鉄人に聞け!足関節捻挫

症例解説Body & injury

Ankle,Achilles' tendon足首・アキレス腱

足関節捻挫Ankle sprain

  • 原因や治し方(医療編)
  • 予防や対処法(トレーナー編)

疾患の概略

足関節捻挫(靱帯損傷)はスポーツによる急性外傷としては最も頻度が高く、かつ重症度の高い障害です。


解剖

足関節は脛骨、腓骨、距骨の3つの骨より成り立ち、外側(腓骨側)は前距腓靱帯、後距腓靱帯、踵腓靱帯で囲まれています(図1)。内側(脛骨側)は三角靱帯という強い靱帯で守られています。

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受傷原因

バレーボールやバスケットボール競技で特に多く発生します。ジャンプの着地時に人の足の上に乗り、足関節の内反が強制されて起こる場合が最も重症です(写真1)。床で滑って足をひねった場合(自損例)は中等症の損傷が多く、サッカー、ラグビー、アメリカンフットボールなどにみられる接触プレーをはじめ、野球のスライディング、体操競技、テニスに多く発生します。ときに、外反が強制された内側の損傷例もあります(写真2)。

 スポーツレベルは、レクリエーション、学校体育からトップレベルの競技全般において発生します。 image_08_02

診断、及び治療

急性期では受傷部位を確認し、RICE処置にのっとってスプリント(副木)、包帯、テーピングによる固定、アイシングを行い、患肢挙上により安静を保ちます。 歩行に際して足関節に強い疼痛を感じるようならば、整形外科(できればスポーツドクター)を受診しましょう。レントゲンチェックによる骨折の有無判定や、靱帯の緩みを調べるストレスレントゲン(写真3、4)、最近ではMRIが有用です。損傷の程度を3段階に分けると、治療やリハビリテーション法の決定に有用です。

1度靱帯の微細損傷や軽度の圧痛があるが、いわゆるちょっとひねった程度であるため、当日もしくは2~3日で競技復帰が可能な状態。歩行や軽い走行も可能。
2度靱帯の部分断裂で圧痛、腫脹が強く、歩けるが走れない。競技復帰まで2~3週間かかる。装具やテーピング、副木固定が必要です。念のために医療機関でチェックを受けてください。
3度完全な靱帯断裂で圧痛、腫脹、熱感、皮下出血が強く、自分で歩くのがやっとです。競技復帰まで1~2ヵ月を要します。医療機関での治療(ギプスや装具による強固な固定、もしくは断裂靱帯の縫合手術)が必要です。
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注意点

スポーツ選手にとって足関節は、繊細な動きを求められる関節の1つです。受傷初期は足関節の運動制限をきたすため、アキレス腱のストレッチングが大切です(図2)。底背屈運動を可能にして内反運動の制限が要求されるため、競技復帰に際しては、テーピングや足関節装具による予防法が用いられています(写真5)。

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ポイント

足関節を4面にみたてた各方向のトレーニング、特に損傷した外側靱帯の代わりに腓骨筋腱を強化することが競技復帰に向けて重要です(「月刊コーチングクリニック」2001年9月号参照)。

発生時の状況

足関節捻挫(靱帯損傷)とは、わかりやすくいえば「足首をひねって」受傷することです。まずは傷害発生時の状況によって、ある程度は「ことの重大さ」を判断できます。 (1) そのままうずくまって動けない。 (2) すぐに自力で練習(試合)から外れて報告。 (3) プレー終了後報告。 (4) 練習(試合)終了後報告。 (5) 翌日以降に報告。  痛みに対する強さや感じ方は選手によってかなり違うので、翌日以降に報告したからといって軽傷と決めつけるわけにはいきません。しかし、自力で動けずに担架で搬出した場合には、大ケガを想定した対処が必要です。


HOPS

スポーツの現場でなんらかの傷害が発生したときには、トレーナーは状況を判断するために事情聴取(H:history)をして話を聞きます。そして患部をよく見て(O:observation)、触って (P:palpation)、動きのチェック(S:stress check)をします。

事情聴取 何が起きたのかを本人から説明してもらいます。その段階で「折れた」「音が聞こえた」などの重大なサインがあった場合には、病院に移送します。
視診 実際に患部を見ます。明らかな変形、腫脹、変色がある場合にも、やはり病院へ行きます。
触診 次に触ってみます。ここでは発熱や腫脹をチェックしますが、明らかな異常がある場合には病院へ移送してください。
チェック 上記の3段階チェックで大丈夫そうでも、「立てない」「歩けない」「走れない」というケースがあります。実際に動かせるかどうかを確かめ、機能的に異常がある場合にもやはりドクターの診察を受けるべきです。

HOPSのチェックをすべてクリアして初めて、テーピングなどの予防措置をして再開テスト(表1)を行います。基本的に足関節の内反捻挫は、一度はドクターに見せるものだと考えておいてください。


応急処置

足関節捻挫もほかのスポーツ傷害同様、応急処置の基本はRICE処置です。患部を固定して安静状態をとり(R:安静)、氷で患部を冷やします(I:冷却=アイシング)。そして、患部を圧迫して(C:圧迫)心臓より高く上げます(E:挙上)。  アイシングの際、冷えすぎた氷や、化学反応を利用したアイスパックなどを使用すると凍傷の危険性がありますが、製氷機で作られたフレッシュな氷は直接患部に当てても大丈夫です。ただまれに、冷却することに対してアレルギー反応を示す人がいますので、ドクターに相談してみてください。 注意! アイシング中もどんどん熱が上がり、痺れが広がって患部をかきむしりたくなるほど痛みが激しいときには、コンパートメント症候群*の危険性があります。挙上は心臓の高さまでとし、大至急、病院に行ってください。緊急手術適用の可能性があります。 * 筋膜、筋間中隔、骨、骨間膜によって囲まれた部分(コンバートメント)の内圧が上昇して起こる、循環(血液)障害。内圧を下げなければ、筋肉が壊死し、後遺障害が引き起こされる。


リコンディショニング(表1)

3度の損傷などで手術適用となった場合には、初期のリハビリテーションは病院で理学療法士の指示下で行います。関節可動域や筋の機能回復などが主な目的です。病院に行かなかった場合でも、安静期間後は必ず柔軟性や筋力、バランス(関節の安定性を含む)などを獲得するためのリコンディショニングを行います。メディカル編でも触れているように、特にアキレス腱の柔軟性は、足関節捻挫と密接な関係がありますので、ストレッチングはしっかりと行ってください。

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再発予防措置

テーピングやブレースなどを利用しましょう。 ・テーピング…「月刊コーチングクリニック」特集(2002年1月号他)や専門書を参考にしながら、選手のニーズに合わせて巻いてください。 ・装具…アンクル・ブレースは、かなりの種類が市場に出回っています(メディカル編写真5)。メーカーによって内反捻挫をどうサポートするかの機能性が違ってきます。また、素材の硬さや基本となる足型の違いから、フィット感が異なるのも事実です。シューズと同じように足を通してから選手に合うものを選ぶことが大切です。


再開テスト(表2)

再開テストは、テーピングやアンクル・ブレースなどの再発予防措置をした上で、練習復帰が可能かどうかをチェックするために行います。ドクターストップがかかっている状態では絶対に禁忌です。 再開テストの基本は、テスト動作を行って痛みや異常があれば、その程度に合わせて部分的な練習参加にとどめたり、リコンディショニングのメニューに戻したりすることが条件です。すべてのテストを無理なくクリアして、練習や試合での完全復帰を目指しましょう。無理な早期復帰では、再発の危険性が高くなってしまいます。

表2 足関節捻挫後の再開テスト
1片足立ち(15秒)
2片足閉目バランス(15秒)
3片足でのその場ホップ(10回)
4前後へのダッシュ(5往復)
5左右へのサイドステップ(5往復)
6スパイクジャンプ(9割)
7ブロックジャンプ(9割)

ポイント

足関節捻挫は、人の足の上に着地したり、方向転換の際にバランスを崩したりすることが原因なので、「仕方がないことだ」と考えがちです。しかし、不可抗力だと思われるケガでも、疲労や身体のバランスのズレなどによって起きる傾向があるようです。実際に心身ともに充実しているときには、少しひねっても大事に至らないことがあるものです。ふだんからストレッチングやアイシングを励行し、栄養や睡眠も十分とるようにしてケガを予防しましょう。

痛みを感じたり、故障が発生したら、すぐに医師の診察を受けることをおすすめします。

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