦いでしたが、非常に意義深い経験をさせてもらったのが2013年でした」

興味があることはまずトライすることが大事

興味があることはまずトライすることが大事

結果、フットサル女子日本代表は2013年に大会3連覇を達成。その後同大会は4年後の開催ということもあり、芝原さんは後進に道を譲る決心をして日本代表を引退します。そして、いまは株式会社VOLUME(現SVOLME)の社員としてサッカーやフットサルに携わる毎日を過ごしています。

「専門店さんへ商品の手配をしたり、ときにはサッカーやフットサルのクリニックを開催したりしながら、競技の普及にも務めています。やはりまずは色んな人たちの興味関心を引くことで、女子のサッカーやフットサル界の裾野を広げることが重要だと思うし、自分たちの仕事がサッカーやフットサルの発展に繋がると信じながら活動をしています。そういう活動が結果としてブランドの普及にも繋がって、将来的に日本代表選手が私たちのブランドである

“SVOLME”や“penetrar”のウェアを着るようなときがくると嬉しいです」

サッカーとともに学生時代を走り抜け、現在はフットサルに真摯に向き合いながら、サッカーやフットサルに関わる仕事をこなす芝原さん。最後に現役部活動生にメッセージを頂きました。

「今になって思いますが、部活動時代に辛いことを一緒に乗り越えた仲間というのは、社会人になっても気兼ねなく言いたいことを言い合える仲として貴重な存在だと思います。今でも実際に実家に集まって会うことも多く、すごく絆が深いなあと感じますね。それから私自身の経験から言えるのは、興味があることはまずやってみることが大事だということ。やってみると自分に合うか合わないかがわかってくる。人見知りだった私が色んな環境に身を置くことで、成長することができたのだから、すべては気持ちの持ち様なのかなと思うんです。迷ったら、まずはトライしてみる。そこからすべての扉は開けていくような気がしますね」 

企画・株式会社イースリー 文・杜乃伍真 写真・平間喬

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