ドーピングコントロール Doping Control

ドーピングコントロール

ドクターによる症状解説

Mitsutoshi Hayashi

林 光俊先生

医学博士、日本リハビリテーション医学会専門医、日本整形外科学会専門医、日本リウマチ学会専門医、JOC強化スタッフ、日本体育協会公認スポーツドクター

ドーピングコントロール

オリンピックはもちろん、それ以外の国際大会(ワールドカップ、アジア大会、ユニバーシアード等)もドーピング対象大会となっている。国内では以前から国体でも検査が実施された

ドーピングとは

競技において、興奮剤や筋肉増強剤などの禁止薬物を運動選手や競走馬が使う不正をいいます。オリンピックにおけるドーピング検査の実施は、1968年の冬季グルノーブル大会、夏季メキシコ大会より始まりました。

ドーピングコントロールの目的

薬物使用や不正行為をさせずに、競技者が公平な条件で戦えるようにすることです。現実には、84年のロサンゼルス・オリンピック以来、商業化が進み、巨万の富と利権がかかっているため違反者が後を絶たず、不正と取り締まりはいたちごっこです。以前は故意ではない、情状酌量〈しゃくりょう〉などの特例もありましたが、現在は疑わしきは罰する方針です。風邪薬1つ飲めないルールと嘆かず、ドーピング検査は一流選手の証と思ってください。  99年に世界アンチドーピング機構(WADA)、2001年に日本アンチドーピング機構(JADA)が設立され、国際オリンピック委員会(IOC)はアンチドーピング活動をこれらの機関に委託しています。

対象大会

オリンピックはもちろん、その予選大会、世界選手権、ワールドカップ、アジア大会、ユニバーシアード、各種選手権大会はドーピング対象大会です。国際大会のみならず、国内では昨年から国体でも検査が実施されました。

ドーピングコントロール1

国際大会で行われたドーピング検査

日本人選手の事例

84年ロサンゼルス・オリンピックの男子バレーボール競技で、2名の陽性者が出たのが最初です。ただし、このときの1人の選手は風邪薬として内服した漢方薬の葛根湯〈かっこんとう〉に含まれているエフェドリンが禁止対象薬物であったためですが、故意ではないとのことで出場でき、薬を渡したトレーナーのみ処罰されました。もう1名は、その大会から禁止項目に入った男性ホルモンのテストステロンが検出されましたが、生体内に存在するホルモンのため分泌量に個体差があり、過剰な場合は考慮されてない検査方法であったため、後にシロと裁定されました。

ドーピング禁止薬物とは

①興奮剤:麻薬のコカインは、脳神経を刺激して眠気や疲労感をなくします。コーヒーのカフェインなどに代表される興奮剤もあります。交感神経作動性アミン系興奮剤はぜんそく、風邪、鼻づまりに用いられるので要注意です。漢方薬や市販のドリンク剤にも含まれています。
②タンパク同化剤:いわゆる筋肉増強剤であり、男性ホルモンのテストステロンが有名です。ソウル・オリンピックでベン・ジョンソンが使用して金メダルを剥奪された事例があります。副作用が強く、女性の男性化、突然死なども起こりうるため危険です。
③麻薬性鎮痛剤:多幸感や無敵感を生む薬剤。習慣性になり、末期は禁断症状が出現して廃人化します。
④利尿剤:体重制限のある種目で、急激な減量のためや、尿量を増して、違反薬を薄める目的で使用されます。
⑤ペプチドホルモン、その他:アレルギー薬、目薬、鼻炎薬、育毛剤、皮膚軟膏、強壮ドリンク剤にもステロイドホルモンが含まれている場合がありますので、要注意です。最近では酸素運搬能力(持久力)を高めるため、造血促進のエリスロポエチン(EPO)による違反が多くなりました。
 その他、アルコールなど特定競技での禁止薬や、局所麻酔剤などの許可申請薬があります。自己血液の輸血なども不正行為の違反となります。

罰則

最初の違反者には、すべての競技会に対して2年間の出場停止となります。例外もありますが、コーチや役員まで罰せられることもあります。

予防

薬やサプリメントについては、少なくとも大会1ヵ月前からは帯同ドクターに処方されるか、直接確認を受けたもの以外は一切使用しないこと。ドクターにかかるときには、自分がドーピング検査を受ける可能性があることを告げてください。薬局、コンビニで手に入る薬品やドリンク剤、サプリメント(特に海外からの)などはかなり危険です。
 普段から薬やサプリメントについて、飲んだものはすべて記録しておくべきです。医者に処方してもらったものも、必ず薬剤名を確認して記録するとよいでしょう。また安全に使えて、自分に合った薬を普段から見つけておくべきで、自分の口に入れるもの、自分の身体に使用するものは自分で責任をもちましょう。

検査の実際

試合後に自分の尿を検査室で採取して、2本のボトルに移してから提出します。試合後に行われるため、汗をかいたあとなので尿が出なかったり、採尿(検査官に見られている)で緊張して検査に難渋することが多々あります。

ドーピングコントロール2

検査に使用される2本の尿ボトル

抜き打ち検査

検査実施が明らかな試合後のチェックだけでは、ごまかされてしまうため、最近は抜き打ち検査が行われるようになりました。空港や練習会場に突然現れてチェックされます。ただし筋肉増強剤など悪質な薬物が対象です。

トレーナーによる対処法解説

Yoshizumi Iwasaki

岩崎由純先生

NATA公認アスレティック・トレーナー、日本体育協会公認アスレティックトレーナー、JCCA(日本コア・コンディショニング協会)会長

ドーピングコントロール(トレーナー編)

ドーピングとは

ドーピングとはフェアプレーの精神に反するとして、全世界、スポーツ界全体で禁止されており、厳しい罰則も設けている競技もあります。禁止物質や禁止方法は、世界アンチ・ドーピング規程の禁止表国際基準 (Prohibited List) に定められ、少なくとも毎年1月1日に更新されます。常に禁止されている物質、競技会の時だけ禁止される物質また、特定の競技において禁止されている物質などの分類がありますので、下記のサイトで常に最新情報をしっかりチェックしましょう。

 
 公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構ホームページ:http://www.playtruejapan.org/

予防

薬やサプリメントについては、少なくとも大会1ヵ月前からは帯同ドクターに処方されたものか、直接確認を受けたもの以外は一切使用しないこと。ドクターにかかるときには、自分がドーピング検査を受ける可能性があることを告げてください。薬局、コンビニで手に入る薬品やドリンク剤、サプリメント(特に外国製)などは要注意です。
 普段から薬やサプリメントについて、飲んだものはすべて記録しましょう。医者に処方してもらったものも、必ず薬剤名を確認して記録するとよいでしょう。また安全に使えて、自分に合った薬を普段から見つけておくべきで、口に入れるもの、身体に使用するものは自分で責任をもちましょう。一般の市販薬、特に風邪薬は飲めないと思ったほうがよいでしょう。

検査の実際

試合後に自分の尿を検査室で採取して、2本のボトルに移してから提出します。汗をかいた試合後に行われるため尿が出にくかったり、検査官に見られて緊張して出にくくなり、検査に時間がかかることが多々あります。

競技会外検査(例:ナショナルチームに選ばれた選手)

ナショナルチーム(トップクラス)の選手になった際には、RTPに登録されます。登録されると事前通告なしの競技会外検査をより効果的に受け自らがクリーンであることを証明するために、インターネット上のアンチ・ドーピング管理運営システム(ADAMS)を通じて四半期ごとに3ヵ月分の居場所情報を提出する必要があります。居場所情報は、居住地・宿泊地・トレーニング場所や競技会などの情報を詳細に提出しなければいけません。さらに、必ず検査に対応できる時間と場所を指定する「60分の時間枠」を指定することも義務付けられています。60分枠で指定した時間と場所にいなかった場合(検査未了)、または居場所情報が期限までに提出されなかったり、アップデートされていないこと(提出義務違反)が12ヶ月間で合計3回になると、「アンチ・ドーピング規則違反」となり、1~2年間の資格停止になる可能性があります。

身近になったドーピング

ひと昔前までは、一般のアスリートにとってドーピングは身近なものではありませんでした。それは代表選手クラスの特定のレベルで行われていることで、オリンピックやアジア大会にかかわらない限り、関係のないことのように思われていたのです。まさに画面の向こう側のイメージがありました。
 そのドーピングが、最近になって日本国内の大会でも行われるようになってきました。他人事だと思っていたドーピングが突然、目の前にやってきた感じです。理屈ではわかっていたつもりでも、いきなり「出場停止」「メダル剥奪」、そして何より周りからの非難の目の中心に位置することになる可能性が出てくると、平常心ではいられません。
 何よりもドーピングを選手自身がきちんと勉強そして理解し、何かの間違いが起きないように普段から心がけることが大事です。チームスポーツであれば監督、コーチ、トレーナー、栄養士などすべてのスタッフが協力し、サポートしていく必要があります。個人スポーツの場合には、かなりのレベルで自己管理が必要になりますが、若い世代にとってはご両親、特にお母さんの理解と協力も必要になることでしょう。
 具体的には、練習日報など日々の記録のなかに、摂取したすべての食事、水分、サプリメント、薬を記録することが第1歩になります。(前述したように市販の風邪薬はNGです。)コンビニで買ったものも、街のドラッグストアで買ったものも、ドクターから処方されたものもすべて1つ残らず記録します。この時点では、どれがドーピングの禁止薬物であるかをいちいち気にしていないかもしれませんが、まずは記録する習慣をつけることが重要です。最新の情報は下記のリンク先を参照にしてください。


◆参考リンク
公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構ホームページ: http://www.playtruejapan.org/
世界ドーピング防止機構ホームページ: https://www.wada-ama.org/


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