ケガを知ることで不安のないプレーを。
サッカートラブル WEB 読本
サッカー部で活動する中高生のみなさまへ
このページでは、サッカーで起こりやすいケガの仕組みやその原因、またケガからの復帰の流れや予防トレーニングを紹介します。
監修してくださったのは医師の立石先生と、トレーナーの並木氏と山浦氏。
日本のサッカー界のメディカル分野において第一線で活躍している方々です。
そんな彼らからまずはメッセージをいただきました!
「自分の身体に常に目を向けることでケガのリスクは減らせます」同愛記念病院 整形外科 立石 智彦氏「自分の身体に常に目を向けることでケガのリスクは減らせます」同愛記念病院 整形外科 立石 智彦氏
サッカーに限らず、ケガをして初めて自分の身体に目を向ける、そんなケースがまだまだ多いのが現状です。そうならないためにも常にセルフコンディショニングを意識してほしいと思っています。練習前はもちろん、練習後や寝る前にもストレッチを行い、翌日に疲労を持ち越さないことも大切です。
また、指導者や保護者の皆さまにも適切な医療知識を持ってほしいと思います。ケガをした状態でプレーさせてもパフォーマンスは上がりません。最近では後述するジョーンズ骨折というケガが高校生年代で増えています。子供達が違和感を感じていたら早めにメディカルチェックを受けさせるようにしてください。インターネットにも有益な情報が多く掲載されていますのでそれらを参考にしてみるのも良いと思います。
近年ではここで紹介する足や膝の傷害の他にも、中学生年代で腰椎分離症(腰の疲労骨折)などが増加しています。これもハムストリングスや股関節の柔軟性の獲得や体幹を鍛えることで予防することができます。
「セルフマネージメントを心がけ、サッカーを末永く楽しみましょう」株式会社ナズー 代表取締役 並木 磨去光氏 歴代のサッカ―日本代表選手が信頼を寄せるトレーナー。W杯(1998/2002/2006年)、五輪(1996/2000/2004/2008年)に帯同。 株式会社ナズー アスレティックトレーナー 山浦 伊吹氏 東洋大学サッカ―部トレーナー「セルフマネージメントを心がけ、サッカーを末永く楽しみましょう」株式会社ナズー 代表取締役 並木 磨去光氏 歴代のサッカ―日本代表選手が信頼を寄せるトレーナー。W杯(1998/2002/2006年)、五輪(1996/2000/2004/2008年)に帯同。 株式会社ナズー アスレティックトレーナー 山浦 伊吹氏 東洋大学サッカ―部トレーナースポーツマッサージ NAZOO
全てのスポーツにはトレーニングとコンディショニングの2つの要素が重要です。それら両方をしっかりコントロールすることで、試合で100%のパフォーマンスが発揮できると思います。試合が終わった瞬間から次の試合の準備が始まっていると考えてください。食事やストレッチ、身体のセルフケアなどを通じて、次の試合までにどう回復させるのが良いのかを考える習慣をつけましょう。
そして、自分自身で工夫し、こういう生活をすれば実力が出せるということを常に探してみてください。セルフマネージメントすることを常に意識し、ポジティブに取り組みましょう。それが末永くサッカーを楽しむための秘訣です。しかもセルフマネージメントの意識は、大人になってからサッカー以外でもきっと役に立つはずです。
サッカートラブルガイド
サッカーで起こりやすい5つのケガについて、仕組みと原因またケガからの復帰や予防トレーニングを紹介します。
トラブルを避け、ケガをしてしまってもきちんと治す知識を身につけて、サッカーを楽しみましょう。
足関節捻挫
足首を強くひねる、またひねった状態で着地することが原因で靭帯を損傷します。また、足首捻挫の約90%が足首を内側にひねる、内反(ないはん)捻挫と言われています。外側の靱帯(前距腓靱帯)に負担がかかり、靱帯が損傷すると外くるぶしの周りに腫れや痛みが出ます。サッカーでは最も多いケガのひとつです。捻挫は一度してしまうと、靱帯が伸びてしまい、役割を果たしにくくなり、再発してしまうことが多く見られます。受傷した場合、初期は適度な固定を行い、サポーターを使いながら段階的なリハビリテーションを行います。 足関節捻挫足関節捻挫
切り返しやサイドステップ、カットイン、ストップ動作、ジャンプの着地といった動きの中で自らバランスを崩して捻挫をしてしまうケースが多くあります。また動きとは別に、グランド表面の問題もあります。例えば人工芝ではストップ動作がしやすい反面、特に足首にかかる負荷が大きく、捻挫の発生率が上がるとも言われています。 受傷直後はできる限り早めにRICE処置を行います(→ケア・コンディショニング参照)。RICE処置の時間は、一般的には48〜72時間と言われています。痛みが落ち着いて来たら少しずつ患部の関節可動域を戻す訓練をしましょう。これを怠ると、後で走った際、ふくらはぎにかかる負荷が大きくなり、また、足首が再び腫れる原因になることもあります。 さらに筋力の回復にも努めましょう。日常生活で痛みがなくなれば、サポーターを使用し、少しずつジョギングを始めます。その際、速く走ったり、横に動いたりしながら、実際のサッカーの動作で、治り具合を確認してみましょう。
ヒザの靱帯損傷
急なストップ動作や方向転換の際、膝をねじることで発生します。外側、および内側側副靱帯は、膝が左右にグラつくのを抑え、前十字靱帯は膝から下が前に出ないようにストッパーの役割を果たしています。さらにこれらと、後十字靱帯で膝の安定性を保っています。内側側副靱帯や前十字靱帯が断裂してしまうと、膝の安定性が失われ、踏み込みや切り返しが困難になるのはもちろん、半月板の損傷など、合併損傷を引き起こすこともあります。主にハムストリングスを鍛えることが予防につながります。 ヒザの靱帯損傷ヒザの靱帯損傷
サッカーにおける膝の靱帯損傷では、内側側副靱帯の損傷が最も多く、次いで前十字靱帯損傷(断裂)が多いと言われています。内側側副靱帯は、膝の外反(膝から下が外側に持っていかれる)が原因となる場合が多く、例えば2人の選手が同時にボールを足の内側で蹴った際に受傷するケースが考えられます。 前十字靱帯に関しては、接触プレーではなく単独で受傷するケースがほとんどです。身体をひねっての方向転換(カットイン)や、ジャンプの着地時に起こりがちです。近年の研究で、膝から下が内側に捻られ、さらに膝が内側に倒れ込む(ニーイン)動作が前十字靭帯損傷を引き起こすことがわかってきました。こうした危険動作を避けるためにも、日頃から筋力を強化する必要があり、予防トレーニングが注目されています。 ヒザの靱帯損傷ヒザの靱帯損傷
内側側副靭帯損傷では主に手術はせず治療しますが、前十字靭帯断裂後はほとんどが手術となります。受傷後は、すぐにアイシングを行いつつ固定します。それから患部にできるだけ負担を掛けないように免荷をし、ドクターの元で手術を受けるのが一般的です。術後は病院で理学療法士、チームではトレーナーの指導を受けながらリハビリテーションを行います。競技復帰までには6〜8カ月ほど必要とします。大会や学校のスケジュールなどと調整し、いつ、どのような手術を受けるのかも考えましょう。
早期復帰を目指すには筋力を取り戻すことが重要です。柔らかいボールやクッションなどを膝の下に敷きつぶすように動かす「クワードセッティング」や、座った状態で膝を曲げ伸ばしする「ヒールスライド」などが主な方法です。また、再受傷や2次的なケガの予防のために体幹を鍛えることも大切です。(→体幹参照
オスグッド・シュラッター病
オーバーユースによる成長期のスポーツ障害の代表疾患です。成長期は急激に身長が伸びるため骨も急成長を遂げますが、残念ながら筋や腱は同じように成長しません。そのために生じる大腿四頭筋の柔軟性低下をきっかけとして、ジャンプやダッシュなどの繰り返しの動作で大腿四頭筋による強大な牽引力が発生し、膝蓋靱帯が脛骨につながっている部分(付着部)が剥がれたり、炎症を起こしたりします。これが、オスグッド・シュラッター病です。 オスグッド・シュラッター病オスグッド・シュラッター病
これは、サッカーに限らない障害ですが、小学校高学年から中学生に多くみられ、ダッシュやジャンプといった動きが原因とされます。また、小学校から中学校に進学し、練習内容がハードになると、体がついていかずに発症するケースもあります。脛骨の出っ張っているところを押さえてみて、違和感がないか常にセルフチェックしましょう。違和感がある場合は、早めに休むことが大切です。痛みを感じる際はしっかりとアイシングしましょう。 オスグッド・シュラッター病による痛みの段階は大きく分けると
オスグッド・シュラッター病オスグッド・シュラッター病 もし、3段階となったら競技を休むことが大切です。このように常にセルフチェックしてみましょう。これにより再発する可能性は低くなり、競技にも早く復帰できます。また、練習後の痛みは、アイシングを行って早めに取り除きましょう。また、ストレッチポールなどを使ったマッサージも効果的です。さらに、痛みを抱えたまま競技を続けると、患部をかばう動作が起きるため、他の部位を傷めてしまうことにもつながります。
ジョーンズ骨折
ジョーンズ骨折は、ランニングやジャンプ動作による過度の体重負荷が、長時間、足部アーチに繰り返し加わることで発生するオーバーユースに起因するスポーツ障害です。金属疲労(金属板の折り曲げ運動)と同様に、繰り返しのストレスが中足骨に加わって起こります。また一般的な骨折とは発生原因が異なり自覚症状が出にくいので、見過ごされることがあります。 ジョーンズ骨折ジョーンズ骨折
クロスステップやサイドステップなどにより、アーチ部分への繰り返しの負荷が原因となります。また、近年のサッカースパイクの性能向上などによりストップ動作がしやすい環境も、足の外側(第5中足骨)への負担が増え、ジョーンズ骨折増加の原因とも言われています。特に中学や高校に進学直後で練習量が増えた際に受傷する可能性が高くなります。予防策として可能であれば、土と人工芝で異なるスパイクを用意したり、ランニングの際はランニングシューズを履くなど、練習に合ったシューズを用意するのもよいでしょう。 まだ成長期にある中学生の場合は保存療法で対処します。成長が完全に止まっている場合はボルトで固定する手術を行います。 足関節捻挫の場合(→参照)と同様に、足首まわりの可動域と筋力を戻すリハビリテーションが一般的に行われる方法です。また、体幹(→体幹参照)や全身の筋力を鍛え、身体のバランスを整えます。
肉ばなれ
肉ばなれの原因としては、筋肉が限界を超えて急激に伸ばされることが一般的です。特に太ももやふくらはぎに多い障害となります。ストレッチ不足などの要因もありますが、ハムストリングスの筋力が、大腿四頭筋の50%以下のアンバランスな状態になると、ハムストリングスの肉ばなれが起こりやすいと言われています。肉ばなれは重度になると、筋肉や腱の断裂を引き起こしている可能性もあるので注意が必要です。また、日常生活に支障が出るほどの痛みがある場合は、剥離(ハクリ)骨折であることも考えられるので早めに病院にかかりましょう。 肉ばなれ肉ばなれ
肉ばなれはロングフィードに追いつこうと全力疾走する際などに多く発生します。急激なダッシュやストップ動作で、ハムストリングス(太もも後側)の肉ばなれを起こしやすいと言われています。また、ボールを蹴る動作などでは、大腿四頭筋(太もも前側)の肉ばなれを引き起こすこともあります。そうならないためにはやはり運動前後のストレッチなどのセルフケアが重要です。 受傷直後は基本的にRICE処置を行います(→ケア・コンディショニング参照)。アイシングも重要ですが、しっかり圧迫することも心がけましょう。圧迫をかけることで出血が広がらず、競技への復帰を早めることが可能です。
ストレッチは筋肉が伸ばされている感覚が持てるようになってから始めましょう。また、関節と筋肉の柔軟性や、段階的に筋力を戻してゆくことも大切です。サポーターなどで圧迫し、ウォーキングなどから徐々にリハビリテーションを進めます。復帰直後はラップタイプのサポーターを着用すると再発予防にも有効です。
ケア・コンディショニング
RICE処置
受傷後に行う「RICE処置」を紹介します。RICEは以下の各ポイントの頭文字に由来しています。 患部を覆うようにジェル状のパッドを貼り付け、その上から包帯やバンデージなどで足首が動かないよう、しっかり固定します。ただし、巻き終わった後、足が痺れるようであればやり直します。 さらに患部を心臓より高い位置に上げアイスバッグで冷却します。 ※ジェル状のパッドは一般的に販売されておりませんので、中高生の方はアイスバッグで冷却しましょう。 このようにRICE処置を早めに行うことが、その後の回復にも大きな影響を及ぼします。 ですから、応急処置用のバンデージやアイシングの準備は必ずしておきましょう。
リカバリー
テレビなどでもサッカー選手が氷入りのお風呂(アイスバス)に入ったりしている姿を見たことがあるかもしれません。それは疲労の早期回復に効果があるとされているからです。 アイスバスに入ると血管が収縮します。一定時間経った後アイスバスから上がると血管が広がり、血流が良くなります。疲れている筋肉は多くの酸素を必要としているので、その酸素を運ぶ役割の血液の流れを良くすることで、疲労回復が期待できるのです。また、体温を下げることで運動後の無駄なエネルギー消費を抑える目的もあります。 理論上は下半身のみを10〜15℃の冷水に15分ほど浸けるのですが、中高生の場合は3〜5分程度で十分です。また、運動直後はアイスバス、翌日は温水と冷水を交互に入る交代浴を行うとよりリラックスできます。
筋肉の揺れを抑える
筋肉は走ったり、衝撃を受けたりすることで振動(揺れ)します。人の身体は無意識のうちにこの無駄な動きや振動をコントロールし、抑えようとする力が働きます。こうした余計な筋肉の働きが長時間の運動の中で蓄積され、やがてスタミナロスやパフォーマンスの低下につながると考えられます。一方、この振動は外部から適度に圧迫(コンプレッション)することで抑えることができると言われています。ソックスの下に、着圧ストッキングをはいているサッカー選手は、そういった効果を狙っているようです。
血流サポート
血液は動脈を通って身体をめぐり、静脈を通って心臓に戻ります。足をめぐった血液は重力に逆らって心臓に戻ります。その際に大きな働きをするのが、ふくらはぎの筋肉です。ふくらはぎの筋肉がポンプのように収縮することで、血液を心臓に送り返す手助けをします。しかし、疲れたり同じ姿勢でいたりすると、この機能も低下。血液が心臓に戻りにくくなり(足に血液が溜まりやすくなり)、足のむくみや、だるさなどにつながります。
遠征などの長距離の移動、特に試合後にはその症状が顕著になります。それを防ぐためにはコンプレッション専用(段階着圧タイプ)のタイツを装着するとよいでしょう。
体幹トレーニング体幹トレーニング
体幹トレーニング映像