鉄人に聞け!骨盤裂離骨折

症例解説Body & injury

Hip股関節周辺

骨盤裂離骨折Avulsion fracture of pelvis

  • 原因や治し方(医療編)
  • 予防や対処法(トレーナー編)
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はじめに

骨盤裂離骨折は、骨が弱い成長期に発生しやすいスポーツ障害です。骨盤のなかでも腸骨の上前腸骨棘には大腿筋膜張筋、縫工筋が、下前腸骨棘には大腿四頭筋(直筋)が付着しています(写真&図)。これらの筋肉がキック動作など、スポーツで生ずる筋力によって骨盤付着部を急激に牽引するために、骨盤の一部が裂離(骨折)してしまいます。

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受傷機転

股関節伸展位から急激な屈曲動作(キックなど)が加わると、特に成長期では脆弱〈ぜいじゃく〉なため、骨盤骨端部が裂離しやすく、ボールを蹴る動作では下前腸骨棘の発生が多く見られます。また、ダッシュでは上前腸骨棘の発生が多く、まれに坐骨結節がハムストリングスの急激な収縮によって裂離する場合もあります(ハードルなど)。


好発スポーツ

サッカー、陸上短距離(スタートとゴール時)、ハードル、ジャンプ、柔道や相撲の投げ技、野球の空振りなどに好発します。


好発年齢

中・高校生である12~18歳(14~15歳がピーク)に好発します。強い筋力をもつ男子の右側に多く発生します。


症状

突然の股関節痛が出現し、歩行困難、股関節周囲の圧痛。安静時には股関節軽度屈曲位(引っ張られないように)をとります。


診断

レントゲン上、腸骨部に剥離した骨折片を認めます(ただし受傷時はわかりにくい)。CTでも確認できます。


治療

保存的治療では第1に安静の保持、アイシング(約1週間)を徹底します。疼痛が緩和してきて歩行時痛が消えたら、歩行を許可します(受傷後2~3週、ただしスポーツは禁止)。レントゲン上で骨の癒合が確認されれば、ランニングを許可します(2~3ヵ月)。  手術は骨片をスクリューなどで整復固定する観血的治療があります。適応は骨折部の離開が強く、保存療法では癒合が厳しい場合や、早期のスポーツ復帰を望むときです。実際は成長期の障害であるため、骨癒合はよく、保存療法で治療は十分可能です。


予後

多少の骨変形が残存しても、骨の癒合が完了して十分な時間が経過すれば、スポーツ活動に支障は少なく、比較的予後は良好です。

はじめに

筋付着部の骨に対して、急激かつ強い力が働き骨折を生じるものが裂離骨折です。したがって、これらは強力な収縮力を発揮する筋の付着部に発生します。主な部位として、骨盤の上前腸骨棘、下前長骨棘、坐骨結節、大腿骨小転子、腸骨稜です。 なかでも上前腸骨棘、下前長骨棘の割合が多く、上前腸骨棘には大腿筋膜張筋と縫工筋、下前腸骨棘には大腿四頭筋のなかの大腿直筋が付着しており、どれも力の強い筋であり、陸上競技や野球、サッカーなどでのダッシュやジャンプ動作、さらにキック動作などの場面で強く発揮することが期待される筋です。 この障害は、メディカル編でも述べているように、12~18歳前後に多く見られます。成長期の12歳頃から大転子を除く股関節周辺には骨端核が出現し、力学的に弱い状態になります。よって裂離骨折が起こりやすくなっています。


予防

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環境的な要因や体力不足、ウォームアップ不足、疲労の蓄積などがこのケガの原因と考えられますが、研究報告などはされていないようです。しかし、疲労が蓄積され、柔軟性が低下した状態で無理な体勢になると、余計に大きな力を強引に発揮させる原因ともなります。裂離骨折だけでなく、すべてのケガに対する予防策、及び競技力向上のためにストレッチングやウォームアップ、クーリングダウンは入念に行いたいところです。 これは個人的な見解ですが、成長段階のスポーツ指導のなかでこの14~16歳の年代に入る前の9~12歳くらいまでは、神経系の発達が完成される時期であり、この時期に理想的な技術指導がされておらず、力任せのプレースタイルになっていると、強引な筋力発揮をするプレーが多くなり、ケガにつながる恐れがあると考えられます。 また競技によっては成長段階により、負荷や頻度などを制限しているものもありますので、それらを基準に指導することが予防につながると考えられます。

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現場での対応

スポーツ活動中、突然「ビシッ」といった音を感じるとともに、患部に痛みが生じます。すみやかにアイシングなどの応急処置を行い、医師の診断を受けることを勧めます。特に坐骨結節の裂離骨折の場合、痛みの程度も軽いことが多く、歩行も可能な場合もあり、ハムストリングスの肉離れと勘違いして、放置してしまう場合が多いようですので、注意が必要です。


スポーツ復帰まで

上前腸骨棘、下前腸骨棘の場合は、スポーツ復帰までに2~3ヵ月、坐骨結節の場合には3~4ヵ月かかるといわれています。ともに、医師の指示に従って競技に復帰していただきたいと思います。 受傷後1~2週間は安静、アイシングが必要で、歩行の場合は松葉杖を使って体重がかからないようにします。通常3週目くらいから歩行が可能となります。その後、柔軟性を高めるためのストレッチングや、関節の動きを伴わないアイソメトリックエクササイズ(等尺性運動)を開始します。 4~6週で水中運動やエアロバイク、軽いジョギングなどを開始します。水中運動は体重が浮力により軽減します。またエアロバイクなども座位で行う運動ですので、体重が直接かかりません。よって水中運動やエアロバイクなどから開始し、徐々に体重が負荷となるジョギングに移行させていきます。 その後、経過を見ながら競技復帰していきますが、ここでも強度は徐々に上げていきます。例えば、ランニングであれば急激なスピードアップやストップを行うのではなく、徐々にスピードを上げていき、ストップ動作も徐々に止まる時間を短くしていきます。サッカーのキック動作などは、止まったボールを軽く蹴る動作から徐々に強く蹴っていきます。 再発予防のためには、医師にしっかりと診断をしてもらってから競技復帰するようにしましょう。

痛みを感じたり、故障が発生したら、すぐに医師の診察を受けることをおすすめします。

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