肩 Shoulder

カラダの中でも最も動く範囲が広い反面、とても不安定な肩。

肩の関節は肩甲骨の関節窩と、上腕骨骨頭で構成されています。
球の形をした関節のため、ダイナミックな動きに対応できる反面、脱臼などの障害が起こりやすい不安定な部位でもあります。

Anatomy of Shoulder - 肩の機能と解剖

肩の機能と解剖 肩の機能と解剖

Sports Injury of Shoulder - 肩のスポーツ傷害

Q&A - 過去に寄せられたご質問への鉄人の回答

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肩に関するQ&A

クセになった肩の脱臼を治す方法

以前、試合中に転倒して肩が脱臼し、以来肩の脱臼がクセになってしまいました。痛みも少しあり、いつ脱臼するかといつも不安です。ケアの仕方、肩の強化の方法を教えてください。

まず、質問の答えに入る前に、肩関節の基礎知識と肩関節の脱臼について確認しておきます。

肩関節の基礎知識

肩関節は、□肩甲上腕関節、□肩鎖関節、□胸鎖関節、□肩甲胸郭関節などから構成されています。一般に、いわゆる肩関節と呼ばれているのは、肩甲骨と上腕骨で構成されている「肩甲上腕関節」です。そこで、「肩関節=肩甲上腕関節」としてお答えします。
 肩関節は、解剖学的特徴から、いろいろな方向によく動きます。逆に、安定性のない関節、ということもできます。そんな不安定な関節を頑張って安定させているのが、「ローテーターカフ」(回旋筋腱板)と呼ばれている筋肉群です。
 ローテーターカフは、棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋から構成され(図)、これらの筋は、上腕骨を肩甲骨の関節面へ引きつけるように、肩甲骨から上腕骨の近位(骨頭)へ走行しています。

肩回旋筋腱板(ローテーターカフ)の解剖と機能

反復性脱臼

外傷によって起こった脱臼のあとに、脱臼がクセになってしまったものを、反復性脱臼といいます。反復性脱臼では、肩関節に外転外旋位が強制されると、しばしば上腕骨が肩甲骨のソケットから外れてしまいます(外転とは、腕が身体から外側に離れる動きです。外旋とは腕を外側にひねる動きで、肘の内側が外側を向きます)。


強化方法

肩関節の安定性を改善するために筋力トレーニングを行う必要があります。筋力トレーニングは、まずローテーターカフを個別にトレーニングしてから、上腕二頭筋、三角筋、大胸筋、広背筋などの大筋群の筋力を向上させていきます。そして最後に、両方の筋協調性を高めていきます。

第1段階: ローテーターカフ・エクササイズ

ローテーターカフを選択的にトレーニングするには、大筋群をなるべく収縮させずに行うことがポイントです。そのために、負荷の軽いチューブやダンベル(1~3kg)を用います。回数は20~30回×3~4セット、毎日行います。また、水中で内旋、外旋を繰り返す方法も効果があります。
エクササイズは、棘上筋が外転、棘下筋・小円筋が外旋、肩甲下筋が内旋、となります。

第2段階: 大筋群のトレーニング

肩関節周囲の筋肉は、肩関節を安定させるために常に緊張しています。練習やトレーニング後には、関節全体をアイシングをし、その後ストレッチングをするなどして、筋の過緊張を和らげるとよいでしょう。

第3段階: 筋協調性のトレーニング

肩関節を安定させるために、関節周囲の筋肉を同時に収縮させるトレーニングを行います。簡単にいうと「腕で踏ん張る」動作を行って、身体を安定させるトレーニングです。
腕立て伏せをモデルに考えると、まず、膝をついた状態で、スタートの姿勢(肘を伸展した状態)を維持する。膝をつけずに行う。足を高くして行う。バランスボールに足を乗せて行う、というように、段階的にトレーニングを展開していくことがポイントです。

ケアの仕方

肩関節の安定性を改善するために筋力トレーニングを行う必要があります。筋力トレーニングは、まずローテーターカフを個別にトレーニングしてから、上腕二頭筋、三角筋、大胸筋、広背筋などの大筋群の筋力を向上させていきます。そして最後に、両方の筋協調性を高めていきます。

ローテーターカフ・エクササイズ

肩がときどき外れる選手がいるので、3月号の肩の反復性脱臼の内容を参考にして、肩関節の安定性を改善する筋力トレーニングを行わせたいのですが、ローテーターカフ・エクササイズのやり方がよくわかりません。詳しく教えてください。

ローテーターカフは、肩関節の奥にある小さな筋肉の集まり(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋)を総称したものです。肩関節は不安定な構造をしていますが、これをローテーターカフが支えているのです(前号参照)。日ごろから肩関節に不安定感があり、ときどき肩を脱臼しているような人は、ローテーターカフを鍛える必要があります。

エクササイズには、軽い負荷のチューブ(市販の“セラバンド”では黄色のチューブ)を用います。回数は20~30回を3~4セット、毎日行います。
エクササイズを行う際の注意点としては、

・チューブの反動を使わない
・チューブをたるませない
・1回の往復に約1秒かける

ことが挙げられます。
それでは、それぞれの筋のエクササイズを説明します。


棘上筋のエクササイズ

肘関節を固定したまま、斜め前方へ胸の高さまでチューブを引っ張っていきます。できるだけ力を抜いた状態で行い、三角筋を収縮させないようにするのがポイントです。


棘下筋のエクササイズ

肘関節を90度に屈曲し、脇にタオルを挟んだ状態で固定します。そこから肘関節の角度を保ったまま、上腕骨を軸として肩関節を外旋していきます。最後まで外旋すると関節に負担がかかるので、10~20度外旋まで、とします。


肩甲下筋のエクササイズ

肘関節を90度に屈曲し、脇にタオルを挟んだ状態で固定します。このとき、肩の位置は、外旋10~20度とします。そこから肘関節を固定したまま、上腕骨を軸として、肩関節を内旋してきます。大胸筋の収縮を、なるべく使わずに実施することがポイントです。

肩の痛みと肩甲骨の動きとの関係

水泳でよく肩を痛める選手がいます。ローテーターカフのトレーニングは続けて行っているのですが、ほかに予防する方法はありますか?

前肩の動きは、上腕骨と肩甲骨で構成されている上腕肩甲関節(いわゆる肩関節)だけで行っているわけではありません。肩甲骨がさまざまな動きをすることによって、スムーズな肩関節の動きが生まれるのです。


肩関節の動き

例えば、上肢が外転(体側につけた状態から真横を通って上に動かす)した場合を考えてみましょう。上肢が90度外転したときは、肩甲骨が30度上方回旋(肩甲骨の上部が内側に絞られ、下部が外側に開く動き)し、肩関節が60度外転します。さらに、上肢が180度まで外転した場合は、肩甲骨が60度上方回旋して、肩関節が120度外転することによって、上肢が180度外転するのです。

このように上肢が外転するときは、約2/3は肩関節が、残りの約1/3は肩甲骨が動くことによって、スムーズな上肢の動きが遂行されるのです。


肩甲骨が正常に動いていないと肩に痛みが出てくる

そうしたことから、肩甲骨の動きが悪くなった場合には、肩関節は動かなくなるのではなく、そのほかの筋肉で代償して動かしてしまいます。本来の肩の動きとは違うため、代償している筋肉には大きな負担がかかってしまい、肩関節の周辺になんらかの問題が発生してきます。そこで、肩のケガを防ぐためには、今までのケアも大切ですが、肩甲骨が正常に動いているかどうかについても、チェックしてみてください。
水泳の選手には、肩が前に出て肩甲骨が外転(外側に開く)して背中が丸まっている選手が多いようです。そのような傾向の強い選手は、肩甲骨の周囲の筋をうまく動かすことができなくて、硬くなっています。そうなるともちろん上肢の上方への動きがしにくくなります。これらを解決するには、ストレッチングをすることと、肩甲骨周りの筋肉をよく動かすことです。


ストレッチングをしよう

ストレッチングについてはまず、胸部の筋肉をよくストレッチしましょう。そうすることによって肩甲骨が内転(左右の肩甲骨が近づく動き)しやすくなります。上肢の角度をさまざまな角度(上肢が体幹に近い状態、水平に開いた状態、水平より少し外転した状態など)にして、胸を開くようなストレッチングを行います。胸だけでなく背中、肩、首、体側なども、一方向だけでなくさまざまな方向に伸ばすよう、多めにストレッチングをしてみてください。


肩甲骨をよく動かそう

次に、まず肩甲骨を動かすことができるかどうかを確認しましょう。水泳選手だと水着姿なので、肩甲骨の動きを直接見ることができると思います。外転、内転、挙上(肩甲骨が上がる)、下降(肩甲骨が下がる)、上方回旋、下方回旋(上部が外側に開いて、下部が内側に絞られる)を、自由自在に行うことができるかどうか、そして左右の肩甲骨が同じように動いているかどうか、などをチェックします。
もし、動かしづらいところがあれば、その方向の動きをしっかりと意識して、確認しながらよく動かします。日常生活のなかでもその方向に動かす運動を行って、なるべく多くの刺激を筋肉に与えるようにします。負荷をかけなくても常に動かすことが大切です。
トレーニングの量や技術的な問題なども肩を痛める原因なので、この点についても、再度確認をしてみてください。

酷使した肩のアフターケア

ママさんバレーでエースアタッカーをしています。今は、よくなっているのですが、ときどき肩が重くなったり痛くなったりします。痛くないときもアイシングをしたほうがよいのでしょうか。また、肩のストレッチングも教えてください。

酷使した肩は、痛みの有無にかかわらずアフターケアをしてください。練習直後にストレッチングをするのが理想的ですが、ママさんバレーの練習ではなかなか時間がとれませんね。お風呂上がりでもテレビを見ながらでも、その日のうちであれば、やらないよりは絶対に肩にはよいはずです。
アイシングも可能であれば行ってください。アイシングをしながら帰宅されてもよいのではないかと思いますが、練習会場で用意できない場合は、帰宅されてからでも十分です。
これは、ママさんバレーに限らず、投球動作のあるすべての種目に共通です。パパさん野球でピッチャーを務めるお父さんも、しっかりアフターケアをしてくださいね。
ストレッチングの例をいくつかご紹介します。一般的な肩のストレッチングです。写真1~3をご参照ください。


肩のストレッチングの具体例

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「ザムスト-ZAMST」は、医療メーカーとして整形外科向け製品を開発・製造する日本シグマックス㈱が展開するスポーツ向けサポート・ケア製品のブランドです。

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