ジャンパー膝 別名:膝蓋腱炎(靱帯炎) Jumper's knee/Patella tendinitis

ジャンパー膝 別名:膝蓋腱炎(靱帯炎)

ドクターによる症状解説

Mitsutoshi Hayashi

林 光俊先生

医学博士、日本リハビリテーション医学会専門医、日本整形外科学会専門医、日本リウマチ学会専門医、JOC強化スタッフ、日本体育協会公認スポーツドクター

ジャンパー膝 別名:膝蓋腱炎(靱帯炎)

疾患の概要

ジャンパー膝とは名前が示すごとく、バレーボールやバスケットボールなどでジャンプや着地動作を頻繁に行ったり、サッカーのキック動作やダッシュなどの走る動作を繰り返したりするスポーツに多くみられる、オーバーユースに起因する膝のスポーツ障害です。

原因・発症のメカニズム

原因

大腿四頭筋の柔軟性低下が要因の1つに挙げられます。特に成長期の長身選手は、骨の成長に筋肉の成長が追いつかず、結果的に筋肉が硬い状態を招いた結果、その負担が末梢の膝蓋骨周辺に蓄積するために起こる慢性障害です。

メカニズム

ジャンプやダッシュなどによる膝関節の屈伸動作を頻繁に、かつ長時間にわたって行う場合、膝の伸びる仕組み(大腿四頭筋が引っ張られることで膝蓋骨、膝蓋腱、脛骨粗面にまで牽引力が加わる)に過度な牽引力が繰り返し加わることで、膝蓋骨周辺に微細損傷を引き起こします(図)。病態は腱実質部に出血、浮腫、ムコイド変性(結合組織の粘液変性)、フィブリノイド変性(線維素様のものが組織に沈着して組織傷害や炎症を引き起こす)などの変化をきたし、微少断裂や、最重症例ではまれに完全断裂に至ります。

ジャンパー膝1
ジャンパー膝2

図:ジャンパー膝のメカニズム
膝の伸びる仕組み(大腿四頭筋が引っ張られることで膝蓋骨、膝蓋腱、脛骨粗面にまで牽引力が加わる)に過度な牽引力が繰り返し加わることで、膝蓋骨周辺に微細損傷を引き起こす

診断

好発年齢

12〜20歳。特に10代の男性に多い。

左右差

罹患側に左右差はありませんが、チェックにて疼痛を訴えた選手の3分の1は、両側例でした。そのため、片側に痛みを感じた場合でも、反対側のチェックも重要です。

頻度

バレーボールナショナルチームのメディカルチェックにて、108名中35名が痛みを訴え、発生率は32.4%に及びました。

臨床症状

運動時に発生する膝前面の疼痛と圧痛(写真1)、局所の熱感、腫脹を伴います。重要な所見として、腹ばいにして膝を曲げると、大腿前面の突っ張ったような疼痛から逃れるために尻上がり現象(写真2)が出現します。

好発部位

膝蓋骨下部から膝蓋腱付着部(約7割)、膝蓋骨上部から大腿四頭筋腱付着部(約2割)、膝蓋腱中央部から脛骨粗面付着部(約1割)です。

MRI所見

バレーボールチームのメディカルチェックを行った結果、腱の形態は、膝蓋骨下極を中心に全例肥厚像(健常例は3〜4mmの均一な帯状低信号)を呈しました。なかでも膝蓋骨下極で平均8.4mm(健常比227%)と最も太く、中間部で5.3(123%)、脛骨租面で4.9(113%)でした(写真3)。

ジャンパー膝1

写真1 主に膝蓋骨から膝蓋腱付着部(膝前面)に疼痛や圧痛を伴う

ジャンパー膝2

写真2 ジャンパー膝である選手を腹ばいにして膝を曲げると、疼痛から逃れるために臀部が上がる「尻上がり現象」がみられる

ジャンパー膝 MRI

写真3 女子バレーボール選手の膝のMRI(本文中「MRI所見」参照)

類似疾患

【オスグッド病】
主に10〜15歳の男子に起こる脛骨粗面の成長障害です。

治療・リハビリ

治療法

疼痛の程度によって治療が異なるため、病期を4段階に分けます。最近では予防、再発防止用に装具の使用が勧められています。

【Phase1】
運動後に疼痛が生じる場合は、大腿前面のストレッチと局所の練習後のアイシングを徹底する。サポーター装具をつける。

【Phase2】
運動前後に疼痛が現れる場合は、上記に加えてジャンプ動作の休止、膝と股関節を中心とした下肢の運動療法と局所のアイシングを行う。

【Phase3】
運動に支障をきたす疼痛では、月単位での運動休止と下肢の筋肉のバランス改善を目的としたストレッチングを行い、疼痛が消失してからトレーニングを再開する。


【Phase4】
断裂例では縫合手術が必要である。

JKバンド

写真4 運動後に疼痛が生じる場合はサポーター装具をつける

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腸腰筋のストレッチ
大腿四頭筋のストレッチ

写真5、6 運動後に疼痛を感じる場合は、大腿四頭筋と腸腰筋をストレッチしよう。いずれも股関節が過伸展されていなければ効果が少ないので、股関節が十分にストレッチされているかどうかをチェックしよう

トレーナーによる対処法解説

Yoshizumi Iwasaki

岩崎由純先生

NATA公認アスレティック・トレーナー、日本体育協会公認アスレティックトレーナー、JCCA(日本コア・コンディショニング協会)会長

ジャンパー膝 別名:膝蓋腱炎(靱帯炎)

予防

普段から、スポーツの前後にきちんとウォームアップとウォームダウンを励行することがオーバーユースの障害を予防する基本となります。特に激しい練習や試合後には、リカバリーヒート(運動直後のまだ体温が高い間)の段階で十分なストレッチングを行うように心がけてください。
 ジャンパー膝に関しては、大腿四頭筋に筋肉痛が起こる、階段の昇降がつらい、膝下に痛みが出始める前に大腿部になんらかの兆候(脚全体がパンパンに張るなど)を感じているものです。その段階で下記などの処置をして症状を進行させないことが大事です。
・しっかりと時間をかけてストレッチする
アイシングやアイスマッサージを行う
・マッサージをして揉みほぐす

現場評価・応急処置

基本的には、痛みを感じている部位のアイシングを行います。ただし大腿四頭筋が酷使されて緊張しているときには、同時に大腿部全体のアイシングを行います。
 練習を禁止するほど強い症状が出ているときには必ず医療機関を受診しますが、ただ休むだけでは症状の緩和につながらないので、ドクターの指示のもと、消炎鎮痛剤を塗布したり内服したりしながらアイシングを行うことが基本です。患部の炎症が治まれば、大腿部についてはホットパックなどで筋肉を緩める処置を行うと効果的です。

リコンディショニング

ドクター編でも紹介されているように、ジャンパー膝用のサポーターは市販されています。これらのサポーターは、膝蓋腱の起始部や付着部に過大な力が加わらないように設計されています。
また、ジャンパー膝にキネシオテープを利用するトレーナーも多く見かけます。ジャンパー膝に限らずオーバーユースの障害に共通して言えることですが、使いすぎになる前に練習量や練習時間を調整することが大事です。
夏休みなどで練習量や練習時間が増えたときには自分の状態を把握し、必要に応じてストレッチングの時間を長くしたり、アイシングをしてください。選手同士でマッサージをすることもいいでしょう。特にアライメントや動作に問題がある場合には、十分な注意を払うことが必要です。
大事に至る前の予防措置が、ジャンパー膝を防ぐポイントですので、痛みに我慢しすぎると、選手の寿命を縮めることにつながりますので注意しましょう。

予防のストレッチ

・大腿のストレッチ
・内臀のストレッチ 
・腸脛のストレッチ
・膝下筋のストレッチ
時間をかけてストレッチをかけるのがポイントです。

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