五十肩(肩関節周囲炎) Frozen shoulder

五十肩(肩関節周囲炎)

ドクターによる症状解説

Naoya Nishinaka

西中直也先生

医学博士、日本整形外科学会認定専門医
日本肩関節学会代議員、日本体育協会公認スポーツドクター
日本整形外科学会認定スポーツ医

五十肩(肩関節周囲炎)

肩関節周囲炎は40歳代、50歳代を中心とした中年以降に多く発症することから、別名で四十肩、五十肩と呼ばれます。

疾患の概要

はじめに

特別に外傷や感染などの明らかな原因がなく肩関節周囲の組織に炎症が発症し、肩関節の〝痛み〟と〝可動域制限(動きの制限)〟の2つを主症状とする症候群を肩関節周囲炎といいます。

症状

症状は痛みと可動域制限ですが、この2つは始めから同時に起こるわけではありません。五十肩には、急性期、拘縮期、回復期の3つの病期があります。
急性期では、主症状は痛みです。最初は軽い痛みから始まり、どんどん痛みが強くなっていきます。この時期は痛みのために眠れない、歯みがきがスムーズにできない、洗髪ができないなど日常生活にさまざまな問題が生じます。
徐々に痛みが治まってくると、今度はだんだん肩関節そのものが動かなくなり、可動域が制限される拘縮期に入ります。可動域が制限されるのは、疼痛よりも関節包が肥厚、癒着して肩関節が固まってしまうためです。急性期から拘縮期への移行期では、痛みと動きの制限が重なっています。
そして、拘縮期から回復期になると可動域も少しずつ元に戻っていきます。個人差はあるものの、五十肩の回復には3か月から1年ほどかかります。多くは自然経過と保存療法で回復します。

原因・発症のメカニズム

五十肩の原因は明らかではありませんが、肩関節周囲の組織が経年的に変性し、日常生活でくり返される動作で肩関節に刺激が加わることによるものです。そうした経年的な変化が基盤となって、中高年で五十肩を発症し、「肩が痛い、腕が上がらない」の症状が出現します。実際は肩関節を構成する組織に炎症が起こっています。関節包炎、腱板炎、肩峰下滑液包炎、上腕二頭筋長頭腱炎などでありこれら炎症のいくつかが同時に生じていることが多いのです。

診断

明確な診断基準はありません。したがって、外傷、感染、基礎疾患(例えば関節リウマチや腫瘍など)による肩関節疾患を除外し、肩を上げる角度がおおよそ130°以下、反対側に比較して可動域制限を有する、画像所見では明らかな異常所見がない、などがおおまかな診断項目になります。

治療・リハビリ

急性期

急性期には患部を安静に保ち炎症を鎮静化させることが重要です。五十肩の治療には『痛くても動かさないとかたまる』という俗説がありますが、それは大きなまちがいです。自然治癒するはずの炎症がよりひどくなり回復の機会を逃して症状が長引くことになります。肩関節への刺激を極力減らし、肩関節にとって一番楽な姿勢【安静肢位】を保つのが大事です。

安静を保っても痛みが続くようなら、できるだけ早く整形外科を受診しましょう。炎症をおさえるべく消炎鎮痛剤の内服のほか、症状が重い場合はステロイド剤やヒアルロン酸製剤を患部に直接注射します。

【安静肢位(仰臥位)】
肘を曲げた腕をやや上げて前に出し(①軽度前方挙上)、肘をやや外側に向けて(②軽度外転)、手首は軽く外側にまわします(③軽度外旋)。

【安静肢位(着座姿勢)】基本的には仰臥位と同様の角度になります。

急性期から拘縮期への移行期

少しずつ肩を動かしていきます。移行期から適切な運動を始めると拘縮の予防になり、拘縮期の短縮が期待出来ます。しかし、この時期も肩に負担をかけ過ぎると炎症を再燃、悪化させてしまうので、無理のないストレッチなどを行ないます。

この時期に自宅でできるストレッチの一つに【コッドマン体操】があります。
これは、自分の腕の重さ(あるいは軽いおもりを持つ)を利用して癒着した腱板や関節包をストレッチする方法です。

【コッドマン体操】
①肩の痛みがないほうの手を机やいすの上に置き、腰を曲げて体を前に倒し、肩が痛いほうの腕を床に対して垂直になるように下ろす。
②腕をゆっくりと前後、左右に揺らす。
③時計まわりにまわし、さらに反時計まわりにまわす。

※痛みが起こらない程度に腕を動かすのがポイントです。

拘縮期

肩の痛みが消えたら、肩を積極的に動かして運動機能の回復を目指しましょう。肩の運動だけでなく、体幹を動かすような全身運動も取り入れるのが重要です。
肩関節を動かすには、肩甲骨の動きが重要ですが、肩甲骨は背中に乗っているだけで、筋肉によって背骨(体幹)や肋骨に繋がっています。そのため、肩甲骨の動きは体幹の動きに影響されやすく、肩関節の動きをよくするためには体幹が充分に動くことも必要です。

体幹の動きをよくする運動(左)をすることで、すぐに拳上することが容易になります(右)。

また、体幹の動きをよくする【スイング体操】を行なうと、肩甲骨の動きもよくなります。

【スイング体操】
椅子に座って、骨盤から上を右左、左右と揺らします。背中はまっすぐな姿勢を保ち、脇腹が伸びていることを感じるのがポイントです。右左それぞれ数秒間キープします。キープせずリズミカルに左右にスイングしても構いません。

その他、手軽に実行できて全身の筋肉を動かせる体操としてはラジオ体操もおすすめです。
なお、ここまで述べてきたような保存療法で回復しない場合は、手術療法を行なうこともあります。

トレーナーによる対処法解説

Yasuhiro Nakajima

中島靖弘先生

湘南ベルマーレスポーツクラブトライアスロンチーム GM
株式会社アスロニア ディレクター兼ヘッドコーチ
⽇本トライアスロン連合 マルチスポーツ対策チームリーダー

五十肩(肩関節周囲炎)

予防

肩関節は、他の関節と比べて、大きく自由に動く関節であり、とても便利に使われますが、その分負担の大きな関節でもあります。
肩関節、肩甲骨の周りには多くの筋肉があり、自由な動きを作り出しています。しかし、どれか一つの筋肉がうまく働かなかったり、柔軟性が低下したりすると、他の筋肉がその代わりに働くことになり、負担を大きくしてしまいます。
また、肩の動きは、肩甲骨が伴って動きます。腕を90度横に上げるとき、その1/3は肩甲骨が担うと言われていますが、肩甲骨周囲にある筋肉の柔軟性が低下すると、その動きは制限され、その分、肩関節が負担することになります。常に肩甲骨の動きを良くするストレッチングや酷使した後のアイシングなどで肩周囲の筋肉の柔軟性を高め、必要であれば安定をさせるためのトレーニングを行うことは肩の問題を起こさないために大切なことです。

現場評価・応急処置

痛みが出たら整形外科を受診し、医師の診察を受けてください。急性期は安静が大切です。痛みの具合を試す様な動きを避けて、医師による許可があるまで、できるだけ安静(動かさない)にすることが大切です。

リコンディショニング

痛みが消え、医師から許可が出たら徐々に動かし始め、「コッドマン体操(ドクターによる症状解説参照)」をなどから少しずつスタートさせます。体幹の動きを良くする運動やスイング体操を行い、「肩のトレーニング」や、「タオルを利用した五十肩のトレーニング」も行ってください。痛みのない腕でガイドをする様に行いますが、痛みを確認する様な動きは行わず、痛みのない動かせる範囲の中で行ってください。
無理な運動は、再発する恐れがありますので、十分注意し、トレーニングが終わったらアイシングを行ってください。

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