鉄人に聞け!肉ばなれ

症例解説Body & injury

Thigh,Calf,Shin太もも・ふくらはぎ・すね

肉ばなれMuscle strain

  • 原因や治し方(医療編)
  • 予防や対処法(トレーナー編)
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はじめに

肉ばなれとは、ダッシュなどの動作で筋肉の収縮時に急激な過伸張ストレスが加わり、そのため筋線維の損傷(いわゆる筋肉がはがれる)が起こる傷害の一般的総称です。医学的には筋断裂、筋膜断裂、筋損傷といい、主にスポーツ活動中に発症しやすく、スポーツ傷害で頻度が高い症状です。


症状

断裂部の圧痛と運動時の痛みが主な症状で、断裂部では陥没を触知できることがあります。受傷して3日ほど経過すると、皮膚表面に内出血が現れることがあります。受傷後1週間くらいは歩行にも支障をきたします。


好発部位

腓腹筋(ふくらはぎ)の内側の内側頭、大腿ハムストリングス中央、大腿四頭筋、股関節内転筋、上腕二頭筋、まれに腹直筋でも発生します。


好発年齢

腓腹筋での発生は競技者レベルや30歳以上のスポーツ愛好者で多くみられます。一方、ハムストリングスでの発生は青年競技者に多く、中・高校生の発生は少ないようです。


好発スポーツ

陸上短距離(ハムストリングス)、陸上中・長距離(腓腹筋、ハムストリングス)、サッカー(腓腹筋、大腿四頭筋)、テニス(腓腹筋、tennis legという言葉がある。サーブ、レシーブ時に好発)、バドミントン(腓腹筋)、アメリカンフットボール(ハムストリングス)、野球(腓腹筋、ハムストリングス)、バレーボールとバスケットボール(腓腹筋、ハムストリングス、大腿四頭筋)。過度のストレッチングや筋力測定時でも発生します。


有用な検査

MRIは受傷初期から、血腫範囲や受傷部位の確認が可能です。超音波でも血腫の確認はできますが、数日経過したほうがわかりやすくなります。


治療

原則的に手術の必要はほとんどなく、主に保存治療を行います。初期治療として受傷後48時間はRICE療法が有効です。また、市販されている持続冷却器も有用です。疼痛が軽減したら日常生活動作を許可します。硬結(しこり)部周囲の違和感に対しては、電気刺激や鍼治療も有効です。腓腹筋を受傷した場合には、テーピングを使って足関節を軽度底屈位で固定し、肉ばなれが進行しないようにします。


リハビリテーション

受傷後1週間以内に局所の疼痛が軽減して歩行が可能になれば、患部に負担がかからないようにハムストリングスや足関節の背屈のストレッチングを軽く行います。 受傷後3週間くらいで圧痛がなくなれば、徐々に軽いランニングから始めていきます。受傷初期は局所に硬結が残りますが、この硬結があるうちにハードな練習を行うと再発してしまうので、ランニング中にハーフスピードダッシュを混ぜるとよいでしょう。100%の力を発揮してのジャンプやダッシュは約6週間休止します。 運動時の痛みが治まったら、再発予防を目的とした肉体改造が必要です。常に断裂部やその周辺の関節の可動域、筋肉の柔軟性獲得と維持のためのストレッチングや、軽い筋力トレーニングを行ってください。ウェイトの負荷は、好調時の半分の量で十分です。負荷をかけすぎないように気をつけてください。 受傷後6週間経過して、足関節の背屈ストレッチングや抵抗運動、ハーフスピードダッシュ、軽い両足ジャンプなどを行っても、疼痛や違和感がまったくないようであれば、スポーツ動作を徐々に再開していきます。 十分なウォームアップで身体が温まると、患部の違和感がなくなります。ストレッチングによって筋肉や関節の柔軟性が増すと、肉ばなれを起こした局所周辺の負担も軽くなりますし、筋肉がストレッチされることによって血行もよくなります。練習後は罹患部位に熱感が発生しますので、局所のアイシング(約15分)は徹底してください。再びピキッときたら、ただちにプレーを中止しましょう。急がば回れ! です。


注意点

肉ばなれの特徴は再発(いわゆる癖になる)が多いことです。治療期間の無理な短縮は再発を招くので、リハビリテーションの期間を十分にとりましょう。肉ばなれの治療は骨折と違ってギプスを巻いたりしないため、重度のケガではないような感覚をもつかもしれませんが、スポーツマンにとって重傷度の高い傷害ですので注意してください。


代表症例

28歳女性のテニス選手。前方のボールを打とうとしてダッシュしたときに、腓腹筋内側頭の肉ばなれを起こす。治療はRICE療法を中心に行い、足関節の過伸展を制限して日常生活は自由にした。3週間で局所の圧痛が消失したので軽いランニングを開始。4週間目で禁止されていたテニスを自己判断で再開したところ、再び肉ばなれを起こして重傷化し、さらに6週間のプレー休止を余儀なくされた。写真1は再発時のMRI画像。

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代表症例

24歳男子陸上短距離選手。20mダッシュの練習中にハムストリングスに肉ばなれを起こし て走行不可能となり、RICE処置を受けて病院を受診した。MRIにてハムストリングスの筋断裂と広範囲の出血が認められた(写真2、3)。3週間後には軽いランニングを再開したが大腿後面に違和感を覚えたため、さらに3週間は股関節や体幹のストレッチングと、プールでの歩行及び水泳を行った。

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まとめ

肉ばなれの受傷者には、筋肉の柔軟性になんらかの問題がある、あるいは筋力のバランス(ハムストリングスと大腿四頭筋の筋力、求心性と遠心性筋力など)が悪いといえます。そして、肉ばなれによってさらに筋肉が硬くなり、硬結化していきます。治癒過程では、時間の経過とともに断裂部は、受傷時の出血が硬結といわれる瘢痕組織に変化していきます。その部分に適度な張力が加わった状態で動かしていくと、徐々に元の筋肉に近い柔軟性のある組織に変化していきます。 完治までの期間は、スポーツをしても違和感がなくなるまでに最低でも6ヵ月くらいはかかると思ってください。ただし、6ヵ月でも完全には受傷前の状態には戻りませんので、慎重なトレーニングが必須です。

HOPS

肉ばなれが起きた状況を確認します。発生状況を判断する方法(HOPS)に関しては、「足関節捻挫(トレーナー編)」にて説明をしています。例えば、肉ばなれの発生原因に疲労やストレッチング不足などが挙げられた場合、受傷した瞬間だけでなく、過去にさかのぼって考えると原因がつかめて再発予防に役立つと思われます。 HOPSの結果、筋肉につったような痛みを訴え、腫れや皮下出血などがみられたら肉ばなれを疑い、応急処置後はスポーツドクターを受診することをお勧めします。


応急処置

RICE処置を行います。できれば24~48時間の間、休憩を入れながらアイシングを続けることが理想です。その際、凍傷には十分注意してください(2002年6月号当連載参照)。


アスレティックリハビリテーション

関節可動域、筋の柔軟性、筋力が、健側と同等の状態にまで回復することを目的に行いますが、痛みが出ないようにコントロールすることが大切です。肉ばなれの痛みでは、部位を押したとき、運動したとき、抵抗を加えたとき、ストレッチングを行ったとき、そして、何もしなくても痛む(自発痛)とき、などが挙げられます。
 ストレッチングは自発痛がなくなってから行います。ホットパックなどで十分に温め、受傷部位に関連すると思われる部位から始め、患部は最後にストレッチします。痛みが出ない範囲で慎重に行いましょう。
 筋力トレーニングでは、床に寝た状態で関節を固定し、脚全体を少しだけ上げて静止するような、筋に力を入れるだけのアイソメトリック(等尺性)トレーニングをまず行います。これも自発痛がなくなり、力を入れても痛みが出ない程度で行い、徐々に動きのあるトレーニングに移行していきます。
 このように、復帰のためのトレーニングでは急激な改善を望まずに、痛みと相談しながらスポーツドクターやトレーナーの指示に従って行いましょう。肉ばなれは十分なリハビリテーションを行わずに早期復帰した結果、不調が長引くといったケースが多くみられます。十分なリハビリテーションの時間をとってください。


予防

再発防止も含めた予防は、まずは十分なウォームアップ、クールダウン、ストレッチングを行うことを習慣化することが大切です。ストレッチングは、決められた種目を一定方向にだけ行うのではなく、日々の柔軟性の変化を考慮しながら、硬いところや筋が張りやすい部位を入念に行ってください。
 筋肉は直線的についているわけではなく、さまざまな方向に向かってついています。1つの筋を伸ばすにも、内旋や外旋、内転や外転を混ぜ合わせたストレッチングを行ってください(写真4)。また、筋力のバランス(左右、前面と後面)は、特別な測定機器がないと判断することができないので、測定施設を積極的に利用することをお勧めします。
 チームでできる予防として、筋力を効率よく発揮させるためのトレーニングがあります。例えば、ハムストリングスの肉ばなれ予防の場合には、あお向けに寝た状態で足を椅子の上に乗せ、お尻を上げるようなトレーニング(写真5)を行うと、ランニング時の蹴り出し動作のような体勢になります。これを直線だけでなく、ストレッチングと同じように内旋や外旋などを加えてみてください。椅子の代わりにバランスボールなどを利用すると効果は高まります。大腿後面、臀部にある筋などを効率よく動かすことにより、1つの部位への負担が減ると考えられます。  100%ではありませんが、予防策を実施することで肉ばなれの発生率は減少します。今回紹介したストレッチングやトレーニングだけでなく、栄養や睡眠も含めた日々の身体のケアをしっかり行ってください。

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痛みを感じたり、故障が発生したら、すぐに医師の診察を受けることをおすすめします。

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