鉄人に聞け!メディカルチェック

症例解説Body & injury

Otherその他

メディカルチェックMedical check

  • 原因や治し方(医療編)
  • 予防や対処法(トレーナー編)
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はじめに

メディカルチェックはアスリートが運動を行うに当たっての健康診断で、健康管理のみならずスポーツ傷害の予防に対して有用です。スポーツ種目によっては急性外傷(突発的)以外に、オーバーユースに起因する慢性障害も多く存在します。しかしながら疼痛を抱えながらもプレーは続行可能な場合が多い(傷害の認識不足による)ので、診断は容易ではありません。そのため、選手個別のメディカルチェックの意義は高いといえます。


メディカルチェックとは

ドクターやトレーナー(コーチ、インストラクター)など身体管理の専門家によって行われる、主にアスリートのボディチェックです。問診は最も重要なチェック項目で、病院のみならずスポーツ現場でももちろん可能です。現在の問題点(痛む部位)、過去の傷害歴、スポーツ歴(競技レベル、練習時間、ポジションなどを含む)や治療歴(手術など)、現在のポジション、過去のスポーツ歴、利き手(利き足)、筋のタイトネス(身体の硬さ)や関節弛緩性(軟らかすぎるか)、下肢のアライメント、関節可動域、圧痛点の有無、筋力をチェックします。ジュニア期か青壮年期か、レクリエーションレベルか競技レベルかで、傷害部位も変わってきます。必要に応じて内科的に、身長・体重、血圧・脈拍(アスリートは脈拍が遅い場合がある)、血液(貧血など末梢血液一般)、生化学(血糖値や肝機能、コレステロール、尿酸値など)、尿(尿糖や尿タンパクなど)、レントゲン(胸部写真で心臓や肺の大きさなどを見る)、心電図(安静時の不整脈など)、運動負荷心電図(トレッドミルやエアロバイク使用にて運動中の脈拍変化)などの検査を行います。アスリートには意外に一般人より貧血(鉄欠乏性)が多いのが特徴です。


チェックの実際

日本ではナショナルチームレベルのアスリートに年1回、国立スポーツ科学センター(JISS・東京)でのメディカルチェックを義務づけています。内容は内科系と整形外科系とに大別されます(前記参照)。甲子園で行われる春夏の全国高校野球大会では、ピッチャーの肘関節レントゲンチェックが義務づけられており、異常があればドクターストップとなり出場できません。


種目別のチェック方法と特徴

各種競技には競技時間の長さ、コンタクトスポーツであること、独特のフォームを必要とすることなど(投球動作と肩痛など)、傷害の原因となる特徴があります。問題点は自発痛よりスポーツ動作による運動時痛が多いことで、そのため予想される特殊的な障害(痛み)を誘発すべく、検者はチェックを行う必要があります。 マラソン:下肢、特に膝の障害チェック、アキレス腱炎、シンスプリント、下肢のアライメント、足底腱膜部、スポーツ貧血のチェック。
サッカー:股関節の柔軟性、膝オスグット病(成長期)、膝半月板損傷、足関節捻挫の既往、腰痛(体幹の柔軟性など)のチェック。
バレーボール:相手選手と直接身体は接しないので長身の選手がスカウトされやすく、競技人口の多くを占める。つまりマルファン症候群的(視力障害、四肢が長い、痩身、心臓血管の異常)な要素がある。ジャンプ着地による腰、膝、足関節の障害、アタックやサーブによる肩(写真1)、肘障害、パスによる指障害(写真2)、レシーブによる肩、肘障害、アキレス腱断裂(炎症)など、各動作に特徴的な障害が発生しやすい競技である。特にジャンパー膝(写真3)では、特徴的な膝蓋骨下部の圧痛点のチェック、大腿四頭筋柔軟性のチェックが有用である。
水泳:耳(中耳炎など)、眼(結膜炎)以外に肩の障害(動揺性やインピンジメント)、膝半月板障害、鵞足炎、内側側副靱帯炎(平泳ぎ膝)、腰痛のチェック。 野球:投球による肩の障害チェック(前面、側面、後面)、野球肘に代表される肘内外側の疼痛の有無、足関節捻挫、腰痛などをチェックする。

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メディカルチェックの手順

初めに座位、または立位にて上肢(肩、肘、手指、)を診察し、次に背部を見、次に仰臥位にて股、膝、足関節を、最後に腹臥位で腰部、踵臀距離、アキレス腱の順でチェックすると全身を網羅できます。上記によって生じた問題点を考慮して運動処方を行います。

コンディションチェック

メディカルチェックは費用や環境などの問題で、それほど頻繁に受けることはできません。メディカルチェックはある一定の期間ごとに受けることにして、日常的に簡単に行えるチェックを実施することにより、メディカルチェックまでの期間に体調を管理することが可能となります。そこでトレーナー編では、メディカルチェックというよりは、コンディションチェックとなってしまいますが、スポーツ現場で行える日常のチェックについてお話ししましょう。慢性的なケガやオーバートレーニングを予防するだけでなく、集中力の低下による傷害の予防にもつながります。


トレーニング日誌

まずは「トレーニング日誌」をつけることをお勧めします。そのなかには日々チェックする項目を設けて、それを継続的に書き込んでいきます。主な項目を表(p.50)に紹介します。ほかに血圧測定や閉眼片脚立ちなどのテストもありますが、日常的に負担をかけず、簡単に評価できるものでないと継続的に行うことが難しくなります。したがって、この種目に絞ってみました。できるだけ数値化して、継続して比較できるようにすることも大切です。そして、ある一定の期間で集計して、競技パフォーマンスと比較することによって、大会や試合に向けてのコンディショニングに役立てることも可能となります。  このコンディションチェックで把握したいところは、トレーニングの負荷が適切であるか、また疲労の回復が順調であるかというところを日常的にチェックすることにあります。起床時の心拍数の上昇や体重の急激な減少、食欲の不振などは疲労が蓄積された場合や、体調が悪い場合などは顕著に現れます。注意して観察する必要があります。これらのトレーニング日誌は、選手が自分自身で体調を管理することに役立てるとともに、毎日ではなくても1週間など、ある一定の期間ごとにコーチやトレーナーに提出させ、状況を把握する必要があります。


ストレッチング

ウォームアップやクールダウンにストレッチングを取り入れていると思いますが、このストレッチングもコンディションチェックとして利用することができます。疲労の回復が十分でないと、柔軟性は低下する傾向にあります。日頃行っているストレッチングでただ筋を伸ばすだけでなく、例えばハムストリングスのストレッチングの場合は、手の先がどの位置にあるかなど、柔軟性をチェックできるように行ってください。いつもより柔軟性が低下したと感じたときは、ストレッチングの時間や回数を増加させたり、パートナーストレッチングなどで入念に行ったりします。特に、以前ケガをしたことがある部位、疲労が蓄積しやすい部位などは要チェックです。


貧血、POMSなど

メディカルチェックでも行う項目にも入ることがありますが、貧血を把握するための血液検査や心理検査は、現場レベルでメディカルチェックにより頻繁に行うことが可能です。陸上競技長距離種目など持久系のスポーツでは鉄欠乏性貧血になると競技パフォーマンスに大きな影響を与えます。鉄欠乏性貧血は回復に時間がかかってしまうので、早期発見、早期対応が重要です。身近な医療機関と提携して定期的な血液検査が必要でしょう。ヘモグロビンのみの測定では、血液を採取せずにスポーツ現場で簡単に測定できる機器もあります。
 またPOMSという心理状態を把握するものがあります。POMSとは、緊張・抑うつ・怒り・活気・疲労・混乱の6つの因子が同時に測定でき、その人のおかれた条件の下で変化する一時的な気分・感情を測定するテストであり、そのときのコンディションを把握する際に非常に有用です。

1.起床時の心拍数(拍/分)
2.体重(kg)
3.体調(5段階)
4.疲労(5段階)
5.睡眠時間(時間)
6.睡眠状況(5段階)
7.食欲(5段階)
8.トレーニング強度(5段階)
9.トレーニング量・時間(時間)
10.疲労度(5段階)
11.筋柔軟性

コーチやトレーナーによるチェック

上記項目以外に、コーチやトレーナーは日頃の選手の言動によっても、コンディションの変化を把握することが大切です。例えば、合宿中の朝の散歩の選手の足どりや表情、何気なく会ったときの表情や姿勢などで、選手のコンディションを把握することが可能です。
 トレーニング日誌のところでもお話ししましたが、コンディショニングチェックで重要なことは継続的に行うことです。そして、身体面だけでなく、技術面、精神面を考えながら総合的に評価することです。その評価に応じてトレーニングの内容や強度、時間などを変化させることにより、よいパフォーマンスを発揮させることができると考えます。

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痛みを感じたり、故障が発生したら、すぐに医師の診察を受けることをおすすめします。

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